交遊費(交際費)は、事業における経費として計上できる費用のひとつです。本記事では、交際費として認められる費用について解説するとともに、交際費として費用を計上する際の注意点を紹介します。
交遊費の意味
交遊費とは、税法上で「交際費等」と呼ばれるものです。会計上の呼び方は企業によって異なり、交際費や接待交際費と呼ばれることもあります。なお、本記事では、交遊費を「交際費」と呼びます。
交際費は、取引先など事業に関係する方に接待や贈答をするときにかかる費用のことで、大きく以下の2つに分類されます。
- 接待飲食費
- その他の交際費
接待飲食費とは、取引先などを接待する際にかかる飲食代のことです。交際費と聞くとこの接待飲食費がイメージされやすいですが、飲食代以外にも交際費に含まれる項目はさまざまあります。それらは基本的に、その他の交際費としてひと括りにされます。
交際費に該当する費用
交際費に該当する費用には、以下のようなものがあります。
- 飲食費や交通費など接待にかかる費用
- 取引先等の慶弔や禍福に支出する費用
- 交流会やイベントなどへの参加費用
- 謝礼金や贈答品にかかる費用
- お中元やお歳暮にかかる費用
飲食代以外にも、さまざまな費用が交際費に該当することがわかります。経費を正しく計上するためにも、交際費に入る支出がないかどうか一度確認してみるとよいでしょう。
交際費として認められる範囲
2014年に行われた法人の交際費等の損金不算入制度に関する規定の改正により、2014年以降から法人の交際費として認められる範囲が変更されました。
期末資本金額が1億円以下の法人の場合、事業年度ごとに次の2つの方法から選べます。ひとつは、支出する交際費等のうち、接待飲食費の50%を損金に算入、つまり経費として計上すること。もうひとつは、定額控除限度額である年間800万円以下の交際費全額を損金に算入することです。よりお得になるほうをその年度の申告時に選択できるので、自社の交際費になる飲食費の金額を見て決めましょう。期末出資金額が1億円以上の法人の場合は、接待飲食費の50%を損金に算入できます。
一方個人事業主の場合、接待等の事実があり使途が明らかで、事業関係者のための支出であり、接待に類する行為であったと認められる場合は、特に明確な金額の上限はなく交際費として計上できます。
ただし、上限がないからといって何でも交際費に計上してはいけません。金額の上限がなくても、妥当な金額で、支出回数が常識的であることが求められます。税務署に説明を求められたときにきちんと主張できるよう、日時や場所、相手の情報をきちんと記録しておくことが大切です。
交際費として認められないケース
交際費だと主張しても、交際費として経費に計上することが認められないケースもあります。
まず基本的には、事業と関係のない支出は交際費とは認められません。例えば事業と関係がない飲食にかかった費用や、取引先が参加していない社内メンバーのみ参加のゴルフの費用などは、交際費にはなりません。
また、贈答品や祝金が交際費に該当するからといって、常識から逸脱するような場合は交際費として認められません。交際費ではないものを無理やり交際費として計上すると、税務署に指摘され追加で税金を払わなくてはならないこともあります。交際費は、正しく計上するようにしてください。
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交際費として計上する際の注意点
費用を交際費として計上する場合の注意点には、以下の2つがあります。
- 交際費の詳細を領収書の裏に記載する
- 事業と関係のない飲食費を計上しない
それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
交際費の詳細を領収書の裏に記載する
交際費の詳細は、領収書の裏に記載しておくようにしましょう。詳細とは、以下のような情報です。
- 飲食した日付
- 支払金額、飲食店名、所在地
- 接待相手の情報(会社名や氏名)
- 参加人数
領収書の裏に交際費の詳細を書いておけば、どのような接待で使った費用なのか聞かれるたびに思い出さなくても答えられます。税務調査では数年前の経費について聞かれることもあるので、どのような接待だったか忘れてしまわないためにも、きちんと詳細を記載しておきましょう。
また、領収書の裏に交際費の詳細を書くことは、交際費と会議費を区別するためにも必要です。後ほど詳しく解説しますが、接待飲食費は会議費として認められることもあります。法人の場合、接待飲食費が会議費として認められれば、50%や800万円以下という縛りに囚われず経費に計上できるので、賢く節税できるのです。
