顧客管理帳の作成は、顧客満足度の向上や、リピーター獲得のために有効な手段のひとつです。顧客管理帳は、「お客様とのささいな会話の内容などを書き止める、メモのようなもの」というイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、作成にはちょっとしたコツが求められるものでもあります。
本記事では、顧客管理帳の基本的な作り方や、効果的な活用方法などを解説します。
顧客管理が必要な理由
そもそも、なぜ顧客管理をする必要があるのでしょうか? 店舗経営にあたって、顧客管理が必要な理由には、以下の2つが考えられます。
- 多極化する顧客ニーズを把握するため
- 生産性を向上させるため
多極化する顧客ニーズを把握するため
顧客管理とは、お客様の住所や連絡先などの属性だけでなく、購買履歴、趣向などを一元管理することを指します。顧客情報をただ管理するだけではなく、お客様一人ひとりのニーズを把握し、長期的に良好な関係を築くことが最終的な目的となるものです。
現在は企業同士の競合が多くなり、顧客ニーズは表に出ず潜在化する傾向にあります。さらに、誰でもインターネットなどで簡単に商品を検索できるようになったことで、ショップ同士の比較・検討が容易に。こうした厳しい環境下で競合に打ち勝ち生き残っていくためには、自社の製品やサービスのファンを増やし、シェアを維持拡大するほかありません。
一人でも多くのファンを獲得するために適切な顧客管理を行い、良好な関係を長期間にわたって築く必要があるのです。
生産性を向上させるため
近年、労働力不足に悩む企業は多く、従業員一人ひとりの生産性を向上させ、いま以上の業務効率化を図ることが求められています。そこで重要になるのが、顧客管理の徹底です。高精度なマーケティングデータを元に無駄のないアプローチをとることで、生産性の向上を図れます。
顧客管理によって正しい顧客ニーズをつかむことができれば、ニーズが少ない商品を前面に押し出したり、誤った方向に巨額な投資をしてしまったりといったミスが無くなります。需要と共有のバランスを見て商品開発ができるようになり、人的リソースおよびコストロスを防ぐことにつながるのです。
顧客管理帳の手書きメリット
顧客管理を手書きで行う方法には4つのメリットが存在します。
- 書き方が自由
- オフライン環境でも追記できる
- 費用がかからない
- 共有が容易
書き方が自由
手書きでの顧客管理の最大のメリットは、書式が自由で、感じたことをサッとメモできる手軽さにあります。お客様とのやり取りの中で、とくに印象に残った特記事項やラフスケッチなどを、自由に書き記しましょう。
とりわけスケッチなどの絵図でも残せる点は、デジタルツールにはなかなか真似できない手書きの強みといえるでしょう。
オフライン環境でも追記できる
ノートというアナログなツールを使うことで、いつでもどこでも顧客管理ができるというメリットもあります。インターネット環境がなくとも、ノートを開くだけでメモすることができるため、作業する場所を選びません。
また、デジタルツールが普及した昨今でも、顧客の前でスマホやタブレットを操作するのは失礼に当たるといった風潮は根強くあるものです。ノートの使用であれば、お客様の心証を損ねるリスクを低減できます。
費用がかからない
ノートとペンさえあれば記入できるため、費用負担が少ないこともメリットです。
アプリ等のデジタル顧客管理サービスの中には無料で使えるものもありますが、デジタルツールは使い方を覚えるまでに時間がかかることがあり、人的コストの消費になりかねません。一方、ノートへの記入であれば、その日のうちに始められます。教育や指導に時間を割かなくとも済み、結果として人件費削減にもつながります。
共有が容易
1冊の顧客管理ノートを複数人のスタッフで同時に使用し、誰でも書き込むことができるようにすれば、顧客情報の共有が容易になります。予備知識や特殊技能は必要なく、経験が浅いスタッフもベテランも、同じ精度で顧客管理を行うことが可能です。
デジタルでの顧客管理になると、どんなにシンプルなツールであっても人によって得意・不得意があるため、一部のスタッフしか使わなくなってしまうという事態も起こりがちです。
顧客管理帳の手書きデメリット
メリットの反面、顧客管理を手書きのノートで行う方法にはデメリットもあります。
- 過去の情報を引き出すまでに時間がかかる
- 何度も変更ができない
- 同時記入ができない
- 顧客管理の仕方に個人差が出る
- 紛失した場合のリスクが大きい
過去の情報を引き出すまでに時間がかかる
手書きのノートは検索機能がないため、過去の情報を見返したいときに、目的の箇所を探し当てるまでに時間がかかってしまいます。
重要な情報が書かれたページには付箋を貼り付けたり、インデックスを作ったりすることで多少は探しやすくなりますが、やはりデジタルでの顧客管理と比べると圧倒的に不利になります。
何度も変更ができない
