株式会社WDI JAPANはカジュアルイタリアンのカプリチョーザ、圧倒的な肉質と高級感で存在感を示すウルフギャング・ステーキハウス、まるで海外にいるような錯覚さえ覚えるアメリカンレストランのハードロックカフェや香港発の飲茶専門店ティム・ホー・ワンなど、個性あふれるレストランを半世紀にわたり運営してきた外食業界のリーディングカンパニーです。
常に時代の最先端を走り、新しい食文化を開拓、提案し続けてきたWDI JAPAN。アフターコロナを見据えた更なるチャレンジに向けて、このたびPOS+を導入されました。同社の取締役兼営業本部長の福田氏にお話を伺いました。
コロナ感染拡大から1年半。外食業界にも大きな変化があり、今後は業界再編への動きも予想されます。変化に適応・対応していくことが重要
――新型コロナウイルスの感染が拡大してから1年半になります。外食業界をどう捉えていますか?
そうですね、私は大きく3つの変化を感じています。1つ目は、外出自粛が長引く中で、外食に対する期待値が高まっていることです。2つ目は食の「多様化」。イートインがなかなかできない中で、テイクアウトやデリバリーが増え、外食・中食・内食と、時間と場所を選ばない食のスタイルが広がりました。
こうした変化がある一方で、3つ目の変化としては飲食店の淘汰が進んでいることです。この情勢は今後もますます進むのではないかと感じています。
――改めて、みんなで顔を合わせて食事をする大切さを感じます。
それはありますよね。今外食業界で動いているのはファミリーと仲の良い友達同士くらいです。そうなると、身近な、よく知っているお店に行くことが増える。また半面、外食の機会が少ないので、たまの機会には奮発しようと高級なお店に行ったりする。変化といえばそういう意味での二極化が進んでいることも感じますね。
――私たちも、外食業界のお客様に聞くとコロナ前と比較してもまだ5~6割の売上で、かなり厳しいというお話が多いです。
売上もそうですが、今後リバウンド消費が起こる可能性がある中で、従業員が足りずに取り合いが起きるかもしれず、なかなか大変な情勢になる予想もしています。
――コロナ禍の1年半を踏まえて、今後はどのようなことを意識した経営を考えていますか?
今、申し上げたような変化に適応していくことがとても重要だと思います。例えば、お客様の行動範囲が狭まっている中ではローカルのお客様が中心となります。そのとき、エリアでナンバーワンの店舗になることが大切ですし、テイクアウトやデリバリーに加えて、ゴーストキッチンやEコマースのようなテクノロジーの活用もしていく。さらに、飲食店の淘汰が進む中で、良い物件への出店を検討することも必要でしょう。
最近、浅草のすき焼きの老舗「ちんや」の暖簾を承継し、3月に再出店をしました。日本の大切な文化がコロナ禍でなくならないように、私たちが継承していく。暖簾を守っていくことや事業承継も重要なテーマだと思っています。
今後は業界再編への動きが出てくると思います。今は営業自粛の協力金でしのいでいても、借入金でしのいでいる飲食店も多いのが現状です。これまで以上にシリアスな状況になっていくのではないでしょうか。
労働集約型の外食業界では、業務効率を上げ、同時に仕事の質も上げていくためにテクノロジー活用が重要。テーブルトップオーダーの導入で業務効率化が図られ、その分、ホスピタリティの拡充に充てることができました
――このコロナ禍でデジタル化が早まったという話もありますが、外食業界でもいろいろな変化があったと思います。御社では何か変化はありましたか?
多くの業界がそうであるように、デジタルの活用でしょうか。まあ、外食業界のDXが遅れている危機感はもともと持っていましたが、昨今の変化に直面して、老朽化、属人化、複雑化していた基幹システムの仕切り直しとともに、POS周りを従来型のものからクラウド型に移行しました。
外食業界って、労働集約型なんです。いかに業務効率を上げ、同時に仕事の質も上げていくかが重要です。この両面を通して生産性を上げていくにはテクノロジーを活用しなければならないと思いました。
――そこでこの度、POS+ self orderを導入いただきました。
いま、当社の複数のブランドで導入しているものにPOS+ self orderがあります。お客様がテーブルでQRコードを読み込み、メニューを表示してオーダーできるというものです。
もちろん初めてのお客様にはご説明が必要ですが、いつも来て下さるお客様にはご自分でオーダーしていただけます。入店が続くときにはお客様をお待たせせず、またスタッフの業務効率も上がります。その分、ホスピタリティをどう発揮するかについて検討、対応することができるようになります。
――お客様側に戸惑いはありませんでしたか?
