管理会計は企業会計の一種で、これにより企業の業績を測定・評価できるようになります。ここでは、会社の現状を数字で把握するために必要な会計管理とは何か、財務会計との違いについて詳しく説明します。
管理会計とは
管理会計は、経営を管理するために必要な情報を経営者に提供するために行う社内向けの会計です。経営者は、管理会計のデータをもって、自社の経営について分析を行ったり、今後の事業について意思決定を行ったりします。
管理会計のデータをもとに、販売している製品や人事に関しての施策を立案・実行することもあります。
管理会計の目的
管理会計の目的は、経営の意思決定に役立つ情報を提供することにあります。
したがって、管理会計で必要とされるデータは、企業の業種・業態や事業フェーズなどによって異なります。そもそも、管理会計を行うかどうかも企業側が決定するもののため、管理会計を行わない企業もあります。
管理会計には2つの管理方法がある
管理会計には、次の2つの管理方法があります
- 予算管理
- 原価管理
予算管理は、予算と実績を比較・評価し、経営を向上させるために必要な改善方法を選択していくために行われます。
一方、原価管理は、目標としている原価と実際にかかった原価を比較・評価し、経営を向上させるために必要な改善方法を選択していくために行われます。
予算管理
予算管理は、企業が掲げている売り上げ目標や利益目標と、実績を数値化するものです。予算と実績の分析は、主に月次試算表を作成してその数値を比較することで行われます。
データ化した数値を見て、なぜ目標を達成できなかったのか原因を追究し、目標を達成できるように改善策を講じて実行する。これらを繰り返して業績の向上を目指すのが予算管理です。
原価管理
原価とは、1つのサービスや製品を生産する際にかかるコストを指します。原価管理は、企業が設定している原価の目標と実際にかかった原価を数値化するものです。
原価管理では、製品に対してかかった原価が、目標として設定していた原価とどれだけの差があったのかを比較します。目標よりも原価が高くなり、思ったよりも利益が得られなかったときには、なぜ原価が上がってしまったのか、その原因を追究して、改善できるよう取り組みます。
財務会計とは
財務会計とは、企業の外部に向けて自社の財務状況を報告するために行う会計のことです。自社に関わるステークホルダー(投資家・債権者・税務署など)に対して経営成績を開示するため、決算報告書を作成して開示します。
財務会計の目的
財務会計は、前述の通り企業の利害関係者に財務状況を開示するために行う会計です。企業は年に一度、自社の利害関係者に向けて情報を開示する義務があります。
財務会計の主軸となるのは、資産の負債が分かる貸借対照表と、売上とかかった費用がわかる損益計算書、それに現金の動きが分かるキャッシュフロー計算書の3つです。
財務会計には2つの機能がある
財務会計には、次の2つの機能があります。
- 情報提供機能
- 利害調整機能
ひとつ目の機能が、企業の現状をステークホルダーに報告する情報提供機能です。さらに、ステークホルダーに配当計画を公開して利害を調節する機能があります。
情報提供機能
情報提供機能によって、利害関係者に現在の自社の財務状況を把握してもらうことができます。利害関係者は、財務会計の情報提供機能によって、企業の資産や負債、利益について詳しく理解できるようになります。
利害調整機能
利害調整機能とは、ステークホルダーと利害対立が起こったときに、それを調整する機能のことを指します。
財務会計によって、ステークホルダーは企業の借入の状況や税金の支払い状況、従業員の給与、役員報酬、企業側が計画している配当などについて詳細を知ることができます。すべてのステークホルダーが納得できるように、「利益はこのくらいで、配当はいくらになります」と報告することで利害関係の調節を図るのが財務会計の利害調節機能です。
管理会計と財務会計の違いと共通点
管理会計と財務会計には次のような違いがあります。
管理会計 | 財務会計 | |
対象 | 社内 経営管理者 | 社外 利害関係者 |
目的 | 経営管理に役立つ情報の整理 | 財務状況を利害関係者に伝える |
