飲食店経営で、最終的な利益を左右するのがFLコストです。また、FLコストを用いて算出できるFL比率という指標も、飲食店経営者ならチェックする必要があります。
本記事では、FLコストやFL比率について解説するとともに、計算方法や管理方法なども紹介します。
飲食店のFLコストとは
FLコストとは、フードコスト(Food Cost、食材費)とレイバーコスト(Labor Cost、人件費)を合計した費用のことです。
スタッフを雇い料理を提供することがメインである飲食店において、食材費と人件費は最も大きなコストです。そのため、FLコストを売上の何%まで抑えられるかによって、最終的な利益が大きく変わってきます。
飲食店の利益をきちんと残すためにも、FLコストは定期的に確認することが大切です。
飲食店のFLコストとFL比率
FLコストから導き出せる重要な指標として、FL比率があります。FL比率とは、FLコストの合計金額を売上高で割ったものです。
FL比率を見ることで、売上のうち食材費や人件費がどれくらいの割合を占めているか確認できます。飲食店の経営において存在が大きい食材費と人件費の割合を正確に把握することにより、正しい経営戦略を立てやすくなるのです。
飲食店のFLコストと比率の計算式
FLコストは食材費と人件費の合計なので、それぞれの費用を合計することで算出できます。
FLコスト = 食材費 + 人件費
たとえば、とある飲食店でかかる食材費が150万円、人件費が100万円だった場合のFLコストは、ふたつを合計した250万円です。
また、FL比率はFLコストを売上高で割ることで出せるので、計算式は以下のようになります。
FL比率 = (食材費 + 人件費) ÷ 売上高
先ほど算出したFLコストを使用して、FL比率を計算してみましょう。FLコストが250万円、売上高が500万円だった場合、FL比率は以下のように計算できます。
FL比率 = 250 ÷ 500 = 0.5 = 50%
飲食店におけるFLコストの重要性
FLコストは、飲食店において重要な指標です。飲食店の利益は、売上から経費を引くことで求められるため、FLコストが高い店は経費が多くかかっている店であり、その分利益が少ないと考えられます。
FLコストが高く、きちんと儲けていない店だと思われてしまうと、金融機関から融資を受けるのが難しくなってしまう可能性もあります。FLコストやFL比率を把握することは、どの経費を削減する必要があるかを考え直して健全な経営戦略を立てることにもつながるのです。
参考記事:東洋経済新聞「鳥貴族、サイゼリヤ、くら寿司…外食のカギは“F”と“L”」
FLコストの理想値
飲食店におけるFL比率の理想は50%ほどとされています。その内訳は、食材費が30%、人件費が20%となっています。FL比率が低いと、それだけ食材費や人件費を高い水準でコントロールできている良い店だと判断されます。
とはいえ、飲食店ごとにFL比率の理想値は異なります。自分の店のFL比率をどのくらいにすればよいかは、売上や他のコストを見て判断しましょう。FLコストと他の経費を足した結果、売上高以上の金額になってしまうと赤字です。どのくらいの黒字にしたいかを考えたうえで、理想的なFLコストを設定してください。
FLコストの平均値
飲食店の平均的なFL比率は、55〜60%です。理想的なFL比率と平均値のあいだには、5〜10%ほどの差があります。平均的なFL比率を理想値に近づけるためには、食材費や人件費を適宜見直さなくてはなりません。
食材費を下げるためにまず行うべきことは、ロスの減少です。オーダーや調理のミスによって発生するオペレーションロスや、材料の賞味期限が切れてしまうことで起こる廃棄ロスを削減するために、スタッフの教育を見直したり材料の在庫管理や仕入れを再考したりしてみましょう。
また、人件費を下げるためには、基準となるシフトを作成してそこから調整を加える必要があります。たとえば人件費を25%に抑えたい場合でも、すべての時間帯で25%が達成できるわけではありません。必要に応じてスタッフの休憩時間を延長したり早上がりを依頼したりしてコントロールしましょう。
飲食店のFLコストをエクセルで管理する方法
FLコストやFL比率は、エクセルで管理すると把握しやすくなります
前提として、月の食材費と人件費、メニューの販売価格、売上数量と売上高が図1のようになっているとします。

まずは、FLコストを計算しましょう。FLコストは食材費と人件費を足した金額なので、この場合、図2のようにセルE4に「=C4+D4」と入力することでFLコストを計算できます。