やはりありましたね。中には「こうなると味気ないよね」というご意見もありました。そこを理解していただくには、提供側もしっかり学び、お客様に伝えて、慣れていただく必要はあると思います。
ただ、どうしても操作が苦手な年配の方もいらっしゃいますので、そこはスタッフもお客様と一緒に面白おかしく操作したりしていますね。
WDI JAPANが大切にしていること:顧客満足度を上げる前に従業員の満足度の向上を。お店の雰囲気の良さはお客様に伝わり、ファンを増やすことにつながります
――確かに、コロナ禍を通して対面の良さやホスピタリティの大切さが認識されるようになっていると感じます。御社が経営において大切にされていることはどんなことですか?
難しいテーマですが、とにかく弊社で大切にし、従業員に伝えているのは「働くことに対する誇りとプライドを持つこと」です。お客様をおもてなしする前に、自分が働いているお店が好きかどうか、一緒に働いている仲間を大切にしているか。そして自分の仕事に誇りとプライドを持てるか、です。なぜなら、それらが料理やサービスの質を左右するからです。経営の立場からは、まずはそういう環境、お店作りをどうするかというのが一番大事なポイントではないかなと感じています。
だからCS(顧客満足度)を上げる前に、従業員の満足度を高めることは大前提だと思うのです。
――スタッフや社員がお店のファンであれば、お客様もお店をどんどん好きになることにつながりますよね。
そうなんですよ。うちのお店に「ババ・ガンプ・シュリンプ」という、映画「フォレスト・ガンプ」をテーマとするレストランがあります。
そこでは各店舗で毎月、店長がその店舗内のスタッフに対する表彰を行っていまして、さらにそのスタッフのご両親にもお手紙を書いて報告するんです。食事券も入れて、ぜひお店で息子さん、娘さんの姿を見てください、と。そういう店舗ではスタッフが活き活きと働いています。そしてお客様にもそれが伝わるのかファンが多いのです。コロナ禍でも売上は非常に堅調に推移しています。
これは、会社としてそうしろと言っているわけではないのですが、とても良い取り組みだと思いますね。やはり飲食業はヒューマンビジネスであり、ホスピタリティビジネスなんです。またお店は生き物。上司がやるように部下はやるから、上司も成長しないとだめです。ホスピタリティを発揮できる環境を作ることが大切で、そうした感度を大切にする会社でありたいし、それを広げていきたいです。
――だからこそ、この苦境においても強いのですね。
WDI JAPANは今年、外食参入から50周年の節目の年を迎えました。この節目に今後の自社のビジョン、すなわち未来に向かってどう成長していくかというところも考えなければならないと思っています。
もちろんコロナ禍で追い込まれてはいますよ。でも、だからこそ、理念や市場での存在価値について、見出していくチャンスではないかと。また気候変動による大規模な災害の発生や、人口減少に伴う人材不足などの課題もあります。テクノロジーの活用も必要ですし、企業として持続可能性をどう追求していくのか、そのスタンスが大事になるでしょう。
そうした中で若い世代に選んでもらえる会社にならなければなりませんから。このあたりについては、経営幹部でも最近よく議論していますね。
それから、外食でもこれからどんどんデジタル化が進むし、やってみる価値はあると思うけれど、でも一方で、人が接客する価値は上がっていくでしょう。
私たちは、お客様の感情に寄り添うビジネスをしています。そこはなくならないし、価値が上がっていく。そのためにテクノロジーを駆使する、という意識が大切だと思います。
――本日は貴重なお話を、ありがとうございました。