確定申告は年に一度しか行わないため、毎年「どれが経費で、何が経費に当たらないか」混乱してしまいがちですが、経費になるものとならないものを理解していれば、領収書の整理も楽になります。
本記事では確定申告で経費として申告できるものと、経費として申告できないものを詳しく説明します。
確定申告で経費にできるもの
確定申告で経費にできるものは次のとおりです。
- 地代家賃:店舗やオフィスの家賃
- 水道光熱費:事業で使用した水道光熱費
- 通信費:事業で使用した通信費
- 消耗品費:事業で使用した紙やペンなど消耗品類の購入費
- 広告宣伝費:広告、チラシ等の制作にかかった費用
- 雑費:その他の経費
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地代家賃
地代家賃とは、事業用の賃貸物件の賃料のことです。店舗やオフィスのテナント代を地代家賃として、経費に計上できます。
自宅兼事務所のように、事業用とプライベート用で1つの建物を兼用している場合でも、家事按分を行って事業分を経費として計上できます。家事按分とは、事業用とプライベート用を兼ねるものの支出を計上する際に、事業分とプライベート分の比率を決めて計上することをいいます。
地代家賃の場合、借りている建物の面積のうち3割が事業用で7割がプライベート用なら、事業用とプライベート用の割合は3:7となります。家賃が月100万円だった場合は、30万円は経費として計上できますが、70万円は経費になりません。
複数物件を借りている事業主が地代家賃を計上するときは、勘定科目を地代家賃として、品目に「何の家賃なのか」を明記しておくと決算書類を作成する際の混乱を防げます。
水道光熱費
店舗やオフィスで使用した水道代、電気代、暖房代は水道光熱費として計上できます。地代家賃と同じく、自宅スペースの一部を店舗や事務所としている場合、使用している割合で家事按分を行います。
水道光熱費の場合は使用時間(業務時間)を24時間から差し引いて計算します。8時間労働なら、事業用として使用している時間は24時間のうちの3分の1です。この場合、経費として計上できるのは総額のうちの約3割となります。
通信費
仕事で使用しているインターネット回線やスマートフォンの通話料、郵便代などは通信費として経費計上可能です。プロバイダー料金、ファックス、固定電話、切手代も通信費に含まれます。
ネット回線やスマートフォンを事業とプライベートの両方に使用している場合は、家事按分を行います。こちらも業務時間をベースにして割合を決定するといいでしょう。
経費として計上できる額に上限はありません。ただし、家事按分を行う場合は事業とプライベートの比率に注意しましょう。
消耗品費
消耗品費とは、事業で繰り返し消費される物品の購入費用のことです。消耗品費には、10万円未満の減価償却資産の取得も含まれます。事務用品費や備品費など、消耗品費と区別が難しいものについては、消耗品費にまとめてもよいとされています。
消耗品費として計上できるのは、紙やペン、ガソリン、帳簿やファイルなどです。加えて、使用可能期間が1年未満、もしくは取得価額が10万円未満の什器備品の購入費も消耗品費として計上できます。
パソコンやタブレットを購入したとき、10万円以上であれば減価償却資産に当たりますが、10万円未満なら消耗品費として一括して計上できます。
広告宣伝費
パンフレット、チラシ、カタログ、ホームページ制作、看板、年賀状の印刷代などを広告費として計上できます。展示会にかかった費用や顧客に配るカレンダーの製作費なども広告費の範囲です。
広告費と似たものに、販売促進費があります。販売促進費は、広告宣伝のために作った制作物の配布費用や、割引・クーポンなどのキャンペーンに要した費用などです。経費の使い方は似ていますが、勘定科目が異なる点に注意しましょう。
雑費
雑費は、ひと言でいうと「その他の経費」です。どの勘定科目にも当てはまらない経費は雑費として計上できます。
雑費とされるのは一時的なレンタル代、各種証明書の発行手数料などです。むやみやたらに雑費として計上すると、税務署により調査される可能性があるので注意しましょう。雑費の目安は経費の5~10%といわれています。
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経費として計上できないもの
原則として、事業に関連のない物は経費として計上できません。事業かプライベートかあいまいなものの経費計上には十分に気を付けましょう。
- 旅行を含む出張
- 商談を含む食事会
- 車のローン
- 食費
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旅行を含む出張
旅費交通費として計上できるのは、電車ダイヤ航空運賃、駐車場代、出張のための宿泊費や食事代などです。前提として、事業のための旅費である必要があります。
また、個人事業主が出張で日当を計上することは認められていません。かならず実費までとなります。出張費として計上する場合は、宿泊先等で社名・または屋号・個人名が入った領収書を受け取っておきましょう。
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商談を含む食事会
飲食の目的が商談であれば、経費として計上できます。個人事業主は交際費として計上しましょう。
例え取引先との食事でも、打ち合わせや会議、商談・接待の要素がなくプライベートな食事の場合は経費になりません。
車のローン
車を経費として計上するためには、減価償却資産として計上する必要があります。また、車は必ず事業用である必要があります。プライベートでも使用する場合には、やはり家事按分が必要です。家事按分する場合は、購入費の一部を毎年減価償却することになります。家事按分する場合は、購入費の一部を毎年減価償却することになります。
食費
事業主個人のためのものは経費として認められないため、通常の食事は経費になりません。
ただし、カフェで仕事をした際のカフェ代は雑費などの経費として認められます。この場合でも、カフェ内での食事分は経費として計上できない点に注意しましょう。
税金
事業主が支払う税金も、経費になるものとならないものがあります。
経費として計上できないもの | 経費として計上できるもの | |
勘定科目 | 所得税 住民税 事業主の健康保険と国民年金 相続税 贈与税 延滞税 など | 印紙税 消費税 個人事業税 固定資産税・都市計画税 自動車税 不動産取得税 登録免許税 など |
事業主個人が支払うものか、事業として支払うものかで扱いが変わります。
確定申告の経費の書き方
例として、青色申告事業者の確定申告における経費の書き方を紹介します。
青色申告決算書、1枚目画像の赤枠部分に経費を書き込んでいきます。数字を記入する欄に対する勘定科目が記載されています。それぞれの勘定科目の1年分を合算して数字を入れていきましょう。
実際に書き込むとこのような形になります。
レシートや領収書の扱い方
経費を計上するうえで大切なのが、裏付けとなる領収書・レシートです。受け取ったら必ず「日付」「金額」「店名・住所」「購入品名」が記載されているかを確認しましょう。誤解されがちですが、上記の必要項目が記載されていれば、領収書ではなくレシートによっても経費を計上することができます。
なお、経費計上に用いたレシートや領収書には、保管期限があります。白色申告の場合は5年、青色申告では7年間保管しておかなければなりません。
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まとめ
原則として、経費として認められるのは事業に使うものだけです。車や家賃も、事業として使う部分だけを家事按分して経費計上します。旅行をともなう出張や、プライベートか仕事かわかりづらい食事には注意が必要です。
また経費で買い物や飲食を行った際には、必ず領収書かレシートを受け取りましょう。経費を正しく申告しなかった場合、脱税とみなされ追徴課税の対象となってしまうこともあります。事実に基づいた経費計上を行いましょう。