その結果、FLコストは図3のとおり4,000円となりました。

次に、FL比率を計算しましょう。FL比率はFLコストを売上高で割ったものなので、図4のようにセルI4に「=E4/H4」と入力します。

すると、FL比率は図5のとおり22%となります。小数点で出てきた場合には、該当セルを選択した状態で「%」をクリックするとパーセンテージで表記されます。

計算式を入力し、あとは食材費や人件費、売上高などの金額を入力すれば、エクセルがFLコストやFL比率を計算してくれます。計算に使う数値をそれぞれ入力したら、E列とI列でオートフィルを使い、数式をコピーすると簡単です。
飲食店のFLコストをコントロールする方法
飲食店のFLコストをコントロールする方法として次の内容を紹介します。
- 食材のロスをできるだけ削減する
- メニューを見直す
- 仕入れ先を見直す
- 従業員教育を見直す
- 業務で効率化できるポイントを探す
- シフト管理を見直す
店舗のFLコストを確認し、高い場合は本記事の方法を試してみてください。
食材のロスをできるだけ削減する
飲食店における食材費の削減で、食品ロスの管理は最も重要な取り組みです。適切な在庫管理と仕入れ量の最適化が利益率の向上につながります。過去の売上データを分析し、曜日別の来客傾向や天候による変動、地域イベントの影響などを考慮して仕入れ量を調整することで、無駄な在庫を抑制できます。特に生鮮食品は、必要以上の仕入れを避け、こまめな発注により鮮度を保つことが重要です。
また、食材の適切な保管管理も欠かせません。同じ消費期限・賞味期限であっても、温度や湿度の管理状態によって品質は大きく左右されます。食材ごとの最適な保存方法を徹底し、鮮度と品質を維持することで、廃棄ロスを最小限に抑えられます。 顧客に対して食べ切れる量の注文を促したり、ご飯の量を調整可能なことを案内したりすることで、食べ残しによるロスの削減も効果が見込めます。
メニューを見直す
メニュー設計の見直しは、FLコストを効果的にコントロールする重要な戦略です。原価率の高いメニューの見直しや、高収益商品の強化により、店舗全体の利益率を向上させられます。
メニューごとの原価や利益率を詳細に分析し、高収益商品を特定することが第一歩です。高収益商品をメニューブックの目立つ位置に配置したり、スタッフからの推奨を強化したりすることで、売上構成比を改善でき、全体のFL比率を下げることにつながります。 また、調理工程の複雑な料理は、人件費や調理時間の面でコストが嵩みやすい傾向です。調理工程見直し、同様の価値を提供しながらも、より効率的な調理方法や食材を使用するメニューに置き換えることで、調理にかかるコストを削減できるでしょう。メニューの戦略的な見直しは、FLコストの改善に大きく貢献します。
仕入れ先を見直す
仕入れ先の見直しは、FLコストの削減で重要な取り組みの1つです。特に昨今の物価上昇により、食材価格が大きく変動している状況下では、定期的な仕入れ先の見直しが欠かせません。
値上がりした食材は、現在の取引先との価格交渉を行うとともに、新規の仕入れ先を積極的に開拓しましょう。複数の業者から見積もりを取り、品質と価格のバランスを比較検討することで、より有利な条件での仕入れが可能です。 また、仕入れ先を複数確保することで、食材の安定供給にもつながります。特定の業者に依存することなく、柔軟な仕入れ体制を構築することで、急な価格変動や供給不足にも対応できます。ただし、価格だけでなく、食材の品質、納品の正確性、配送の安定性なども総合的に評価することが重要です。
従業員教育を見直す
従業員教育は、FLコストの効果的なコントロールで重要な役割を果たします。食材の適切な取り扱いや在庫管理に関する知識・スキルの向上は、直接的なコスト削減につながる対策の1つです。
従業員に食材の原価や利益率を理解してもらうことで、コスト意識を高められます。食材の無駄を最小限に抑える調理技術や、適切な在庫管理の方法を実践的に教育することが効果的です。さらに、接客サービスの質を向上させることで、顧客満足度が高まり、リピート率の向上につながります。売上が増加することで、結果としてFLコスト比率が改善します。 従業員間のコミュニケーションを活性化させることで、厨房内の作業効率が向上し、人件費の適正化にもつなげられます。チームワークの強化により、無駄な作業時間を削減し、より効率的な店舗運営が可能です。
業務で効率化できるポイントを探す
飲食店の業務効率化は、人件費削減とサービス品質の維持・向上を両立させる重要な取り組みです。例えば、セルフドリンクバーの設置や飲料水のセルフサービス化により、ドリンク提供の人件費を抑えられます。
また、セルフオーダーシステムやセルフレジの導入により、注文から会計までの一連の流れを効率化できます。POSレジシステムを導入することで、売上データの管理やレジ締め作業が大幅に簡素化され、データに基づいた経営判断も可能です。 さらに、詳細な作業マニュアルを整備することで、従業員の教育時間を短縮し、一定のサービス品質を保てるでしょう。効率化の施策を総合的に実施することで、人件費の適正化とサービス品質の向上を実現できます。
シフト管理を見直す
シフト管理の最適化は、人件費コントロールと効率的な店舗運営を実現する重要な要素です。過去の売上データや来店傾向を詳細に分析し、シフト編成に活用することで、適切な人員配置が可能です。
