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2024.11.19
法律・制度 経営

管理会計とは?財務会計との違いや共通点、導入メリットについて

管理会計は企業会計の一種で、これにより企業の業績を測定・評価できるようになります。ここでは、会社の現状を数字で把握するために必要な会計管理とは何か、財務会計との違いについて詳しく説明します。

管理会計とは

管理会計は、経営を管理するために必要な情報を経営者に提供するために行う社内向けの会計です。経営者は、管理会計のデータをもって、自社の経営について分析を行ったり、今後の事業について意思決定を行ったりします。

管理会計のデータをもとに、販売している製品や人事に関しての施策を立案・実行することもあります。

管理会計の目的は、経営の意思決定に役立つ情報を提供することです。

したがって、管理会計で必要とされるデータは、企業の業種・業態や事業フェーズなどによって異なります。そもそも、管理会計を行うかどうかも企業側が決定するもののため、管理会計を行わない企業もあります。

管理会計の業務の具体例管理会計には、次の4つの管理方法があります

  • 予算管理
  • 原価管理
  • 経営分析
  • 資金繰り管理

それぞれの管理方法の詳細をみていきましょう。

予算管理

予算管理は、企業が掲げている売り上げ目標や利益目標と、実績を数値化するものです。予算と実績の分析は、主に月次試算表を作成してその数値を比較することで行われます。

データ化した数値を見て、なぜ目標を達成できなかったのか原因を追究し、目標を達成できるように改善策を講じて実行する。これらを繰り返して業績の向上を目指すのが予算管理です。

経営の判断に必要な予算は次の種類があります。

予算内容
売上予算売り上げを予想し、作成する
原価予算材料費や仕入れのコストを想定した予算
経費予算従業員の人件費や家賃、水道光熱費など、材料費以外に必要な予算
利益予算売り上げから各種支出を差し引いた利益を管理する予算

予算管理は、各予算の計画と実情を把握できるため、的確な経営判断が行える点でも重要です。予算管理を行うことで、経営陣は目標と実績の差異を早期に発見し、必要な対策を講じることが可能となるでしょう。

また、決算時期に限らず、一定期間ごとに定期的な分析を行うことで、問題が深刻化する前に未然に防ぎ、大きな損失を回避できます。

原価管理

原価とは、1つのサービスや製品を生産する際にかかるコストを指します。原価管理は、企業が設定している原価の目標と実際にかかった原価を数値化するものです。

原価管理では、製品に対してかかった原価が、目標として設定していた原価とどれだけの差があったのかを比較します。目標よりも原価が高くなり、思ったよりも利益が得られなかったときには、なぜ原価が上がってしまったのか、その原因を追究して、改善できるよう取り組みます。

原価は製品1個あたりに必要なコストであり、仕入れにかかる費用や材料費が対象です。原価が想定よりも高くなった場合、費用の内訳を細分化し、各要素が適切な水準かどうかを確認しなければなりません。

材料費や労務費、間接費などの項目ごとに費用を見直し、改善余地を探ります。原価管理により、無駄なコストを削減し、利益率の向上を目指せるでしょう。原価管理を徹底することで、コスト構造の効率化や生産性向上が実現し、企業の競争力を高められます。

経営分析

管理会計での経営分析は、損益分岐点や限界利益などの指標を用いて自社の経営状況を把握することを目的としています。損益分岐点分析では、収益と費用が均衡する売上水準を把握し、そこから利益が発生するラインを明確にする指標です。

一方、限界利益は、売上から変動費を差し引いた利益のことで、これを活用することで、一定の売上増加がどれだけの利益増加につながるかを分析できます。

管理会計の経営分析により、企業は売上目標が達成されているか、経費が適切に管理されているかを俯瞰的に評価できることがメリットです。例えば、目標売上に到達していない場合、どれだけ売上を増やすべきかが明確になり、また、経費が計画を超過している場合はその要因を突き止め、削減策を検討できます。

