在庫を適切に管理するために、先入れ先出しを徹底している会社・店舗は多くあります。在庫管理において、先入れ先出しが重要とされるのはなぜなのか。先入れ先出しのメリット・デメリットや基本の作業方法、先入れ先出しをスムーズに行うコツなどについて説明します。
先入れ先出しとは
在庫管理における先入れ先出しとは、「入庫日時の古い商品から順に出庫する」方法のことです。英語の「First in First Out」を略してFIFOと呼ばれることもあります。
在庫商品の品質を維持するために、先入れ先出しは製造業や小売業では一般的に行われている方法です。
先入れ先出しのメリット
先入れ先出しによって、商品の長期滞留による品質低下を防げます。特に、食品などライフサイクルが短い商品を取り扱う事業を展開している場合は重要度が増し、先入れ先出しを徹底することで廃棄コストの低減につながります。これは食品に限らず、医薬品や電子部品など、高い品質管理が求められる商品も同様です。
また、先入れ先出しのルールを策定して実行することで、倉庫内が整理整頓され、〇月〇日に入庫された商品・製品の場所が、いつだれが見てもわかるようになります。整理整頓は仕事の安全性を高めるほか、在庫ロスを防ぎ棚卸し作業の負担も軽減してくれるでしょう。
先入れ先出しによって整理整頓された倉庫では出庫作業もスムーズになり、顧客への商品提供スピードが上がると同時にミスの低減も期待できます。
先出し先入れのデメリット
反面、先入れ先出しにはデメリットもあり、その筆頭に作業する人員への負担の増加があげられます。同じ商品でも使用期限等が違うものを多くストックしなければならない小売店や、賞味期限の短い食品を多く扱う飲食店・食品販売店では、一度に大量の仕入れをした場合の入庫の際に、期限を細かくチェックして整理して並べていく工程が発生するからです。
また、在庫管理のために扱うデータ量が増えることもデメリットです。商品名やコードだけでなく、製造日、入庫日、使用期限等も細かくチェックする必要が生じます。
総じて、商品管理に手間と人的コストがかかってくることが難点といえるでしょう。
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先入れ先出しの作業方法
先入れ先出しでは、発注した商品が届いたらすぐに在庫管理表に商品情報や賞味期限・使用期限を記入するとともに、届いた商品を梱包している箱にも商品情報が入ったシールやラベルを貼りつけます。
商品情報を登録・貼付したら、商品を分類して、定位置となっている倉庫内の棚に陳列します。このとき、新しく入庫した商品を奥に、元からあった商品を手前に置くことで自然と古いものから順に出庫されるようになります。
先入れ先出し作業の最適化を図るために、次の順で作業を行いましょう。
- 入荷したらすぐに在庫管理表に記入する
- 商品情報を書いたシールやラベルを貼付する
- あらかじめ決めておいた定位置に置く
- 先に陳列されていた在庫品を手前に、入荷した商品を奥に置く
- 出庫の際は手前から持っていく
先入れ先出しのルール策定
先入れ先出しを実践するためには、ルールを決めて従業員に周知徹底してから作業を進める必要があります。事業の内容や作業の違いによって実践方法は千差万別ですが、基本は同じです。
賞味期限・使用期限の短いものを手前に置き、新しいものは奥に置きます。さらに、入庫の際に商品の状態が一目でわかるように入荷日や期限等を書いたラベルを貼っておくと出庫がよりスムーズになります。在庫の配置に一定のルールを設けておけば、入庫の際の作業負担の軽減にもつながります。
これら在庫管理のルールを従業員に徹底し浸透させるとともに、責任者が定期的に倉庫内を確認して正しく管理されているかチェックする体制を構築しましょう。
先入れ先出しのポイント
先入れ先出しを効率的に行うには、いくつかのポイントがあります。
- レイアウトを工夫する
- 置き方や入れ方を変える
- 表示を分かりやすくする
先入れ先出しのメリットを最大限に活かすために、効果的な業務改善を行いましょう。
レイアウトを工夫する
倉庫内のレイアウトを変更して動線を改善することで、作業を円滑に進められるようになります。
まずは倉庫内のスペースを調査して、倉庫内の保管効率を把握します。次に、倉庫内で人や物がどのように流れているのかを理解して、動線が最適な状況かを分析。入庫から出庫までの工程で行われている作業を洗い出し、作業ロスの少ないレイアウトを模索し設計します。
例えば、倉庫内に棚を並べて管理している場合、すぐに出庫する商品を置くピッキングエリアと、ピッキングエリアに商品を補充するためのリザーブエリアに分けて保管することで、出庫の際の時間短縮を目指せます。
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置き方や入れ方を変える
先入れ先出しの基本に則って「新しいものを奥に、古いもの(期限の近いもの)を手前に」を実践しつつ、ロスのない置き方を考え工夫することで入出庫がさらにスムーズになり、倉庫内のスペースのロスも改善されます。
在庫が床にバラバラと放置されているような状況が起こらないよう、在庫を置く位置をきちんと決め、入庫の際にそれを徹底します。棚を使っている場合でも、倉庫の高さを十分に使えているか、棚のスペースを無駄にしていないか確認しましょう。
天井までの高さにゆとりがある「高さロス」、棚を有効に使えていない「山欠けロス」などの問題点が見つかったら、商品の置き方や入れ方を工夫します。棚ごとに商品の大グループを定めて、棚のスペースごとに小グループを定めておけば、スペースのロスと出庫の手間が軽減されるはずです。
表示を分かりやすくする
「この箱に入っている商品は何で、どのような状態なのか」がすぐにわかるように、シールやタグで管理します。シールやタグには、商品名、製造日、入庫日、使用期限などを記載しておくとわかりやすく便利です。
記載する内容にも一定のルールを作り徹底することで、一目見ただけでその商品の状態まで分かる在庫管理を実現できます。
まとめ
製品や商品の長期滞留を防ぎ、品質管理にも役立つ先入れ先出しは、多くの業界で行われている在庫管理の手法です。在庫を適切に管理することで、無駄なコストをカットするとともに顧客への商品の提供の円滑化も目指せます。
自社に適した先入れ先出しの方法を理解して、作業ルールを決め徹底して、先入れ先出しのメリットを最大限に享受できるよう取り組みましょう。
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よくある質問
在庫管理における先入れ先出しとは、「入庫日時の古い商品から順に出庫する」方法のことです。英語の「First in First Out」を略してFIFOと呼ばれることもあります。
在庫商品の品質を維持するために、先入れ先出しは製造業や小売業では一般的に行われている方法です。
先入れ先出しによって、商品の長期滞留による品質低下を防げます。また、先入れ先出しによって整理された倉庫では出庫作業もスムーズになり、顧客への商品提供スピードが上がると同時にミスの低減も期待できます。
先入れ先出しにはデメリットもあり、その筆頭に作業する人員への負担の増加があげられます。商品管理に手間と人的コストがかかってくることが難点といえるでしょう。メリットを踏まえたうえで検討しましょう。