経験ゼロ、実績ゼロから異業種の飲食ビジネスへ参入


――まずはじめに、なぜ「推し活居酒屋○○の会」を始められたのか、背景を教えてください。
上田:製薬、医療分野でペーパーレス化が進む中、「紙」依存の印刷業に加えて、新規事業への取り組みが必要でした。アイデアを出し合う中「自分の好きなものと一緒に飲食できるお店があったら面白いよね」という、推し活好きの女性スタッフの一言がきっかけとなりました。人目を気にしがちな推し活好きの人たちが、年齢も気にせず気兼ねなく楽しめる「推し活専用の空間」として、プロジェクトを進めることになりました。
――これまでにないコンセプトですね。実現に際して、何が必要だったのでしょうか。当時の課題についても教えてください。
上田:そもそも飲食業への参入が初めてですし、推し活居酒屋の前例もありませんでした。全てゼロから手探りのスタートでしたが、先入感が無い分、推し活好きの人に寄り添ったコンセプトに振り切ることができました。
例えば客席は全て個室です。それぞれの部屋に4Kモニターと高音質スピーカー、ブルーレイプレイヤーを備えているため、お好みの動画を流せます。照明にもこだわりました。アイドルやアニメのキャラクターの「推し色」に合わせて、お客さまが自由に色を変えられます。さらに応援用のうちわやペンラ(ペンライト)を貸し出したり、「推し色ドリンク」や「推し色フード」も用意しています。
深澤:ベスト・プリンティング様の飲食事業の新規参入に際して、モバイルセルフオーダーを提案していました。当初は省人化の観点でお話を伺っていたのですが、あるとき「推し活居酒屋○○の会」のアイデアをお聞きしたのです。初めてこのアイデアについて接したとき、「一体何だろう!推し活居酒屋とは?」と思いました。そもそも、推し活について初耳でしたし、飲食店と推し活がリンクしませんでした。
上田:そうですよね。居酒屋でありながら、飲食よりも推し活を軸に打ち出したいと考えていました。お客さまが周囲の視線を気にせず割り込みもない空間で、推し活を心底楽しんでいただきたいと。イメージ的にはカラオケ屋さんに近いのですが、主語がサービスの提供側ではなく、推し活を楽しむ側になるのです。ちなみにお客さまは、年齢、性別問わず、全国からいらっしゃるんですよ。


配膳ロボットで実現した「三方よし」のサービス


――今回導入されたPOS+のサービスについて、具体的に教えていただけますか。
上田:POS+のモバイルセルフオーダーと配膳ロボットを導入しました。モバイルセルフオーダーには飲食だけでなく、レンタルグッズや空調の調整もメニューもあります。さらにオーダーするたびに、お客さまのスマホ画面に推しアイドルや推しキャラクターが表示されるのでお客さまにも喜ばれています。
深澤:推し活を楽しむ空間に「ノイズ」が入らない仕組みをご提案しました。「ノイズ」とは盛り上がっている空気感や熱気に水を差さないことです。モバイルセルフオーダーであれば、お客さまが好きなタイミングで、ご自身のスマートフォンでQRコードからオーダーできます。推し活で盛り上がっているときに注文取りのスタッフに中断されて、場の雰囲気が変わることがありません。また、店舗側でタブレットを用意しなくていいので、タブレットの導入コストを削減できます。
配膳ロボットも大切な役者です。配膳ロボットには、お客さまそれぞれの個室に合わせたトークを設定できます。さらに推しの動画をサイネージに流すことができます。配膳ロボットが喋りつつ、クルリと回転しながら配膳する姿は、無口なスタッフより可愛らしいかもしれませんね。


