調剤薬局のレジには、通常のレジ機能のほかにもさまざまな専門的機能が必要です。専門的な機能を有するPOSレジを活用することで、業務効率化につなげられます。
今回の記事では、調剤薬局のレジに必要な機能8選を紹介しています。また、レジを選ぶポイントも解説しているため、POSレジ導入を考えている方は参考にしてみてください。
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POSレジがおすすめな理由
POSレジ(Point Of Sale)は、商品の販売時点で発生するすべての情報を即座にデータ化し、売上実績をリアルタイムで自動集計できるレジスターシステムです。効率的でスマートな会計を実現しながら、売上管理もしやすく多くの調剤薬局でも導入が進んでいます。
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調剤薬局のPOSレジに必要な機能8選
調剤薬局でPOSレジを導入する際は、調剤薬局にも対応した機能が必要です。代表的なの8つの機能を紹介します。
- レセコン連動
- NSIPS対応
- 軽減税率対応
- 領収書発行
- 保険種別の売上管理
- セルフメディケーション税製品対応
- キャッシュレス決済
- 在庫管理
それぞれの機能の詳細を見ていきましょう。
レセコン連動
調剤薬局のPOSレジシステムには、レセプトコンピューターとの連動機能が欠かせません。診療報酬明細書となるレセプトを、POSレジに連携することで、手作業でのレジ入力作業を大幅に削減できます。連携方法としては、医療機関向けのレセプトコンピューターから出力されたQRコードやNON-PLUバーコードをPOSレジで読み取る方法や、レセコンで確定した請求情報を自動で取り込む方法などがあります。
薬剤師は患者様に、薬の服用方法や注意点に関して丁寧な説明を行う必要があります。その際、説明に集中するあまり、集中力が分散されることでレジ入力時のミスが発生しかねません。
また、入力ミスを防ぐために都度項目を慎重に確認していると、会計処理に時間がかかり業務効率が低下してしまいます。手入力の手間が省け、入力ミスのリスクも大幅に軽減されるでしょう。同時に、会計処理がスムーズになることで、患者様の待ち時間短縮にもつながり、薬局全体の業務効率化にもつながります。
NSIPS対応
従来の一般的なレジでは、保険調剤の処方箋と一般医薬品の会計を別々に処理する必要があり、患者様を2回待たせる効率の悪いレジ業務となっていました。
NSIPS対応のPOSレジでは、NSIPSを通じて、調剤システムから処方箋の会計情報を直接受け取れます。処方箋医薬品と一般医薬品を一括で会計処理することが可能となり、二度手間だった会計作業が一度で完了可能です。
また、処方箋の金額を手動で入力する必要がなくなるため、入力ミスのリスクも軽減されるでしょう。NSIPS対応により、薬剤師や事務員の業務負担が軽減されるだけでなく、患者様の待ち時間も短縮され、顧客満足度の向上にもつながります。さらに、正確な会計処理が実現することで、薬局の運営効率も向上するでしょう。
軽減税率対応
軽減税率対応は法令遵守の観点から必須となる重要な機能です。2019年10月の消費税率改定以降、商品の区分によって適用される税率が異なるため、正確な税率管理が求められています。
医薬品等に該当しない商品、例えば特定保健用食品や清涼飲料水などは軽減税率の対象となり、8%の消費税です。一方、第2類医薬品や第3類医薬品などの一般用医薬品は標準税率の対象となり、10%の消費税が課されます。
複数の税率が混在する状況で、商品ごとに適切な税率を判別し、計算する機能は欠かせません。さらに、レシートや領収書には、適用された税率ごとに金額を区分して明確に表示する必要があります。
適切な軽減税率対応のPOSレジを導入することで、複雑な税率計算のミスを防ぎ、正確な会計処理と適切な税務管理を実現できるでしょう。
領収書発行
調剤薬局のPOSレジにおける領収書発行機能は、一般小売店とは異なり、複数の種類の領収書に対応しなければなりません。
一般用医薬品の販売に関しては、通常の小売取引と同様の領収書形式で発行します。一般用医薬品の領収書には、商品名や数量、金額、消費税などの情報が明記され、軽減税率に対応した表示も必要です。
一方、処方箋に基づく調剤は、NSIPSから受け取ったデータに基づいて医療費領収書を発行する必要があります。医療費領収書は、保険点数や自己負担額、調剤料などの医療費特有の項目が記載され、医療費控除の申請などに使用される重要な書類です。
調剤薬局のPOSレジは、異なる形式の領収書を適切なタイミングで発行できる機能が不可欠であり、正確な会計処理と患者様の利便性を確保する必要があるでしょう。
保険種別の売上管理
