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2021.02.17
経営

従業員解雇を円満に進める方法~退職勧奨の重要性とは

事業主である以上、自身が経営する会社や店舗で働く従業員を、やむなく解雇せざるを得ない局面に遭遇することもあるでしょう。しかし、解雇について正しい知識を持っていなければ、訴訟等のトラブルに発展するおそれもあります。

本記事では、普通解雇と懲戒解雇の違いや、それぞれの解雇方法の進め方などを解説します。

解雇とは

解雇とは、従業員の同意なく、会社(使用者)側からの一方的な通知により雇用契約を終了させることです。ここでポイントとなるのは「従業員の同意なく」という点で、雇い主側の意思のみで従業員を辞めさせることが可能です。解雇は、雇い主に与えられている権利のひとつといっていいでしょう。

従業員解雇のリスク

従業員解雇のリスク

では、実際に従業員を解雇する場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

まず容易に想像がつくのは、解雇された従業員が不当解雇を訴え、裁判に発展することがある点です。正当な理由の解雇にもかかわらず、一度裁判になってしまうと出廷等で時間的な負担がのしかかるため、多大なリスクを負うことになります。また、万が一裁判によって不当解雇と判断されてしまった場合は、会社側が慰謝料等を支払わなければならないばかりか、社会的な信用も失墜してしまいます。

さらに不当解雇になると、法律上「解雇は初めからなかった」ことと見なされ、解雇した従業員に給与を支払っていなかった期間を遡って、会社は別途支払いをする義務を負います。これはバックペイと呼ばれ、中小企業でも1000万円を超える支払いとなるケースが珍しくなく、経営にとって大きな打撃となるリスクがあります。

従業員解雇の前にやるべきこと

上記のようなリスクを回避するために、従業員解雇の前には必ず「退職勧奨(退職勧告)」を行います。退職勧奨とは、会社側から従業員に自主的に退職してもらうよう説得することを指し、従業員に退職することを納得・同意してもらったうえで、自ら退職届を提出して円満に退職してもらう方法です。

しかし、退職勧奨は解雇とは違ってあくまでも「お願い」であり、強制力はありません。また、従業員にとってはショックが大きく、退職勧奨も「解雇」に相当する精神的苦痛であると捉える向きもあります。

このため、退職勧奨がこじれると解雇と同様に裁判に発展することも珍しくなく、会社側が慰謝料等の支払いを命じられたという事例もあります。

退職勧奨(退職勧告)を進める際のポイント

退職勧奨は決して一方的な命令ではなく、両者が円満に合意することを目標とします。退職勧奨をスムーズに進める際のポイントとして、下記の2点に注意する必要があります。

  • 「退職届を出さない場合は解雇する」と発言しない
  • 従業員を退職に追い込む「配置転換」や「仕事内容変更」はNG

「退職届を出さない場合は解雇する」と発言しない

会社側が「退職届を出さなかったら解雇する」などの発言をした場合、たとえ従業員が自ら退職届を提出しても退職を強要したと見なされ、合意が無効となる場合があります。従業員が裁判所に訴えた場合、退職勧奨ではなく「不当解雇」と判断されるケースが多く見られますので、絶対に言ってはいけません。

裁判では、会社側が当然に解雇できる権利を持っているかのような説明をして、無理に退職届を提出させた場合、従業員が誤信して提出したものと認定されます。誤った判断のもとで提出された退職届は当然無効となり、逆に会社側にペナルティが課せられます。

従業員を退職に追い込む「配置転換」や「仕事内容変更」は控える

従業員を退職に追い込むことを目的として、嫌がらせのような配置転換や、あからさまな仕事の取り上げをするのは絶対にしてはいけません。そのような悪質な意図がない場合でも、退職勧奨の対象となり得る従業員に対しての配転命令や仕事内容の変更を行うときは、ことさらに慎重に進めましょう。後から「あれは嫌がらせだった」と言われてしまうと、会社側が不利になります。

退職勧奨の可能性がある従業員には、配置転換や仕事内容の変更の理由を丁寧に説明して、誤解を与えない努力をすることが大切です。例えば、「仕事にミスが多い」「同僚と協調できない」というような理由で退職勧奨を考えている場合は、今の業務に支障を生じさせないために、速やかに配置転換や仕事内容の変更をしなければなりません。そのような時は、ミスの多さや協調性の無さをきちんと指摘し、従業員本人が反省・納得したうえで話を進めるようにしてください。

従業員解雇の種類

従業員解雇の種類

退職勧奨を行ったものの、従業員から退職への合意をもらえなかった場合は、いよいよ解雇に踏み切る段階に入ります。

  • 普通解雇
  • 懲戒解雇

普通解雇

解雇の理由が従業員の問題行動や就業規則違反などではなく、能力不足や欠勤の多さなどにある場合は、普通解雇を選択します。また、経営難による人員整理(いわゆるリストラ)のための解雇も、普通解雇に該当します。