管理会計の経営分析は、経営視点で的確な判断をもたらし、経営改善のための具体的なアクションをサポートしてくれるでしょう。

資金繰り管理

資金繰り管理は企業経営で重要な要素であり、売り上げが順調に伸びている場合でも、資金繰りがうまくいかないと倒産するリスクがある点に注意しなければなりません。資金とは、現金や普通預金、当座預金など、すぐに使用可能なものです。

一方で、定期預金や不動産などは現金化に時間を要するため、資産として管理されます。資金繰りが悪化する原因は、単に赤字経営だけでなく、過剰な在庫保管や設備投資の増加によって一時的に資金が不足し、支払いが滞ることも原因となるでしょう。

また、急激な売り上げの増加も注意が必要です。売上高が急激に増加すると、それに伴って仕入れコストも増大しますが、商品を販売してから入金されるまでにタイムラグが発生し、この間に資金不足となることがあります。

したがって、資金繰り管理では、現金の流れを的確に把握し、必要な資金を確保しつつ、将来的な資金計画を立てることが求められます。

財務会計とは

財務会計とは、企業の外部に向けて自社の財務状況を報告するために行う会計のことです。自社に関わるステークホルダー(投資家・債権者・税務署など)に対して経営成績を開示するため、決算報告書を作成して開示します。

財務会計の目的

財務会計は、前述の通り企業の利害関係者に財務状況を開示するために行う会計です。企業は年に一度、自社の利害関係者に向けて情報を開示する義務があります。

財務会計の主軸となるのは、資産の負債が分かる貸借対照表と、売上とかかった費用がわかる損益計算書、それに現金の動きが分かるキャッシュフロー計算書の3つです。

出典:e-GOV法令検索/財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

財務会計には2つの機能がある

財務会計には、次の2つの機能があります。

  • 情報提供機能
  • 利害調整機能

ひとつ目の機能が、企業の現状をステークホルダーに報告する情報提供機能です。さらに、ステークホルダーに配当計画を公開して利害を調節する機能があります。

情報提供機能

情報提供機能によって、利害関係者に現在の自社の財務状況を把握してもらうことができます。利害関係者は、財務会計の情報提供機能によって、企業の資産や負債、利益について詳しく理解できるようになります。

利害調整機能

利害調整機能とは、ステークホルダーと利害対立が起こったときに、それを調整する機能のことを指します。

財務会計によって、ステークホルダーは企業の借入の状況や税金の支払い状況、従業員の給与、役員報酬、企業側が計画している配当などについて詳細を知ることができます。すべてのステークホルダーが納得できるように、「利益はこのくらいで、配当はいくらになります」と報告することで利害関係の調節を図るのが財務会計の利害調節機能です。

管理会計と財務会計の違いと共通点

管理会計と財務会計には次のような違いがあります。

 管理会計財務会計
対象社内 経営管理者社外 利害関係者
目的経営管理に役立つ情報の整理財務状況を利害関係者に伝える
会計方法任意会計基準に準拠
対象期間任意会計期間

会計を行う理由が社内にあるか社外にあるか、会計の方法や対象となる期間もそれぞれ違います。また、管理会計は社内向けで定められた会計方法がなく、財務会計では会計基準に準拠し行う必要があるのも大きな違いです。

管理会計は義務ではない

管理会計は企業活動で有用な指標となる情報ですが、作成自体は法的に義務付けられているものではありません。そのため、決まったフォーマットや特定の情報を必ず含める必要はなく、各企業の状況やニーズに応じて自由に作成できるのが特徴です。

極端な場合、管理会計を作成しなくても経営には差し支えありません。しかし、経営状態を俯瞰的に分析し、改善や成長の方向性を見定めるには、管理会計を活用することが大いに役立ちます。義務ではない分、自社にとって有益な情報を効率よく取り入れた管理会計を構築することがポイントです。

一方、財務会計は義務付けられており、株主や取引先、金融機関などの社外関係者に企業の経済状況を示すために欠かせません。

出典:e-GOV法令検索/会社法

管理会計の対象は自由

管理会計は、対象に関しても法律上の定めがないため、企業は自由に対象を決められます。会社全体に対して行うだけでなく、部署ごとや製品別などの細分化も可能です。企業は経営状況をより可視化しやすくするために、どの情報を抽出するのが有効かを考慮し、独自の観点で分析対象を選択できます。

