領収書の宛名を個人名にする場合の正しい書き方は、店舗経営者として知っておくべきことのひとつです。間違った書き方だと、相手の会社で正しく税務処理されない場合もありますので注意しましょう。
領収書の宛名
領収書の宛名には、主に「会社名」または「個人名」になります。
宛名には正式名称を記載しなければ、税務処理上認められない可能性もあります。さらに、会社名と個人では宛名書きにあたって注意すべきポイントが異なります。
領収書の宛名を会社名にする場合
社員が企業の経費を立て替える場合などには、領収書の宛名には会社名を記入します。代金を立て替えた人物ではなく、会社に宛てた領収書であるためです。
会社名を記載する際は、正式名称で書くのが基本です。株式会社・合同会社・合名会社・合資会社など、会社形態も略さず記載します。また、「株式会社〇〇」「〇〇株式会社」など、会社名と会社形態の記載順序も、お客様に確認のうえミスない記載をこころがけましょう。
お客様によっては「上様」などの宛名を要望するケースもありますが、そのような記載では企業の経費として処理できなくなる可能性があることをお伝えすると親切です。
領収書の宛名を個人名にする場合
個人事業主などに領収書を渡す場合は、最終的に精算するのが事業主個人であるため、領収書には個人名を記載します。
領収書の宛名を会社名にするときの書き方
領収書の宛名を会社名で記載するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 担当者の名前や所属も記載する
- 社名や部署名は略さず正式名称で記載する
飲食店などでは、忙しくて正式名称を書く時間を取るのが難しい状況もあります。しかし、お客様の税務処理まで考えて万全を期すのであれば、正式名称での記載が原則です。会社名を略さずに書くのはもちろん、立替払いを行っているお客様の名前や所属も略さずに書きましょう。
担当者の名前や所属も記載する
企業の社員であるお客様が所属企業の経費を立て替える場合などは、当該立替支払を行っているお客様の名前や所属も記載するのが親切です。これは、お客様が所属企業の経理担当者に経費として申請する際の便宜を図るためです。
時間がない場合や、お客様が急いでいる場合は、会社名のあとに「部署名+御中」などと書くと良いでしょう。
社名や部署名は略さず正式名称で記載する
事前に聞いた社名や部署名は略さず正式名称で記載します。(株)などの略称は避けましょう。また、「上様」など略称を使った場合も、税務処理上で問題になる可能性があります。
仮に立て替え払いをした代金が企業の経費として認められなくなった場合、立て替え払いをしたお客様の負担になってしまいます。お客様の所属企業によっては、宛名が略称による記載でも問題ないケースもありますが、原則、社名や部署名は略さず正式名称で書いてください。
領収書の宛名を個人名にするときの書き方
領収書の宛名を個人名にするときは、以下のポイントを押さえて記載しましょう。
- 宛名はフルネームで書く
- あれば屋号も記載する
税務処理の観点からは、個人名をフルネームで記載するのが望ましい方法です。また、屋号を有する個人事業主であれば、屋号を記載することで正式な領収書として認められやすくなります。
宛名はフルネームで書く
会社名と同様に、宛名はフルネームが基本です。個人においても「上様」などの記載を要望されることがありますが、税務上、当該個人事業主の宛ての領収書として認められない可能があるので注意しましょう。
あれば屋号も記載
屋号を持つ個人事業主であるお客様宛の領収書であれば、個人名の前に屋号を記載する方法も考えられます。ただし税務処理では個人名が優先されるため、フルネームで個人名を記載していれば、屋号の記載がなくても正式に領収書として認められるでしょう。
領収書の宛名を自分の名前にする場合
お客様が領収書の宛名として自身の氏名の記載を要望した場合、当該領収書を個人事業主である自身の経費として税務申告に利用する可能が考えられます。お客様の税務申請が認められるよう、氏名は略さずに記載しましょう。
また、基本的に自分宛の領収書の宛名を自身で記載すると、税務上正式な領収書として認められない可能性があります。領収書の宛名を空欄で要望された場合は、その点をお客様に説明し、できる限り店舗スタッフが宛名を記載するようにしましょう。
領収書に会社名と個人名を併記する場合
お客様が領収書の宛名として会社名と個人名の併記を要望した場合、当該領収書を所属企業に提出して、経費立て替え払いがあったと申請する可能性があります。
お客様の申請がスムーズに認められるよう、所属企業名・部署名・お客様の氏名は略さずに記載しましょう。
タクシーやホテルの領収書の注意点
消費税法上は、「バス、鉄道、航空会社などの旅客運送業」や「旅行に関する事業」については、宛名のない領収書の発行が認められています。したがって、タクシーやホテルを営む事業者は、必ずしも領収書に宛名を記載する義務はありません。
しかし、領収書をお渡しするお客様の立場に立ってスムーズな税務処理ができるようにと考えれば、原則として宛名を記載したほうが無難といえます。
まとめ
領収書の宛名の書き方は大事なビジネスマナーのひとつです。書き方によって、店舗の社会性やマナーが問われることになります。宛名記載のポイントは、個人事業主・企業いずれも「正式名称」で記載することです。お客様の税務処理でトラブルが発生しないよう、正式な領収書として認められる書き方を心がけましょう。