記入する内容を間違えてしまうと、変更が容易でないのもノート管理のデメリットです。デジタルであれば、消去キーを押せばすぐにやり直すことができますが、ノートだといちいち消しゴムや修正液を使って消さなくてはなりません。
細かな間違いであればまだしも、記載内容を丸ごと入れ替えるなどの大幅な変更は、とても手間がかかり困難です。
同時記入ができない
デジタルツールであれば、複数のスタッフが同時に開いて書き込むことができますが、ノートではそうはいきません。誰かが顧客管理ノートへ記入しているときは、他のスタッフは終わるのを待たなければならず、その間に書く内容を忘れてしまったり、ノートへの記載そのものをやらなくなったりするおそれがあります。
顧客管理の仕方に個人差が出る
誰でも自由に書き込めるのがノートのメリットですが、その分、記入項目や内容がばらばらになりがちで、統一感がなくなるというデメリットが出てきます。
顧客に向ける目線も記載者独自のものになっていることが多く、別の担当者へ顧客管理の引き継ぎをする際に困ってしまうことも。顧客管理ノートは、あらかじめある程度の記載ルールを決めておくとよいでしょう。
紛失した場合のリスクが大きい
顧客情報のすべてが一冊のノートに集約されているため、万が一紛失してしまうと損失は甚大に。今の時代に顧客の個人情報を紛失・漏えいしたとなれば、店舗の存続自体が危うくなることも考えられます。
一方デジタルでの顧客管理であれば、顧客管理データをバックアップし、分散して保存することが可能なため、ノートと比べると損失を軽減できるでしょう。セキュリティの管理もしやすいため、情報漏えいを防ぎやすいというメリットもあります。
顧客管理帳の書き方
顧客管理帳には顧客の基本情報のほかに、下記の項目を記しておきましょう
- 購買内容
- コミュニケーション内容
- 要旨の特徴
- 同伴者
- 趣味
- 居住地
- 写真・似顔絵
なお、顧客管理帳は基本的にリピーター客のために作成するものですので、お客様が2度目の来店をされたタイミングで書き始めましょう。一見客の情報をすべて書き記していくと役に立たない情報が積み上がり、管理が大変で、かえって効率が悪くなってしまいます。
顧客管理を効率化させる方法
顧客管理を効率化させる方法には、以下の2点が考えられます。
- Excel管理
- POSレジを導入する
Excel管理
Excelでの顧客管理には、「導入コストがかからない」「操作が簡単でほとんどの従業員が使える」というメリットがあります。顧客数がさほど多くなく、管理する項目も簡易なものであれば、専用の管理システムがなくともExcelで充分でしょう。
しかしExcelでの顧客管理には、誤削除や上書きによるデータ紛失のリスクがあります。また、タブレット・スマホで使えるアプリもありますが、やはりPC以外のデバイスでは扱いづらく、営業先や移動中などのお店以外の場所での使用には不向きです。
また、従業員が各々のファイルで顧客情報を更新すると、最新データが錯綜してしまうおそれがあります。
POSレジを導入する
これら顧客管理や分析には、詳細な顧客データが欠かせません。より詳細な顧客データを効率的に収集するために、POSレジの有効活用がおすすめです。
POSレジは、会計と同時にその時点で得られる情報を収集し記録してくれます。どの顧客がいつ、どこで、どんな商品を購入したのかなども、POSレジに記録されたデータを見ればわかります。
POSレジを活用することで、顧客管理・会員管理に加え、独自ポイントの管理や売上管理、商品管理、在庫管理も可能となります。マーケティングに活用できる各種データを効率的に収集できるPOSレジを導入して、自社・自店舗の利益の最大化を目指してみてはいかがでしょうか。
関連記事:POSレジとは? POSシステムとの違いや 導入することで得られるメリットを解説
まとめ
デジタル時代にありながら、顧客管理はアナログなノートを使った方が便利な面もたくさんあります。しかしながら、検索性やセキュリティ面でデジタルに劣る面もあり、一長一短といっていいでしょう。
貴店にとって最適な管理ツールとはどのようなものか、実際の運用をイメージしたうえで、顧客管理の効率化を実現するPOSレジの導入もご検討しましょう。
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よくある質問
店舗経営にあたって、顧客管理が必要な理由は「多極化する顧客ニーズを把握」「生産性を向上させるため」があげられます。顧客管理によって正しい顧客ニーズをつかむことができれば、ニーズが少ない商品を前面に押し出したり、誤った方向に巨額な投資をしてしまったりといったミスが無くなります。需要と共有のバランスを見て商品開発ができるようになり、人的リソースおよびコストロスを防ぐことにつながるのです。
より詳細な顧客データを効率的に収集するために、POSレジの有効活用がおすすめです。POSレジは、会計と同時にその時点で得られる情報を収集し記録してくれます。どの顧客がいつ、どこで、どんな商品を購入したのかなども、POSレジに記録されたデータを見ればわかり、管理がしやすいです。