また、管理会計では作成した内容を公開する相手も特に定められていないため、誰が見るべき資料なのかに応じて対象を変えるとより効果的です。経営陣には会社全体の利益構造を示す資料を作成し、現場の担当者には自分の部署や担当製品に関する詳細なデータを提供するなどの工夫が考えられます。

一方、財務会計は株主や取引先などの利害関係者に公開するため、法律に基づき企業全体の経済状況を報告する必要があり、対象とするべき範囲が明確に定まっている点が異なります。

管理会計と財務会計が一致しない理由

管理会計と財務会計の結果、数字が一致しないのは、当然の現象です。

財務会計では、すべての取引を複数の帳簿に記帳して決算報告書を作成します。管理会計では、企業が必要だと思われる項目のみを抽出してデータ化します。また、対象となる期間が管理会計では任意の期間、財務会計では会計期間と異なるために、数字にも違いが現れます。

管理会計を導入するメリット

管理会計を導入するメリットは次の通りです。

  • 経営状態を把握しやすい
  • 評価軸が明確になる
  • 社員に経営感覚が身につく
  • 施策のPDCAが加速する

管理会計は、企業にとって必須のものではありません。しかし、管理会計を導入することで自社の経営状況が把握しやすくなるとともに、利益やコストを明確に評価できるように、PDCAも加速します。

また、社員に経営感覚が身につくのもメリットでしょう。

経営状態を把握しやすい

事業規模が大きくなると、決算だけでは経営状態を把握しにくくなります。部門別に財務状況を把握して対策を行うようにすることで、実際にかかったコストと利益の実績がどうなのかを社内で把握し共有できるようになるのは、管理会計の大きなメリットといえます。

経営状態が可視化されることによって、企業が今どこにコストを割くべきか、適切な経営判断が可能です。既存事業に注力するのか、新規事業へ投資を行うのか、または人材育成に力を入れるべきかなど、会社の予算配分を俯瞰して現実に即した戦略的な計画を立てられるでしょう。

管理会計を活用することで、短期的な改善点だけでなく、長期的な企業成長を見据えた資金やリソースの配分を最適化できるのもメリットです。

評価軸が明確になる

管理会計を導入することで、部門ごとの目標がクリアになり、目標に対して実績はどうなっているのかを把握できるようになります。また、部署ごとに達成する目標が設定されることで、目標に対して結果はどうだったのかを評価できるようになるでしょう。これにより、管理会計前にはあやふやだった部署や個人の評価軸も明確になります。

また、事業単位にとどまらず、サービスごとや製品ごとなどのさまざまなセグメントでの評価軸も明確になり、より精密な管理が可能です。単純な利益や経費の数値では見えにくかった経営課題を多角的な視点で分析し、把握できるでしょう。

評価の精度が高まることで、リソースの最適な配分や、不採算製品の改善や撤退などの重要な経営判断に対する判断力が向上し、事業全体の効率化と成長に貢献できることも管理会計の強みです。

社員に経営感覚が身につく

管理会計で部署ごとに目標が設定されると、その部署では「どうやったら目標を達成できるのか」「達成するためには何をするべきか」を自主的に考えるきっかけになります。目標が達成できなかった場合は、目標を達成するために次は何をすればいいのかを分析するようになり、問題解決能力が磨かれていきます。

管理会計の結果を各部署やプロジェクト単位などの小さいセグメントで共有することで、社員は予算やコストをより身近に感じられるため、日常の業務でコスト意識が高まります。財務状況が可視化されることで、各社員が自分の業務が経営全体に与える影響を意識しながら取り組むようになり、自然と経営視点が磨かれていくでしょう。

また、経営感覚の向上は、部署や組織全体として無駄を省き、効率的な経営を目指すための基盤となり、企業全体の成長につなげられることもメリットの1つです。

施策のPDCAが加速する

目標があいまいなままでは、PDCAを適切に回せません。

まずは会社の目標や予算の計画を立て(PLAN)、従業員が共有された目標を意識して業務を実行し(DO)、管理会計のデータを用いて現在の業績の評価を行い(CHECK)、目標と現状を比較して改善(ACTION)します。