会計方法 | 任意 | 会計基準に準拠 |
対象期間 | 任意 | 会計期間 |
会計を行う理由が社内にあるか社外にあるか、会計の方法や対象となる期間もそれぞれ違います。また、管理会計は社内向けで定められた会計方法がなく、財務会計では会計基準に準拠し行う必要があるのも大きな違いです。
管理会計と財務会計が一致しない理由
管理会計と財務会計の結果、数字が一致しないのは、当然の現象です。
財務会計では、すべての取引を複数の帳簿に記帳して決算報告書を作成します。管理会計では、企業が必要だと思われる項目のみを抽出してデータ化します。また、対象となる期間が管理会計では任意の期間、財務会計では会計期間と異なるために、数字にも違いが現れます。
管理会計を導入するメリット
管理会計を導入するメリットは次の通りです。
- 経営状態を把握しやすい
- 評価軸が明確になる
- 社員に経営感覚が身につく
- 施策のPDCAが加速する
管理会計は、企業にとって必須のものではありません。しかし、管理会計を導入することで自社の経営状況が把握しやすくなるとともに、利益やコストを明確に評価できるように、PDCAも加速します。
また、社員に経営感覚が身につくのもメリットでしょう。
経営状態を把握しやすい
事業規模が大きくなると、決算だけでは経営状態を把握しにくくなります。部門別に財務状況を把握して対策を行うようにすることで、実際にかかったコストと利益の実績がどうなのかを社内で把握し共有できるようになるのは、管理会計の大きなメリットといえます。
評価軸が明確になる
管理会計を導入することで、部門ごとの目標がクリアになり、目標に対して実績はどうなっているのかを把握できるようになります。また、部署ごとに達成する目標が設定されることで、目標に対して結果はどうだったのかを評価できるようになるでしょう。これにより、管理会計前にはあやふやだった部署や個人の評価軸も明確になります。
社員に経営感覚が身につく
管理会計で部署ごとに目標が設定されると、その部署では「どうやったら目標を達成できるのか」「達成するためには何をするべきか」を自主的に考えるきっかけになります。目標が達成できなかった場合は、目標を達成するために次は何をすればいいのかを分析するようになり、問題解決能力が磨かれていきます。
施策のPDCAが加速する
目標があいまいなままでは、PDCAを適切に回せません。
まずは会社の目標や予算の計画を立て(PLAN)、従業員が共有された目標を意識して業務を実行し(DO)、管理会計のデータを用いて現在の業績の評価を行い(CHECK)、目標と現状を比較して改善(ACTION)します。
管理会計を導入せずにPDCAを回そうと思っても、まず目標があいまいでは従業員にも伝わらず、目標と実績を比較できる数値もありません。PDCAによって経営をドライブさせるためには、管理会計の導入は重要な役割を担います。
管理会計を導入するデメリット
管理会計を導入する前に、知っておきたいデメリットもあります。
まず、管理会計の導入で、経理担当者の業務負担は増大します。社外向けの決算報告書に加え、社内向けの資料を作ることになるため、人的リソースが不足している場合は導入が難しくなることもあるでしょう。
また、社内向けの資料を社員がつくるため、そのやり方が正しいのか、管理会計として正しく機能する資料になっているのかを判断するのが難しいのも懸念点です。
これから管理会計を導入する企業は、公認会計士や税理士などの外部のプロに相談してみましょう。どのようにして進めたらよいのかアドバイスを受けたり、実際に行った管理会計の資料をチェックしてもらったりすることができます。
店舗と本部の会計管理をシームレスにつなぐ「POS+ assist」
事業規模が大きくなるにつれ、自社の経営の状況が見えづらくなっていきます。特に支社がある企業やチェーン展開している店舗の経営者、店舗責任者は、企業・店舗間を横断して経営判断をしなければなりませんが、各データを抽出して明確化するのには時間がかかってしまうこともあります。
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