小売店経営や飲食店経営をおこなう上で課題としてよくあがるのが在庫管理業務です。商品数が膨大なアパレル業界や食材の仕入れが発生する飲食業界では、その分在庫管理にかかる負担も大きくなりがちです。
本記事では、POSレジを使って在庫管理を行うメリット・デメリットについて解説します。
在庫管理とは
在庫管理とは、商品や原材料などを必要なときに・必要な分だけ供給できるよう、適切に管理するために行う業務を指します。商品や原材料の必要十分な数の在庫を維持することで供給過多や在庫不足を防ぎ、売上とコストのバランス維持を図ります。
主な在庫管理の作業は、以下のとおりです。
- 入荷した商品や仕入れた材料の量をチェック・保管する作業
- 注文・販売による出庫数の把握と管理
- 検品や棚卸し
- 在庫管理表に記入し、在庫の状況を適宜一覧チェックする作業
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在庫管理の課題
在庫管理はさまざまな業界で課題を抱えやすい業務です。季節やトレンドによって商品が変わるため、つねに多くの商品を管理する必要があります。
アパレル業界における在庫管理の課題は、主に以下の3つが挙げられます。それぞれみていきましょう。
- 商品数が多いと、手間と時間がかかる
- 検品でミスが発生しやすい
- 在庫を抱えるリスクが大きい
- 発注タイミングの不一致
多くの商品数を持つ業界では、在庫管理だけでも多くの工数を要します。また、在庫の多さから検品ミスが発生しやすく、ライフサイクルの短さから大量の在庫がそのまま負債となるリスクも抱えています。
商品数が多いと、手間と時間がかかる
多くの商品を取り扱う企業では在庫管理が煩雑になります。商品数が増えるほど、在庫の正確な把握は難しくなり、手動での管理には膨大な手間がかかります。
例えば、シーズンごとに新商品を投入する業界では、商品数が急激に増加します。このような状況では、在庫管理のための専任スタッフを配置することも難しく、手作業による管理が続く限り、ミスのリスクも増大します。手間がかかると、スタッフのモチベーションも低下し、業務全体に影響を及ぼすことがあります。
検品でミスが発生しやすい
在庫管理における検品作業は非常に重要ですが、手動作業によるミスが多く発生します。商品の入荷や出荷の際に、数が合わない、誤った商品が混入するなどのトラブルがしばしば見られます。在庫が多い企業の場合、検品作業が負担となり、注意力が散漫になりがちです。
また、飲食業界では、食品の入荷時に検品を行わなければなりませんが、忙しい時間帯には確認作業が疎かになり、結果として不良品が棚に並ぶことになります。このようなミスは、顧客満足度の低下や売上の損失を引き起こす原因となります。また、ミスが発生した場合のクレーム処理や返品対応にも時間とリソースも必要です。
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在庫を抱えるリスクが大きい
在庫を持つことは、資金の固定化を招きます。商品が売れ残ってしまった場合、その分の資金が無駄になり、在庫コストが増加します。とくに、季節商品や流行に左右される商品では、適切な在庫管理が求められます。適正な在庫レベルを維持するためには、販売データに基づいた判断が不可欠ですが、手作業だけで行うのは困難です。
さらに、在庫を抱えることで、保管コストや廃棄リスクも増加します。長期間売れ残った商品は、最終的に廃棄される可能性が高くなり、企業にとって大きな損失となります。在庫管理が不十分な場合、流行が変わる前に商品を売り切れずに、最終的には赤字につながることがあります。
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発注タイミングの不一致
発注タイミングの誤りも在庫管理における課題の一つです。需要予測が不十分な場合、商品の欠品や余剰在庫が発生し、売上機会の損失や在庫の無駄を引き起こします。適切な発注タイミングを見極めるためには、POSデータと在庫状況をリアルタイムで連携させる必要があります。
季節性の高い商品では、発注タイミングが遅れると、販売機会を逃すことにつながります。一方で、過剰に発注した場合は、在庫を抱えるリスクが高まり、コストが増加します。したがって、データに基づいた正確な発注が求められますが、手作業による管理では限界があるため、POSシステムの活用が重要となります。
POSシステム以外で在庫管理をする方法
POSシステムを導入しない企業や小規模なビジネスでは、他の方法で在庫管理を行うことがあります。在庫管理には、大きく分けて次の3つの方法があります。
- 在庫管理表に手書きで記入する
- エクセルで表を作成し入力する
- 在庫管理システムに入力する
在庫管理表に手書きで記入する