管理会計を導入せずにPDCAを回そうと思っても、まず目標があいまいでは従業員にも伝わらず、目標と実績を比較できる数値もありません。PDCAによって経営をドライブさせるためには、管理会計の導入は重要な役割を担います。

管理会計を活用したPDCAサイクルの強化には、予算と実績の管理を定期的に行うことが重要です。当初の計画と実績の乖離を適正に評価し、乖離の要因を分析したうえで、経営目標に沿った評価に落とし込めます。

評価で挙がった課題に対しては具体的な改善策を策定し、次の計画に反映させることで、計画の精度を向上させられるでしょう。このサイクルを継続することで、管理会計がPDCAの各段階で経営改善の役割を果たし、より効率的で目標達成に近づいた経営が可能となります。

出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構/管理会計を活用したPDCA強化

管理会計を導入するデメリット

管理会計を導入する前に、知っておきたいデメリットもあります。

まず、管理会計の導入で、経理担当者の業務負担は増大します。社外向けの決算報告書に加え、社内向けの資料を作ることになるため、人的リソースが不足している場合は導入が難しくなることもあるでしょう。

また、社内向けの資料を社員がつくるため、そのやり方が正しいのか、管理会計として正しく機能する資料になっているのかを判断するのが難しいのも懸念点です。

これから管理会計を導入する企業は、公認会計士や税理士などの外部のプロに相談してみましょう。どのようにして進めたらよいのかアドバイスを受けたり、実際に行った管理会計の資料をチェックしてもらったりすることができます。

管理会計で使われる指標の具体例

管理会計で使われる指標の具体的な例として次の3つの例を解説します。

  • 限界利益
  • 損益分岐点
  • 自己資本比率

それぞれの内容を詳しく解説します。

限界利益

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた利益のことで、売上に連動する収益性を示します。限界利益の指標を用いることで、売上が増加した際にどれだけ利益が増えるかを判断でき、売り上げに連動する収益の判断材料として活用可能です。

限界利益率もまた重要な指標であり、売上に対する限界利益の割合を示します。限界利益率が高いほど変動費の割合が低いため、事業の収益性が高いと判断できるでしょう。限界利益と限界利益率は、企業が事業の存続やリソースの配分を検討する際に役立ちます。

収益性の高い事業にリソースを重点的に投入することや、限界利益率が低い部門の改善を図るなど、経営戦略の重要な判断基準として機能するため、管理会計の分野で欠かせない分析項目です。

損益分岐点

損益分岐点は、事業の収支が黒字になるか赤字になるかの分かれ目を示す重要な指標です。損益分岐点を超えれば利益が出る「黒字」となり、未達であれば「赤字」です。損益分岐点の分析により、安定した経営を維持するために必要な売上高や販売量の閾値が判断でき、経営の健全性を保つ基準として役立てられます。

損益分岐点の算出には2つの方法があり、一つは売上高を基準とする方法、もう一つは販売量に基づく方法です。それぞれ、売上高から変動費を引いた限界利益や、その割合を示す限界利益率の指標が必要となります。

限界利益をもとに固定費をカバーするための売上高または販売量を求め、これが損益分岐点として設定されます。

自己資本比率

自己資本比率は、企業の資産全体の中で自己資本(純資産)が占める割合を示す指標で、企業の財務上の健全性を測る上で重要な要素です。自己資本とは、返済義務がない元手と、企業が事業活動で積み上げてきた利益から成り立つ資金のことを指します。

上場企業や大手企業では株式の発行による増資で自己資本を増やせるため、自己資本比率が比較的高くなる傾向です。一方、中小企業は多くの場合、起業時の資本金を元手とし、それが自己資本の主な構成要素となるため、増資の機会は多くありません。

自己資本比率が高ければ、企業の安定性や財務的な余裕があると判断でき、経営基盤が強固であると見なされます。逆に自己資本比率が低い場合、借入金に頼る部分が多く、返済義務が重くなることで、景気変動などによる影響を受けやすくなり、倒産リスクが高まる可能性もあるでしょう。

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