箱根湯本の老舗「天成園」の別館として、2020年12月に開業した「天成園 小田原駅 別館」。小田原駅直結の立地を活かし、観光客や地元住民など多彩な顧客層を想定した「コンパクトシティホテル」として注目を集めています。開業にあたって、直営の展望レストラン「スカイダイニング」では、三井住友カードが展開する決済プラットフォームsteraのオールインワン端末と、連動が可能なPOS+を導入。その狙いについて、副支配人兼レストランマネージャー・大住 勇一氏にお話を伺いました。
決済プラットフォームsteraのオールインワン端末と 連動するポスレジとして、POS+導入を検討。
――まず「天成園 小田原駅 別館」とは、どのような施設なのでしょう?
この施設自体は、万葉倶楽部が小田原市からお借りした土地に建てたもので、木造の低層棟と14階建のタワーが合体し、小田原駅と直結したユニークな施設です。宿泊施設、展望レストランの他に、低層棟にはさまざまな飲食店や土産物店などが並び、観光のお客様にも人気です。その他、銀行、図書館、ハローワークなどもあり、小田原市民の皆様の憩いの場であることも目指しています。
このスカイダイニングにも、さまざまなお客様がいらっしゃいます。ご宿泊のお客様が朝食をとる会場でもありますし、ランチやディナーには観光客や地元の方もいらっしゃいます。年齢も、ご年配の方から若いカップルまでまちまち。その比率も、平日と週末ではずいぶんと違いますね。
――そのスカイダイニングでは、決済プラットフォームsteraのオールインワン端末と連動する形で、POS+を導入していただきました。
そうですね、POS+ 導入を決めたのは、いくつか理由があります。
まず、コスト。開業にあたっていちばんの課題は、導入コストを抑えることです。宿泊の管理システムと連動したオーダーエントリーシステムがあるのですが、これだと経費がかかりすぎる。宿泊のお客様も一般のお客様もそれぞれいらっしゃる中で、そんなに経費をかけられるのかと。もっと低価格で導入できるレジはないか、ということで探していました。
その過程で、気になったポイントがクレジットです。これまでの経験上、やっぱりクレジットが連動していないと、どうしても打ち間違いが発生してしまいます。それをなんとかできないかと考えていたときに、たまたま他の部署からsteraの話を聞いたのです。
steraであれば、磁気カード、接触型ICカード、非接触型ICカード、ほかにもPayPayなどのコード決済にも対応しているので、これはいいんじゃないかと。このシステムにポスレジが連動していれば、かなり使い勝手がいいはずです。それで「連動するレジはどこかないの?」とお話をうかがったら「POS+ さんが連動している」ということだったので、前向きに検討を始めた、というのが経緯です。
でも実は、steraの話を聞く前から、私は私でPOS+ さんに決めていました。
ハンディ、セルフオーダー、TTO、すべて使えて、 汎用性が高いのに操作が簡単。
――stera以前にPOS+ に注目された理由は?
先ほど申しましたように、さまざまなお客様がいらっしゃることは開業前から想定していました。ですからオーダーエントリーシステムも、汎用性が重要だと考えていたのです。
POS+ ですと、ハンディのほかに、セルフオーダー、TTO、3つすべてに対応しています。これはいいと思って、無理をお願いして3つとも全部付けてもらいました。
お客様の幅が広い、ということは、サービスの仕方も幅が広い、ということです。たとえば朝食ブッフェをセルフオーダーにすれば、出来立ての温かい料理をお届けすることもできる。ランチは、セットメニューが中心ですからTTOで選んでもらえば素早く対応できる。宴会があれば、これもTTOなら少ない人数で対応できます。ディナーに関しては、お値段をいただくので、TTOやセルフオーダーよりも、スタッフがテーブルにお伺いして接客しながらオーダーをとる。それぞれ全然違う形のサービスになるだろう。それがPOS+ ならできる、というのが、実はいちばんの決め手でしたね。
まだオープンして間もないので、実際にすべてを活用しているわけではありません。でも、汎用性があれば、いろいろと試行錯誤ができます。
――いろいろな使いかたを覚えるのは現場のスタッフも大変なのでは?
正直、私自身新しい機械についていけるだろうかとちょっと心配でした(笑)。でも、ホールも調理場もすぐに慣れてくれました。実際に準備期間が十分にとれずにうまくいかなかった部分も多少はありましたが、これも十分な期間があればうまくいけただろうな、というぐらい、操作方法に関してはそれほど難しくなかったですね。
――実際に運用し始めてみていかがでしたか?