領収書や帳簿に詳細が書かれていない場合は、交際費として認められないこともあります。一時の手間を惜しまず、領収書に取引先名や日付などの情報を書いておきましょう。
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事業と関係のない飲食費を計上しない
接待交際費として計上できる飲食費は、事業に関係がある取引先を接待する目的で飲食をした場合のみです。つまり、事業と関係のない飲食費は、交際費として認められません。事業と関係のない飲食費をあたかも接待費であるように見せかけて経費にすることは、完全な不正行為に該当します。
少しくらいなら問題ないだろうと考えて事業と関係のない飲食費を交際費として計上すると、税務調査で虚偽の申請であると判明してしまい過少申告加算税や延滞税などを追徴課税されてしまいます。経費を不当に水増しした結果、本来払わなくて良いはずの税金まで払わなくてはならないのです。
安易に考えず、事業と関係のない飲食費は交際費として計上しないようにしましょう。
5000円以下は「会議費」として計上できる
特定の条件を満たせば、接待飲食費を「会議費」として計上できます。会議費は、会議や打ち合わせのためにかかる費用のことです。
会議費として計上できる費用には、以下のようなものがあります。
- 貸し会議室や喫茶店の個室といった会場を使うためにかかる費用
- 会議に必要なお弁当、お茶、お菓子にかかる費用
- プロジェクターなど会場で使用する機材のレンタルにかかる費用
法人の場合、1人あたり5,000円以下の飲食費かつ、最低でも1人は社外の方が参加していた場合であれば、会議費にできます。例えば、総額22,000円の飲食代で参加者が5人のケースであれば、1人あたりの飲食費は4,400円となり、5,000円以下なので会議費にできるのです。
接待飲食費を会議費にすれば、損金に算入できる50%に含まれず経費に計上できます。なるべく多くの経費を計上して節税を図るために、会議費に含められる接待飲食費がないかチェックしてみましょう。
個人事業主のカフェ利用は会議費として計上できるか?
働く場所に縛られない個人事業主の方は、自宅やレンタルオフィスではなくカフェなどの飲食店で仕事をすることもあるでしょう。この、個人事業主が仕事でカフェを利用したときの費用も経費にすることができます。
ただし、カフェの利用状況によって経費にできる場合とできない場合があるため、どのようなときに経費にできるか確認してみましょう。
【取引先とのカフェ利用時】
- 取引先とのカフェ利用で接待:交際費
- 取引先とのカフェ利用で打ち合わせ:会議費
まずは、個人事業主が取引先の方とカフェを利用するケースです。取引先など業務をするうえで付き合いのある方を接待する場合の費用は、交際費に含まれます。頻度や金額が適切であれば、問題なく経費として計上可能です。また、カフェを利用して取引先と打ち合わせをした場合の費用は、会議費として計上できます。会議をするための場所代として、カフェでの飲食費を支払ったというイメージです。
【ひとりのカフェ利用時】
- ひとりのカフェ利用でプライベート:NG
- ひとりのカフェ利用で仕事:飲み物のみ会議費
続いて、個人事業主がひとりでカフェを利用するケースを見ていきます。まず、プライベート時間にひとりでカフェを利用する場合の費用は、当然ながら経費に計上できません。
次に、カフェを利用してひとりで仕事をする場合は、飲み物の料金のみ会議費として計上できます。これは、飲み物代が場所代であると考えられるからです。仕事の場所を借りるための費用として、飲み物代程度は妥当であるとされています。
その半面、飲み物とともに食べ物を注文した場合は、食べ物にかかる費用は会議費として認められません。それは、食べ物代はあくまで生活するための食事にかかるものであり、場所代と考えるのは無理があるとされているからです。
ひとりでカフェを利用して仕事をする場合に飲み物と食べ物を注文したら、飲み物代のみを会議費に計上できると覚えておきましょう。
まとめ
交遊費(交際費)は、取引先との付き合いのなかでどうしてもかさんでしまう費用です。できるだけ経費で落として節税したいところですが、決められたルールは守らなくてはなりません。事業に関係のある接待費用のみを計上する、領収書に日付や相手先の情報などを正しく記載するなど、決まりを守り賢く節税を行いましょう。