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2022.07.19
法律・制度 経営

労災の休業補償給付額の計算方法~事業主の対応まとめ

従業員が労災に遭ってしまった場合の休業補償の問題は、覚えなくてはいけないとは思いつつも、難しく感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、休業補償給付の対象となる要件や、給付金の計算方法についてわかりやすく解説します。労災が発生した際に、経営者・事業者が行うべき手続きについても触れていますので、ぜひご一読ください。

労災の休業補償とは

労災とは「業務または通勤中に負った傷病」のことを指し、労災の療養のために働けず、賃金を支払われていない日が4日以上におよぶと「労災休業補償金」が支給されます。この労災の認定には、医師の証明が必要となります。

厚生労働省が定めている労災休業補償金の支給額は、給付基礎日額の80%とされており、内訳は以下の通りです。

  • 保険給付:休業1日につき給付基礎日額の60%相当額
  • 特別支給金:休業1日につき給付基礎日額の20%相当額

労災保険からの給付が、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額で、それに特別支給金の20%が加算され、合計80%となります。

労災の休業補償給付の計算方法

労災の休業補償給付額の計算方法は、まず給付基礎日額を算出し、その数値をもとに給付金をわり出すという2段階方式になっています。

  1. 給付基礎日額の計算
  2. 給付基礎日額をもとに休業補償給付額を計算

具体的な計算方法を、Aさんを例に挙げて次項でご紹介します。

【Aさん:月20万円の賃金、賃金締切日が毎月末日で、労災事故が8月に発生】

給付基礎日額の計算

給付基礎日額は、原則として労働基準法の平均賃金に相当します。平均賃金とは、原則として事故が発生した日(賃金締切日が定められている場合は、その直前の賃金締切日)の直前3か月間に労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の日数で割った1日当たりの賃金額のことです。

【Aさんの給付基礎日額】
 20万円×3か月÷92日(5月:31日、6月:30日、7月:31日)
 ≒6,521円73銭 

1円未満の端数は切り上げとなり、Aさんの給付基礎日額は6,522円となります。

給付基礎日額をもとに休業補償給付額を計算

次に、休業4日目以降について、労災保険から支給される1日あたりの給付額と、特別支給金を計算します。

【Aさんの休業補償給付額】

  • 保険給付  (6,522円×0.6)=3,913円20銭
  • 特別支給金 (6,522円×0.2)=1,304円40銭

1円未満の端数は切り捨てとなり、1日あたりAさんの休業補償給付額は、3,913円+1,304円=5,217円 となります。

労災の休業補償給付の要件

下記の3つの要件をすべて満たすことで、労災の休業補償給付が受けられます。

  • 3日以上の休業期間を経ている
  • 働くことができない状態である
  • 労働による賃金を受け取っていない状況である

休業補償は、療養のために仕事を休まざるを得ない期間の賃金を補償する制度です。3日以上の休業(療養)があってはじめて、4日後以降に給付金が支給されます。また、療養により負傷や疾病が治った後、外科的な後処置のために休む期間は補償期間に含まれません。

さらに休業補償は「働くことができない状態にある期間」に適用されるもので、以前と同じ業務ができなくても、出社が可能で負担が軽い作業なら行える場合は、給付を受けることができません。同じ理由から、少額でも企業が従業員に賃金を支払っている場合は、給付を受けることができません。

アルバイト・パートでも休業補償は支給される?

アルバイト・パートでも休業補償は支給される?

正社員ではなくアルバイト・パートとして働く労働者も、労災保険給付を受けることができ、給付内容も正規雇用者と同様です。

労災保険は「労働基準法上の労働者」を対象としているため、アルバイト・パート等の就業形態にかかわらず、事業主との間に雇用関係があり賃金を得ている者であれば、もれなく支給対象となります。

事業主が労災保険に加入していない場合も休業補償は支給される?

事業主が労災保険の保険関係の成立手続を行っていない場合でも、労働者が業務もしくは通勤中に傷病を負った場合は休業補償給付を受けることができます。

なお、会社が事業主証明の提出を拒否するなどの理由で、証明書類が手元にない場合でも、労災保険の請求手続きは行うことができます。まずは、お住いの地域の労働基準監督署に相談することをおすすめします。

アルバイト・パートの「労災隠し」は罰則の対象

「労災隠し」とは、労災が発生したにもかかわらず、労働者死傷病報告を所轄の労働基準監督署に提出しなかったり、内容を偽って提出したりして、労災の事実を隠ぺいする行為のことです。

労働基準法75条第1項では、以下のように規定されています。

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
厚生労働省:業務上疾病に関する関係法令

これに違反し、従業員に適切な休業補償をせずに退職の強要などを行った場合、労働安全衛生法違反で50万円以下の罰金となります。これは、正規雇用のみならず、アルバイト・パートスタッフの労災を隠ぺいした場合でも同様の罰則が課せられます。

労災の休業補償給付の手続き

労災の休業補償給付の手続き

労災の休業補償給付を受けるための手続きは、原則として労災に遭った本人またはその家族が行うこととされています。しかし、手続きにかかる従業員の負担を避けるために、会社が代行して手続きすることも可能で、実際に多くの企業で行われています。

経営者・事業者が手続きの代行ができない、あるいはしたくない場合は、従業員本人に手続きさせるしかありませんが、労災による負傷や疾病を抱えている従業員にさらに負担をかけるのは酷なこと。従業員が希望する場合は、なるべく代行して手続きを行いましょう。

手続きは、「休業補償給付支給請求書」を準備・記入の上、管轄する労働基準監督署長に提出するだけです。書式のダウンロードや、管轄の労働局・労働基準監督署の検索は、下記を参照してください。

厚生労働省:休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続

休業補償給付申請後の事業主の対応

休業補償給付申請後に経営者・事業主が行うべき対応は、下記の2点です。

  • 待機期間3日分の補償を事業主が行う
  • 「労働者死傷病報告書」の提出を行う

休業補償給付を申請する際の待機期間である3日間分の賃金は、企業が補償しなければなりません。待機期間3日分の補償額は一般的に「平均賃金の6割程度」とされていますが、従業員の金銭的・心理的負担を減らすために全額支給する企業も少なくありません。

また、労災により従業員の死亡、あるいは傷病による休業が発生した場合は、速やかに「労働者死傷病報告書」を管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

厚生労働省:労働者死傷病報告(休業4日以上)様式

まとめ

自分の経営する会社や店舗で労災が起きてしまうのは不運なことですが、一番つらいのは当事者の従業員です。怪我や病気を負った従業員の負担をできるだけ軽減できるよう、休業補償給付の手続きは可能な限りスピーディに行いましょう。正しい知識を身に着け、社内で労災が起こった際は、迅速に対応できるようにしてください。

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