調剤薬局のPOSで、保険種別の売上管理機能は、正確な経営分析と会計管理を行う上で重要な機能です。売上管理機能により、売上をさまざまな角度から分析し、薬局経営の実態を詳細に把握できます。
POSレジシステムでは、売上を保険調剤や自費調剤、一般用医薬品などの部門別に集計できるだけでなく、社会保険や国民健康保険、後期高齢者医療保険などの保険種別ごとの売上も詳細に管理可能です。保険種別ごとの患者数や売上傾向を把握し、より戦略的な経営判断が可能となるでしょう。
また、種別ごとの売上管理機能は、レセコンの日計表との照合作業を効率化します。POSレジの売上データとレセコンの請求データを保険種別ごとに突き合わせることで、売上計上と保険請求の整合性を簡単に確認でき、会計処理の正確性が向上するでしょう。
セルフメディケーション税製品対応
調剤薬局のPOSレジでは、セルフメディケーション税制対応も重要な機能の一つです。
セルフメディケーション税制度は、国民の健康維持増進と医療費の適正化を目的として導入され、スイッチOTC医薬品の購入に対して所得控除を受けられます。POSレジシステムは、対象商品を販売する際に、自動的にセルフメディケーション税制対象商品であることを認識し、レシートや領収書に明確に表示できます。
また、顧客が確定申告時に必要となる購入証明書類の発行も対応が必要です。証明書類には、購入者の氏名や購入日、商品名、金額などの情報を記載しつつ、確定申告の際の証明書類として使用可能でなければなりません。
顧客の利便性を高めると同時に、薬局スタッフの業務効率化にも貢献します。
キャッシュレス決済
キャッシュレス決済機能は現代の支払いニーズに対応する上で必須の機能です。現金以外の決済手段を提供することは、患者様の利便性向上に大きく貢献します。
近年の決済手段の多様化に対応するため、POSレジはクレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、複数の決済手段への対応が求められています。
特に若年層ではスマートフォン決済、高齢者では従来型のクレジットカードと、年齢層によって好まれる決済手段が異なるため、幅広い決済手段をカバーすることで、より多くの患者様のニーズに応えられるでしょう。
ただし、キャッシュレス決済の導入に際しては、決済手段ごとに異なる手数料率や、月額利用料、導入時の初期費用などを事前に十分検討しなければなりません。また、決済会社との契約条件や入金サイクルなども確認し、薬局の経営状況に適した決済手段を選択することが重要です。
関連記事:キャッシュレス決済の導入方法とは?決済の種類やメリット・デメリット
在庫管理
調剤薬局のPOSレジシステムでは、在庫管理機能は業務効率化と在庫の適正化を実現する重要な機能です。在庫管理機能により、一般用医薬品や衛生用品などの販売時に、在庫数が自動的に更新され、リアルタイムでの在庫状況の把握ができます。
従来は手作業で行っていた在庫確認や検品作業が大幅に削減され、スタッフの業務負担を軽減できるでしょう。また、自動発注システムの導入により、発注忘れや発注数量の誤りなどの人為的ミスを防げます。
必要な医薬品の欠品を防ぎ、患者様への安定した商品供給を確保することにつながります。適正在庫の維持により、過剰在庫の防止や在庫管理コストの削減にも貢献し、薬局経営の効率化が可能です。
関連記事:在庫管理はPOSレジがおすすめ?メリット・デメリットを解説!
調剤薬局POSレジを選ぶポイント
調剤薬局を選ぶ際のポイントとして次の4つの内容を紹介します。
- 調剤薬局に対応するか
- イニシャルコスト・ランニングコスト
- サポート体制が充実しているか
- 操作性や使いやすさ
それぞれの内容を解説します。
調剤薬局に対応するか
非課税や保険適用など多様な会計処理に対応しているかを確認しましょう。売掛処理や集計業務、各店舗の商品動向の把握、本部への報告などが迅速かつ正確に行えるPOSレジを選ぶことで、業務効率の向上が期待できます。
これにより、薬局・ドラッグストアの運営がスムーズになり、顧客サービスの向上や経営効率化に貢献します。必ずチェックして適切なPOSレジを導入しましょう。
イニシャルコスト・ランニングコスト
初期費用と運用費用の両面から経済的な負担を慎重に検討することも重要なポイントです。
イニシャルコストとしては、POSレジ本体の購入費用に加えて、レシートプリンターやバーコードリーダー、カード決済端末などの周辺機器の費用も必要となることに注意しましょう。また、システムの設置費用やスタッフへの導入研修費用なども考慮に入れなければなりません。
また、キャッシュレス決済の導入に伴う決済手数料や、システムのアップデート費用なども長期的なコストとして考慮に入れることが、経営の安定性を確保する上で重要です。
関連記事:POSレジの価格相場とは?各種比較しながら選定ポイントも解説!