在庫管理表に手書きで記入していく方法では、在庫管理表をプリントアウトし、倉庫等で一つひとつ在庫を目視で確認しつつ表に書き込んでいく必要があります。在庫管理表には、仕入れ日、品目、入庫数、出庫日、出庫数、現在庫数、場所、在庫品の状態を記入して、終了後にすべて集計し経営活動に役立てます。
在庫管理表による在庫管理は、ITに詳しくない従業員でもすぐに対応できることがメリットです。ただし、すべて目視での確認となるためヒューマンエラーの発生は避けられないでしょう。在庫管理業務に時間がかかりすぎる、記入した紙を紛失するといったリスクがあるのも難点です。
エクセルで表を作成し入力する
次に一般的な方法として、エクセルを利用した在庫管理があります。エクセルは多くの企業で利用されており、表計算ソフトとしての利便性を生かして在庫データを管理できます。エクセルを使用することで、計算やデータ分析が容易になり、在庫状況の把握がしやすくなります。
しかし、エクセルでの管理にも限界があります。商品数が多くなると、管理が煩雑になり、誤入力やデータの欠損が発生しやすくなるでしょう。また、複数のスタッフが同時に作業を行う場合、データの競合が起こることがあります。さらに、在庫情報の更新がリアルタイムで行えないため、情報の鮮度が保たれにくいというデメリットにも注意しなければなりません。
在庫管理システムに入力する
最後に、専用の在庫管理システムを導入する方法があります。この方法は、より高い精度と効率で在庫を管理できるため、特に中小企業や大規模なビジネスでの導入が進んでいます。在庫管理システムでは、商品情報をデータベースに入力し、在庫の入出庫状況をリアルタイムで把握できます。
在庫管理システムを導入することで、手作業によるミスが大幅に減少し、迅速な在庫管理が可能となります。しかし、システムの導入には初期投資が必要であり、運用面でも専門的な知識が求められる場合があります。また、システムトラブルが発生した際の対応策を準備しておくことも重要です。
在庫管理をPOSシステムで行うメリット
POSシステムを活用することで、企業は在庫管理においてさまざまなメリットを享受できます。リアルタイムでの在庫更新や効率的な発注、ヒューマンエラーの削減など、POSシステムは企業運営において不可欠なツールとなっています。POSシステムを利用した在庫管理の主なメリットについて詳しく解説します。
- リアルタイムでの在庫更新
- 効率的な発注と補充の最適化
- 多店舗展開における在庫の一元管理
- ヒューマンエラーの削減
リアルタイムでの在庫更新
POSシステムのメリットの一つは、リアルタイムで在庫状況を更新できることです。商品の販売が行われるたびに、在庫データが即座に反映されるため、企業は常に最新の在庫状況を把握できます。リアルタイムで更新することで、在庫が不足した場合の早期発注や、余剰在庫の削減が可能となります。
具体的には、オンライン上で販売を行う企業では、在庫がリアルタイムで更新されるので、顧客に対して正確な商品情報を提供し、購買意欲を高めるのに効果的です。また、店舗側も在庫状況を確認しやすくなり、売れ筋商品の補充をスムーズに行えます。
効率的な発注と補充の最適化
POSシステムによって集められたデータを分析することで、発注のタイミングや数量を最適化できます。売上データをもとにした需要予測が可能となり、余剰在庫や欠品を防ぐのに役立つでしょう。
過去の売上データを参照し、特定の商品がどのタイミングで売れるかを予測することで、効果的な発注が行えます。また、POSシステムは、売れ筋商品と不良在庫を判断するための分析機能も提供しており、在庫管理の精度向上にも期待できます。
多店舗展開における在庫の一元管理
多店舗を展開する企業にとって、POSシステムは在庫の一元管理を強化するツールです。各店舗の在庫状況をリアルタイムで把握することで、全体の在庫管理が効率的に行えます。
特に、多店舗展開では、店舗間で在庫を共有し、必要に応じて商品を移動させることが求められます。POSシステムを活用すれば、店舗ごとの在庫状況を把握し、どの店舗で商品が売れているかを分析し、在庫の最適化を図れるようになります。
ヒューマンエラーの削減
POSシステムを導入することで、ヒューマンエラーの削減にもつながります。人間による在庫管理では、記入ミスや検品ミスが発生しやすく、結果として不正確な在庫情報になることがあります。しかし、POSシステムは自動でデータを管理するため、人的なミスの減少に生かせます。
さらに、POSできます。ヒューマンエラーの削減は、顧客満足度や売上の向上にもつながります。
システムでは、在庫の入出庫時にバーコードリーダーを利用することが一般的です。商品の読み取りミスを抑制し、在庫の正確な把握が実現
在庫管理をPOSシステムで行うデメリット
POSシステムの導入には多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。デメリットを理解し、適切に対策を講じることが、企業の成功につながります。
