店舗や会社の節税のために支出をできるだけ経費として計上したいと考え、「とりあえず領収書をもらっておく」という方も多いのではないでしょうか。しかし、いくら領収書があってもすべてが経費として認められるわけではありません。
本記事では経費と領収書の関係について詳しくまとめ、領収書がない場合の経費計上の仕方などを解説します。
経費と領収書の関係
業務上の理由で物品を購入するなど、業務のために発生した支出は、経費として確定申告時に計上することができます。その際、お金を支払った証拠として必要になるのが、領収書と呼ばれる証明書です。
しかし、領収書があっても経費として認められないケースもあります。当然ながら、私用での食事や物品の購入は経費にはなりません。特に個人事業主の場合は公私の区別が付きづらいため、私的利用と社用できっちり領収書をもらい分けておくことをおすすめします。
国税庁が「経費として認める」とホームページ上で明示しているのは、オフィスや店舗の家賃や水道光熱費、PCなどの機器購入費、仕事で利用した交通費や宿泊費、文房具等の消耗品費などです。基本的に「仕事で使った」と主張できるものであれば、ほとんどが経費として認められます。
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領収書とは
領収書とは、「いつどこで、何のために、いくら支払いをしたか」が記載された証明書です。
店舗のレジで会計をする時に「領収書をください」といえば、どんな店でも必ずもらえます。前述したとおり、領収書は確定申告で経費申請をする際の“証拠”となるものですので、申告時まではもちろんのこと、申告後も一定期間の保管を求められます。もし税務上問題があった場合は、速やかに税務署に提出しなければなりません。
領収書の記載項目
領収書に記載される情報には、下記のようなものがあります。
- 発行日
- 発行者情報(店名や会社名、住所、電話番号等)
- 宛名
- 金額
- 但し書き(支払いの用途)
- 領収書番号
- 収入印紙(現金で5万円以上の支払いの場合のみ)
領収書とレシートの違い
経費計上には「宛名(社名)が手書きで書かれた領収書がないとNG」と思っている方もいるかもしれませんが、支払い期日や明細が記載されていれば、レシートでも問題ありません。
むしろ領収書の場合は手書きができる分、宛名が「上様」となっていたり、購入明細がなく「お品代」とまとめられていたりして、本当に業務に必要なものを購入したのか信頼性に欠ける部分もあります。
その分、レシートは購入品目がすべて印字されていますので、税務上の証明能力はレシートの方が高いと言えるかもしれません。
領収書の保管方法
領収書の保管の仕方は、雑でも構いません。基本的には仕分けせずに、クリアファイルや段ボール箱などにごそっとまとめて入れておいてもよいのですが、万が一提出を求められたときに探し出すのが大変になってしまいますので、月ごとに封筒に入れておくくらいの分類はしておいたほうがよいでしょう。
また、感熱紙に印刷されたレシートは湿気や強い光に弱く、保管中に文字が消えてしまうという恐れもあります。感熱紙のレシートはもらったらカメラで撮影しておく、コピーを取っておく、上から数字などを手書きでなぞっておくなどすると、不測の事態が起こっても安心です。
領収書の保管期限
領収書の保管期限は以下のとおりです。
- 白色申告:5年
- 青色申告:7年
確定申告の際に領収書を提出する必要はありませんが、税務署から指摘を受けた際にすぐ出せるよう、しっかり保管しておきましょう。
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領収書のない出費はどうする?
明らかに業務に関わる支出なのにもかかわらず、領収書をもらうことができないケースとして、以下のようなものが挙げられます。それぞれについて、詳しくは次項で解説します。
- Suicaなど交通系ICカードの経費
- 家賃
- メルカリ
- キャッシュレス決済
Suicaなど交通系ICカードの経費
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードは、券売機で領収書を発行することができます。
アプリの「モバイルSuica」を利用する場合は、会員メニューから利用履歴を検索し「領収書を発行する」を選択すれば、プリントアウトすることができます。
ただしこの領収書には「クレジットカードご利用分」の記載が入るため、別途クレジットカード会社の明細書の提示が求められることがあります。
家賃
個人事業主やフリーランスで自宅とオフィスを兼務している場合は、家賃の一部を経費として申請することができます。
銀行口座からの自動引き落としのため領収書がない場合は、毎月の引き落とし金額が記載された通帳が領収書の代わりになります。
ネット銀行などで紙の通帳が発行されていない場合は、インターネット上の取引履歴を印刷して保管しておけば大丈夫です。
メルカリ
業務で使う備品や資料用の書籍などをメルカリで購入した場合、領収書の発行はしてもらえません。
しかし、先述したとおり、購入したものと日付、金額の明細をメモしておく程度で十分です。匿名取引の場合も同様で、購入した相手先が実名でなくても問題ありません。
要は「正当な理由があって仕事で使う物品を購入した」と証明できればいいわけで、購入履歴の画面キャプチャは有効になるため残しておくとよいでしょう。
キャッシュレス決済
2020年10月1日施行予定の電子帳簿保存法改正により、キャッシュレス決済によるデジタル明細が、領収書代わりに使えることになりそうです。
一例を挙げると、法人クレジットカードやSuicaなどの交通系ICカード、PayPayをはじめとするQRコード決済で経費の支払いをした場合、決済データが瞬時に送信されます。従来通りの「紙の領収書」を併用するよりも、決済手段をキャッシュレスに一元化する方が混乱が少ないとも考えられます。
領収書を紛失した場合
領収書をもらい忘れたり失くしたりした場合は、お店で再発行してもらうという手段が考えられます。しかし、同じ内容の領収書が2枚あると金銭の受渡が2回発生したと誤解を招きかねないため、お店側から断られるケースもあります。
再発行以外の対処としては、領収書を紛失したときには、すぐに支払先・金額・内容等をメモに残すことです。そして出金伝票に転記して経理処理すれば、領収書がなくとも税務上経費であると認められることがあります。
まとめ
2020年10月1日施行予定の電子帳簿保存法改正により、今後ますます紙の領収書を必要としない社会へと変化していくことが予想されます。「経費精算=領収書」という考えはもはや古く、どんどん新しい手法が増えてきますので、領収書との付き合い方を今一度検討してみましょう。