コロナ禍の影響を受けてお店等を開けられず、リストラを断行しなければならない企業も多くありますが、これも同じく普通解雇となります。

【普通解雇を選択すべき具体的な理由】

  • 病気やけがによる欠勤を理由とする解雇
  • 能力不足、成績不良を理由とする解雇
  • 協調性の欠如を理由とする解雇
  • 経営難による人員整理を理由とする解雇

懲戒解雇

普通解雇とは異なり、従業員の問題行動や就業規則違反に対する制裁として解雇する場合は、懲戒解雇とします。

ただし、問題を起こした従業員は誰でも辞めさせられるわけではなく、原則として「就業規則に書かれている懲戒解雇事由」に該当しない限り、懲戒解雇にはできません。懲戒解雇は、制裁として実行されることを前提としているため、「どのような問題行動あるいは就業規則違反をした場合に、制裁が科されるのか」をあらかじめ就業規則に記載しなければならないとされているのです。

【懲戒解雇を選択するべき具体的な理由】

  • 横領など業務に関する不正行為を理由とする解雇
  • 転勤の拒否など重要な業務命令に対する違反を理由とする解雇
  • 無断欠勤を理由とする解雇
  • セクハラ行為、パワハラ行為を行ったことを理由とする解雇
  • 経歴詐称を理由とする解雇

普通解雇の進め方

普通解雇を従業員に宣告し、実際に退職してもらうまでのフローを追っていきます。

  1. 解雇方針を経営層・直属の上司に共有する
  2. 解雇理由をまとめたメモを作成する
  3. 解雇通知書の作成
  4. 解雇する従業員の呼び出し・説明
  5. 職場の従業員に解雇したことを共有する

解雇方針を経営層・直属の上司に共有する

普通解雇を考えた時にまずすべきは、対象の従業員に退職勧奨を行うことについて、会社の幹部や本人の直属の上司に率直な意見を聞くことです。決して経営者の一存で決めることなく、退職勧奨をする方針を共有し、理解を求める必要があります。

この共有により、退職勧奨が経営者個人としての意向ではなく、会社の総意であることを当該従業員に示すことができます。

解雇理由をまとめたメモを作成する

関係者の了承を得られたら、次に退職勧奨の理由をまとめたメモを作成します。これは、従業員に退職勧奨をする際に、簡潔で理路整然とした説明をするための準備です。

退職勧奨は従業員の人生を左右する大きな出来事ですので、伝える側にもかなりのプレッシャーがかかります。また、退職勧奨を言い渡された従業員が、激昂する可能性もあります。どのような展開になっても、解雇理由の内容を冷静に伝えることができるよう、必ず事前にメモを作成しておきましょう。

解雇通知書の作成

解雇通知書とは、解雇の理由や解雇予定日を書面に記載したもののことです。

解雇とは、会社が従業員との雇用契約を一方的に解除することですが、弱い立場の従業員を不当な解雇から守るために、解雇通知書を通じて事前に当該従業員に交付する必要があります。労働基準法では、「会社が従業員を解雇する場合には、解雇する日から少なくとも30日前に予告をしなければならない」と定めています。

  • 発行日
  • 解雇予定の日付
  • 解雇される者の氏名
  • 会社代表者の氏名
  • 解雇の通知文言
  • 解雇理由

これらが、解雇通知書に記載すべき内容です。最後に、本件問合せ先を記載して文書を締めくくりましょう。

解雇する従業員の呼び出し・説明

メモや解雇通知書の準備が整ったら、従業員を呼んで説明をします。退職勧奨はなるべく他の従業員の目を避けられるよう、会議室などの個室で行いましょう。

メモした内容を読み上げながら退職勧奨の意思を伝えますが、これについての回答をその場ですぐに求めることは強引すぎるため、避けるべきです。また、従業員が家族を扶養している場合、家族にも相談しなければ回答できないことも多いでしょう。退職勧奨から数日後に再度面談の期日を設けて、その日までに回答を出すよう促してください。

再面談日に、従業員からの質問・意見等を一通り受けた後は、改めて自主退職を促すことが重要です。自ら退職届を出してもらえれば「解雇」という形にならず、裁判等に持ち込まれにくくなるためです。ただし前述した通り「退職届を出さなければ解雇になる」とは、決して言ってはいけません。

それでも自主退職に応じない場合は、普通解雇になる旨を説明して、解雇通知書を渡します。

職場の従業員に解雇したことを共有する

一連の解雇手続きが済んだ後は、職場内で当該従業員を解雇した旨を発表します。何か問題があった従業員であったとしても、実際に解雇を目の当たりにすることで、「自分もやめさせられるのではないか」と動揺する社員も出てくるかもしれません。

まずは解雇された従業員が担当していた業務の後任を発表し、職場の動揺を収めたうえで、職場をひとつにまとめる努力をすることが大切です。

懲戒解雇の進め方

懲戒解雇の進め方

次に、懲戒解雇を従業員に宣告し、実際に退職してもらうまでのフローを追っていきます。

  1. 就業規則の内容を確認する
  2. 従業員に弁明機会を与える
  3. 懲戒解雇の方針を経営層・直属の上司に伝える
  4. 解雇通知書の作成
  5. 解雇する従業員の呼び出し・説明
  6. 職場の従業員に解雇したことを共有する