サポート体制が充実しているか
調剤薬局のPOSレジ選定では、サポート体制の充実度も業務の安定性を確保する上で極めて重要な要素です。
医療機関として継続的なサービス提供が求められる調剤薬局では、システムトラブルによる業務停止は深刻な問題となるため、迅速で確実なサポートが欠かせません。
導入時のサポートとしては、初期設定や周辺機器の設置支援、スタッフへの操作研修の提供があるとよいでしょう。
特に、調剤薬局特有の複雑な設定や、保険請求に関連する設定などは専門的な知識が必要となるため、メーカーによる丁寧な導入支援があるかどうかを確認する必要があります。
運用開始後のサポート体制は、サポート窓口の受付時間や対応方法、休日対応の可否などを詳細に確認しましょう。
また、定期的なシステムアップデートやメンテナンスのサポート体制も、長期的な運用を考える上で重要なポイントです。
操作性や使いやすさ
操作性や使いやすさもPOSレジの選定に重要な要素です。新しいシステムの導入直後は、どのようなPOSレジであっても操作に不慣れなため、ある程度の時間がかかることは避けられません。そのため、画面構成がシンプルで直感的な操作が可能なPOSレジを選択することが重要です。
よく使う機能がすぐに見つけられるボタン配置や、視認性の高い文字サイズ、分かりやすいアイコン表示などが、操作に慣れるまでの時間を短縮する要素となるでしょう。特に忙しい時間帯ほど、複雑な操作手順は混乱やミスの原因となりかねません。
画面構成が複雑で操作手順が多いPOSレジを選んでしまうと、スタッフ教育に多くの時間と労力が必要です。スタッフの入れ替わりが多い場合に特に問題となり、継続的な教育コストが発生する原因となるでしょう。
また、操作の複雑さはヒューマンエラーのリスクも高めます。デモ機での操作体験などを通じて、実際の使用感を確認した上で選定することをおすすめします。
調剤薬局でのPOSレジ導入事例
マロン薬局 武蔵小金井店
マロン薬局 武蔵小金井店では、ポスレジを導入したことで、会計のミスが減り、レジの締め作業の時間短縮に繋がりました。さらに売上データの一括管理ができるようになったため、他店舗の商品動向をチェックし、自店との比較も容易になったとのことです。業務が効率化されたため、患者様一人一人と向き合う時間が増え、顧客満足度の向上に繋がっています。
【導入前の課題】
- 手入力による会計ミスを減らしたい
- 売上の確認や集計に時間と手間が掛かる
- 他店舗の売上や商品動向が知りたい
【導入後の効果】
- 会計時の手入力が減り会計ミスが低減、レジ締めも短時間で完了
- 売上データを自動集計し、いつでもリアルタイムに確認が可能に
- データの一括管理で店舗ごとの売上や商品動向を比較・確認が可能に
詳細記事:薬局へのPOSレジ導入、パソコン型なら数千万円単位のところを費用を抑えて導入!
株式会社水戸薬局
在庫管理システムの導入により、複数店舗の商品の流れを俯瞰で把握できるようになりました。商品がどの店舗でいつどのくらい売れたかデータとして残り共有できるので、店舗ごとに適切な在庫を保てるようになったのです。これは、多店舗展開を行っている小売店や飲食店全般に応用が利く成功事例です。さらに、医薬品以外の商品にも使える在庫管理システムができたことで、Excelでアイテム数の増減を手入力していたスタッフの負担が減り、業務効率化にも繋がっています。
【導入前の課題】
- レジは電卓機能のみで、商品の動きの把握が困難な状況
- 各店舗からは紙データの報告書により本部での集計、電話での確認作業の負担大
- 保険適用額、補助金、社員購入など多岐にわたる会計による作業工数の圧迫
【導入後の効果】
- 全店舗の商品管理ができ、棚卸し作業の省略化を実現
- 集計や報告業務の把握による品揃え、販売計画の精度が向上
- データの見える化による施策立案の着手が可能に
詳細記事:薬局業界ならではの事情を解決できたPOSレジ。“見える化”した情報を活かすのが次のステップ
まとめ
今回の記事では、調剤薬局のPOSレジに必要な機能を8つ紹介しました。調剤薬局のPOSレジには、調剤薬局に特化した機能が必要です。調剤薬局特有の複雑な業務をいかに効率化できるかが、システム選択の鍵となるでしょう。
調剤薬局のPOSレジを選ぶ際のポイントとして、イニシャルコストやサポート体制、操作性などの確認に関しても解説したため、調剤薬局のPOSレジ導入を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
【2025比較】POSレジ・アプリ15選!ランキングに惑わされないおすすめの選び方
調剤薬局のレジでよくある質問
調剤薬局に必要な機能を兼ね備えたレジです。
ドラッグストアのように商品のバーコードをスキャンして販売金額を計算する単純な仕組みだけではなく、医療システムとの連携が求められます。
POSレジとは、Point Of Sale(販売時点情報管理)の略称で、商品を販売した際の情報(商品名、価格、数量、販売時刻など)をその場で記録・管理できる機能を備えたレジスターのことです。
POSレジを活用することにより、売上管理や在庫管理を効率的に行えます