もう、「あれ?全然簡単だな」というくらい、使い勝手がいいですね。とにかくいろんなことができる。オーダーをとるのも簡単ですし、お会計のときのsteraとの連動はすごくわかりやすい。締め期もいろいろ選べますし、割引の処理、伝票分割、テーブルの合算、移動なども、今までもあったシステムですけれど、それを視覚的に簡単に操作ができるので、それがすごくうれしいですね。最初はわからないこともありましたが、いちど覚えてしまえば、すぐにできてしまいます。
それに、営業中のアップロードもすぐにできる。システムによっては、いったん締めてからでないと単価が変えられないとか、アップロードできない、ということもあるのですが、POS+ はつねに更新しながら使えるので、いいですね。
実際にメニュー決めて、セットして、でも使いながら「想定していたのとちょっと違うな」と思ったら、サポートに連絡すると、すぐに対応してもらえる。「今、アップロードします」「修正できました」とその都度小さなカスタマイズをしながら、業務にフィットさせていく。これはすごくありがたいですね。
セルフオーダーシステムは、 お客様とのコミュニケーションツール。
――今後は活用の範囲を広げていくという計画は?
セルフオーダーやTTOにしても、同じ使ってもらうのでも、面白さがあったほうがいい。使ってみて面白かった、楽しかったと思えるようなものだったら、次回の来店につながると思うのです。
今はみなさん、お料理が出てくるのを待っている間、スマホを見ている方、多いじゃないですか。それなら、そこにお店の情報や何かを入れて、楽しんでもらいながら、オーダーができる、選べるという仕組みがあったらいいのかなと思っています。
宿泊のお客様に対しても、何かメニューの出し方を考えていきたい。せっかくお泊りいただいて決められた料理をいただく、というよりも、何かをお選びいただく、遊ぶ楽しさがあってもいいのかなと思います。
――セルフオーダー、TTOはただ効率化のためのものではない、ということですね。
そうですね、よりお客様とのコミュニケーションを深めるためのアイテムとして捉えたほうがいい。ただサービスの人件費を削っているだけではなく、お客様により楽しんでいただくためのツールとして捉えた方が、お店の価値も上がって、かつ、従業員の負担も減る。
レストランにいくと、何気なくテーブルのメニューを手にとって見たりしますよね。ああ、こんな料理があるのかって。それを、あまりTTOではやらない気がするんですよ。TTOのメニューも、もっとこのお料理の情報を知りたいと思ったら、サービススタッフに質問する感覚で、詳細な情報が出てくるようにできるんじゃないか。そうすれば、なるほどこれ頼んでみようか、となるかもしれない。客単価も上がるかもしれないですよね。
――天成園は万葉倶楽部グループですが、グループでの活用は考えていますか?
たとえば、万葉倶楽部の温浴施設では、飲食を含めて施設内での決済をすべて手元のバーコードに紐づけて一括で管理するシステムがあります。これにスマホアプリのセルフオーダーを応用すれば、たとえば複数の料飲施設がある大型施設でも、入場料も含めてお客さんはスマホひとつで済む、ということができるかもしれません。
セルフオーダーに関しては、その履歴がお客様のスマホに残っていくのも面白いのかなと思っています。プライバシーの問題もあるので、慎重にならなければいけないとは思いますが、お客様の同意があれば、履歴をもとにこちらからおすすめの情報を発信したりもできますし、お客様も記録が残ることで思い出にもなりますよね。お料理の写真を撮る方は多いですが、メニューも残っていれば、あのとき何食べたかなってすぐにわかる。あとで思い返せば、ああ、また今年も食べに行こう、と思ってくれるかもしれない。そういうお客様には割引や優先予約を用意したりして、昔で言うところのVIPメンバーズカード、そういったサービスがアプリでできるといいんじゃないかと思っています。
――お話ありがとうございました。最後に、今後の目標を教えてください。
まずは、地元のお客様に愛されるお店になりたい、というのがいちばんですね。同時に、観光のお客様にも来ていただきたい。小田原は〝ハブ駅〟として、箱根や熱海、富士山方面に行かれる方のゲートウェイになっています。ですから、箱根に遊びに行くなら1泊はここに泊まって眺めのいいレストランでご飯食べようか、というように、いろいろなシーンで使ってもらえるお店になりたいですね。