就業規則の内容を確認する

懲戒解雇については、まず就業規則の相互確認を行うことが第一優先です。懲戒解雇は会社側が必ずしも一方的に行えるものではなく、就業規則に書いてある懲戒解雇事由に抵触していない限り、従業員を辞めさせることはできません。

まずは「今回の解雇理由が、就業規則上の懲戒解雇事由に該当するかどうか」を確認し、さらに「懲戒について、就業規則上で特別な手続が定められていないかどうか」を確かめます。この場合の特別な手続きとは、「懲戒をする場合は、懲戒委員会で審議する。あるいは労働組合と協議する」などと定められているケースを指します。

従業員に弁明機会を与える

就業規則に照らして懲戒解雇が不当でないことを確認できたら、当該の従業員に弁明の機会を与えます。例えば懲戒解雇事由に当たる事柄が、横領やセクハラ行為だった場合、それらについて本人の口から弁明させ、十分に耳を傾けましょう。

このような弁明の機会を与えることで、懲戒解雇後に万が一「不当解雇である」と訴えられたときに、裁判を有利に進めることができます。本人の言い分も聞かずに懲戒解雇したケースでは、不当解雇と判断されやすいのです。

より慎重を期す場合は、後で証拠として使えるよう、口頭で弁明を聞いた後に本人の言い分を記載した弁明書を提出させるといいでしょう。

懲戒解雇の方針を経営層・直属の上司に伝える

懲戒解雇を決めたら、すぐに会社の幹部や本人の直属の上司に伝え、理解を求めておきます。

この理由は普通解雇の時と同様で、懲戒解雇は会社の総意であることを示すためと、万が一従業員が裁判を起こした場合に、会社が一丸となって対応していくためです。

解雇通知書の作成

懲戒解雇の解雇通知書は、発行日と解雇予定の日付、解雇される者の氏名と会社代表者の氏名、解雇の通知文言に加え、懲戒解雇事由と就業規則の該当条文を必ず記載します。

こちらも最後に本件問合せ先を記載することを忘れないようにしてください。

解雇する従業員の呼び出し・説明

解雇通知書ができたら再び当該従業員を呼び出し、改めて懲戒解雇の理由を述べ、「先日弁明を聞く機会を設けたが、疑いが晴れないため解雇を回避することはできず、全社的にも賛成の方向で一致している」といった説明を行います。さらなる反論や反発があることが予想されますが、メモ等を使って冷静に説明を続けましょう。

ここで気を付けるべきなのは、解雇通知書に記載した懲戒解雇事由以外の理由を付け加えないことです。横領やセクハラなどの問題行為以外にも、無断欠勤や能力不足など気になる点があったとしても、通常はそれらの態度不良は懲戒解雇の理由にはなり得ません。あくまでも解雇事由は問題行為にあることに焦点を絞りましょう。

職場の従業員に解雇したことを共有する

最後に、職場内で懲戒解雇の事実を発表します。懲戒解雇は、問題を起こした従業員に制裁を加えるという目的に加え、問題行動や就業規則違反については会社として厳正な対応をすることを全従業員に知らしめる機会でもあります。会社の毅然とした姿勢を他の従業員にも示すことで、改めて組織の団結を図るという意味合いも生まれます。

ただし、社外の取引先等にまで、懲戒解雇の事実を話すことはありません。社外にまで話を広げてしまうと、場合によっては名誉棄損で訴えられる可能性もありますので、決して他言しないように指示しましょう。

「予告解雇」ではなく「即日解雇」が良い理由

解雇には30日前までには通知を予告しておく「予告解雇」の他に、「即日解雇」という方法もあります。予告日からの30日間分の給与を支払いさえすれば、解雇を通知した当日に解雇することもできるのです。

2つの方法のうち、推奨されているのは即日解雇です。

  • 他の従業員への悪影響が懸念されるため
  • 情報漏洩リスクがある

「即日解雇」が良い理由の1つ目は、他の従業員へ悪影響を及ぼすというリスクを減らせるからです。予告解雇を行うと、当該の従業員は、解雇が決まった後も30日程度会社に在籍することになります。解雇を予告された従業員は、基本的には会社に対して悪感情を抱いていることが多く、ネガティブな発言や態度で、他の従業員に悪影響を与え兼ねません。

また、このような悪感情がさらにエスカレートし、会社に損害をおよぼそうと機密情報等を持ち出す恐れもあります。この情報漏洩の防止が、即日解雇を推奨する2つ目の理由となります。

まとめ

せっかく採用した従業員を解雇するという決断に至るまでは、経営者ならではの並々ならぬ苦悩があったはずです。できれば退職勧奨による円満な別離が望ましいですが、やむなく解雇となる場合は、せめて最後くらいはトラブルがない形で済ませたいもの。スムーズな解雇手続きを実行できるよう、正しい知識と方法を身に着けておきましょう。

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