曜日別や時間帯別、天候、近隣イベントの開催状況などから、必要な人員数を予測できます。ピーク時には十分なスタッフを配置し、閑散時には最小限の人員で運営できるよう、きめ細かな調整が重要です。
単純に人員を減らすのではなく、スタッフ個々のスキルレベルやキャリアを考慮しましょう。ベテランと新人のバランスを取り、各時間帯で必要な業務をスムーズに遂行できる体制を整えることで、サービス品質を維持しながら効率的な運営が可能です。 データに基づいた緻密なシフト管理と、従業員の能力を考慮した適切な人員配置により、人件費の最適化とサービス品質の向上を両立させられます。
飲食店のFLコスト以外の重要な指標
飲食店にとってFLコストは非常に重要ですが、ほかにも確認すべき指標があります。特に以下のふたつは必ずチェックしておきましょう。
- 営業利益率
- 家賃も加えたFLR比率
営業利益率
飲食店経営時に確認しておきたい重要な指標のひとつが、営業利益率です。営業利益率とは、売上高に占める営業利益の割合のことです。
営業利益率は、営業利益を売上高で割ることで求められます。営業利益とは、売上総利益(粗利)から販売管理費を引いた金額を指します。販売管理費は、経営活動を行うときに発生する費用です。
飲食店の営業利益率の平均は、8%程度といわれています。上場企業であっても営業利益率が10%を超えるのは難しいとされていますが、一方で30%という高い数値を出す店舗があるのも事実です。
飲食店はFL比率を下げることを意識するとともに、営業利益率を高めるような戦略を立てなければなりません。営業利益率を高めるためには、日々の売上を高め費用を下げる工夫が必要です。メニューの単価を上げたり販売量を増やしたりして売上を上げるか、食材費や人件費などを減らしてコストを下げられるようにしてみましょう。
関連記事:仕入れ原価と売上原価の違いとは?計算方法など詳しく解説
家賃(R)も加えたFLR比率
近年では、FLコストにR(Rent、家賃)を加えたFLRコストが飲食店経営において重要な指標であるともいわれています。飲食店を経営するうえで家賃は必ずかかるので、ある程度賃料を抑えなければ毎月の経費負担が大きくなってしまうのです。
FLR比率は、70%程度が目安とされています。FLコストは55〜60%が一般的なので、家賃の比率は10%程度に抑える必要があります。
家賃も含めたFLR比率を確認することで、経営がどのように変化しているかを詳細に知れるというメリットがあります。FLR比率が変化したときに、原因がどこにあるのか突き止めることで、次に取るべき行動を考えることができるからです。こまめにFLR比率を分析して、経営戦略をチューニングしましょう。
飲食店でコスト削減による利益最大化をめざすならPOSレジ導入がおすすめ
人件費の高騰や人手不足といった課題を抱える飲食店が増えているなかで、POSレジ導入はさまざまな問題解決につながります。また、従来のレジよりも機能性が豊富で、セルフオーダーやモバイルオーダーを取り入れることでマーケティング施策の強化やレジ業務におけるミスの防止といったメリットも多くあります。
近年ではPOSレジ導入により、コスト削減だけでなく人材不足の解消と売上向上している飲食店も増加していることもあり、導入の検討もしてみましょう。
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まとめ
FLコストやFL比率について解説しました。飲食店を経営する際にFLコストはとても重要な指標になるので、計算方法を把握しそれぞれの費用を下げるための対策を適切に行いましょう。
また、FLコスト以外の重要な指標についても併せて確認することで、健全経営のための施策が取りやすくなります。それぞれの指標を分析し、飲食店経営に役立ててください。
関連記事:飲食店の適切な原価率とは?考え方や計算方法など徹底解説
よくある質問
FLコストとは、フードコスト(Food Cost、食材費)とレイバーコスト(Labor Cost、人件費)を合計した費用のことです。食材費と人件費は最も大きなコストです。そのため、FLコストを売上の何%まで抑えられるかによって、最終的な利益が大きく変わってきます。FLコストは定期的に確認することが大切です。
FLコストが高いとその分利益が少ないと考えられます。その場合、金融機関から融資を受けるのが難しくなってしまう可能性もあります。FLコストやFL比率を把握することは、ど健全な経営戦略を立てることにつながります。
飲食店のFL比率の適正値は、業態によって異なりますが、理想として50%とされています。
内訳としては、原価率が30%、人件費率が20%程度です。ただし、高級店では原価率が比較的高くなる傾向があり、ファストフード店では人件費率を抑えられる傾向にあります。また、立地条件や競合状況、提供する料理の種類、客単価なども適正なFL比率に影響を与える要因です。
詳しくは「FLコストの理想値」を参考にしてみてください。
データを統合したFL管理シートを作成し、売上高に対する原価率と人件費の比率を自動計算する仕組みを構築します。さらに、グラフ機能を活用して推移を可視化することで、傾向分析や改善点の把握が容易になるでしょう。
詳しくは「飲食店のFLコストをエクセルで管理する方法」を参考にしてみてください。