- 初期導入コストと運用コスト
- システムの操作習熟とスタッフ教育
- システムトラブル時の対応策
初期導入コストと運用コスト
POSシステムの導入には、初期投資が必要です。ハードウェアやソフトウェアの購入、設定にかかるコストが発生します。また、システムの運用に伴うメンテナンスやサポート費用も考慮しなければならないため、主に中小企業にとっては、初期導入コストが負担になりやすいです。
初期導入コストが高くても、長期的な利益を見込める場合には投資の価値がありますが、短期的な視点で見ると、システムの導入に対する不安が残る可能性があります。そのため、導入前にコスト対効果を慎重に算出し、経営上問題ないかを確認しなければなりません。
システムの操作習熟とスタッフ教育
POSシステムの導入に際しては、スタッフの教育が必要不可欠です。新しいシステムの操作方法を習得するためには、一定の時間と労力がかかります。また、スタッフのスキルにバラつきがある場合、システムの活用度に差が生じることがあるでしょう。
特に新入社員や未経験者は、システムの操作に戸惑うことが多く、業務に支障が発生する可能性があります。したがって、導入時には十分な研修を行い、すべてのスタッフがシステムを効果的に活用できるようにしましょう。
システムトラブル時の対応策
POSシステムが正常に機能しない場合、業務に大きな影響を及ぼしかねません。システムトラブルが発生した際に、事前に対策を講じておくことが重要です。
システムがダウンした際のバックアッププランや手動での業務運営方法を明確にしておくことで、トラブル時にもスムーズに対応できます。また、定期的なメンテナンスやサポート体制の整備も重要です。システムトラブルを未然に防ぐためにも、常に最新の状態を維持しましょう。
データセキュリティのリスク
POSシステムには、顧客情報や取引データが蓄積されます。ハッキングや不正アクセスによって情報漏えいが発生するリスクがあるため、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
企業は、データを安全に保管するための暗号化やアクセス制限を設け、セキュリティ対策を徹底しなければなりません。また、スタッフに対してもセキュリティ意識の向上を図るための教育が必要です。データセキュリティのリスクを軽減することは、顧客の信頼を守る上でも欠かせない要素となります。
ポスタスの「POS+ retail(ポスタスリテール)」で在庫管理を効率化
クラウドPOSレジ「ポスタス」の小売店向けサービス「POS+ retail(ポスタスリテール)」では、さまざまな機能がレジ機能と連動し、店舗運営をサポートします。
多様な機能を搭載
「POS+ retail(ポスタスリテール)」には、在庫管理を効率化してくれる機能が搭載されています。
・棚卸・在庫管理機能
・在庫変動履歴機能
・在庫の店舗間移動機能
・発注・入荷・出荷機能
売上データの解析も可能で、発注量の調整や経営状況の把握も容易になります。
在庫管理業務とデータを一元管理
「POS+ retail(ポスタスリテール)」を活用すると、在庫管理業務とデータを一元管理できます。
従来の在庫管理システムでは、在庫データのみの管理で他のシステムと連携が必要でしたが、「POS+ retail(ポスタスリテール)」では商品が売れると在庫が自動的に更新されます。
・バーコードの読み取りによる棚卸し作業
・グループ店舗間で発生した在庫の移動履歴の確認
・会計時に販売した商品を自動で在庫からマイナス
・発注、入出庫管理
・検品
まとめ
経営状況の把握と経営判断に欠かせないのが在庫管理です。在庫管理が常時適切に行われている状況をつくり上げることで、売上の向上とコストの軽減が見込めます。
入出荷作業や棚卸し、検品などさまざまな業務が含まれる在庫管理は、従業員にとって負荷のかかる業務です。在庫管理システムやPOSシステムを活用して、従業員の負担を軽減しつつ、取得したデータを健全経営にいかしていただけると幸いです。
関連記事:POSシステム(ポスシステム)とは?機能・特徴・メリット
よくある質問
在庫管理のみを行うシステムでは、商品の入出荷や棚卸しなど在庫管理に関するデータのみの管理となることが一般的で、他システムとの連携が必要となります。一方、ポスシステムは、レジと商品在庫が連携している為、在庫管理に関するデータを一元管理できるようになります。売上データも解析できるため、発注量の調整や経営状況の把握も容易になります。
システムの導入なので初期費用が発生します。なかには停電時にPOSシステムが使えなくなる
メーカーもあります。そのため、UPS(無停電電源装置)の導入やバックアップシステムの準備など、停電時の対応策を検討する必要があるでしょう。