上田:配膳ロボットは大活躍です。人が配膳するとお客さまのテンションが下がるんですが、ロボットだと逆にテンションが上がるんです。「わ〜、届けてくれた!」と(笑)店舗スタッフにも好評です。忙しい時でも、人が届けなくて済みますし、届ける個室を間違えてクレームになることもありません。
さらに配膳ロボットは、お届けしたものをお客さまが受け取るまでその場で待っていてくれますし、空いたお皿の回収もしてくれます。推し活のお客さまは、持ち込んだグッズをテーブルに広げたいので、早く空のお皿を片付けてほしい。でも、店舗スタッフは忙しそうなので、「声をかけたら迷惑かな…」とためらいがちです。でも、配膳ロボットであれば気を使わずに食べ終わったお皿をホイホイ渡せますし、回収するスタッフの負担も減らせます。
また、配膳ロボットのデジタルサイネージには、推しのアイドルやキャラクターの画像を表示できるので、一緒に写真を撮るお客さまもいらっしゃるんですよ。表示するには一手間かかるのですが、お客さまに喜んでいただけるのが、何より嬉しいですね。推しのアイドルやキャラクターの広告やプロモーションにも活用できます。
深澤:「推し活居酒屋○○の会」さんのコンセプトは、ブレずに一貫していますよね。本来、配膳ロボットは省人化やオペレーションの標準化の目的で導入されますが、広告目線で導入されているのは斬新な視点ですね。
上田:ありがとうございます。おっしゃるとおり、当店では「配膳メイン」でなく、動く広告塔としても活用しています。
演者のVTuberさんとコラボ企画を行ったときのことです。配膳ロボットのデジタルサイネージに動画を流したら、VTuberさんにも喜んでいただけました。演者さんにとってもプロモーションになるので、出稿料を負担しても良いから、動画を流して欲しいと。通常は店舗側が広告料を支払うものですが、逆にPR枠として販売できるのです。
深澤:広告収入は、店舗にとっても大きなメリットになりますね。店舗スタッフも満足、お客様にも楽しんでいただけて、演者さんもハッピーと、三方よしですね!
POS+導入の決め手と導入効果。ブレない軸で「推し活」を楽しめるエンタメ空間を実現。


――それではPOS+導入の決め手について教えていただけますでしょうか。
上田:何よりモバイルセルフオーダーの使い勝手がよかった点ですね。推し活を楽しんでいるお客さまの空気感を壊さずにオーダーできること、店舗スタッフが個室に入らないでオーダーできること、さらに最近はインバウンドのお客さまも増えているので、多言語対応ができることを評価できました。導入コストも適正でしたし、担当営業の方のお人柄とサポートもよかったですね。
深澤:ありがとうございます!「推し活居酒屋○○の会」さんは、コンセプトを実現するために、POS+の機能を使い倒されていると思います。モバイルセルフオーダーにせよ、配膳ロボットにせよ、特に広告枠としての活用は初めてではないでしょうか。
上田:先ほどお話があったVTuberさんのお話ですが、テレビのプロモーションよりも長い時間認知されるのではないでしょうか。アイドルやキャラクターの推し色のコラボメニューに説明動画を流して、飲み物や食事のオーダーのたびに、大好きな推しを目にするわけですから。
――POS+の導入効果について教えていただけますか。
上田:店舗スタッフが注文を取りに行かずに済むので、スタッフの時間を削減できました。あと、室内の明るさ、照明の色の変更、空調の温度調節もモバイルセルフオーダーに含めることができるので、店舗スタッフの呼び出しが減りました。
深澤:確かに!店舗スタッフを呼び出すようなお願いも、食事と同じ様にメニュー化すればよいですね。モバイルセルフオーダーの使い方「応用編」ですね。
上田:配膳ロボットの導入でスタッフのヒューマンエラーが減り、安全確実な配膳ができています。ロボットにはドリンクホルダーがついているので、人とぶつかったりして飲み物をこぼすこともありませんね。


――POS+のサービス内容やカスタマーサービスについて伺えますか。
上田:POS+コールセンターは22時まで対応してくださるので、何かトラブルがあったときも助かっています。担当の方もスピーディーに対応してくださり、私たちのことをよく理解してくださっているので、お話も通りやすいです。レスポンスも早いので信頼できますね。
――今後の期待や展望についてお聞かせください。
上田:当初の目的であるエンタメ性の追求を実現できました。新しい気づきは演者さんのプロモーション用の「箱」として、「推し活居酒屋〇〇の会」を販売できると実感できたことです。これからはオペレーションとエンタメ性をさらに磨いて多店舗展開を目指して行きたいですね。これからは飲食だけでなくエンタメ性を追求した店舗が一層求められていくと思います。池袋以外の場所で海外のお客さまをターゲットにした店舗を展開していきたいですね。
深澤:今回、新しいビジネスモデルのフォーマットを作ることができましたね。モバイルセルフオーダーと配膳ロボットを活用したユニークなフォーマットができたので、今後は台湾や韓国など、推し活が盛んなアジアの国々にも輸出していきたいと思います。
――貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました。