毎日お客様とスタッフが直接触れ合う飲食店やアパレル店、小売店では、正しい接客用語を使うことが大切です。料理や商品にいくら魅力があっても、不愉快な接客をするお店からは、お客様の足がだんだんと遠ざかってしまいます。
本記事では、8大接客用語を中心にコンビニエンスストア・スーパーマーケットなどの小売店や、アパレル店、飲食店で頻出する接客用語とNGフレーズをご紹介し、正しい接客用語を理解するための手助けをします。
【基本】8大接客用語
接客用語の基本中の基本といえるのは、以下の8つのフレーズです。
- いらっしゃいませ
- お待たせいたしました
- かしこまりました
- 少々お待ちください
- 申し訳ございません
- 恐れ入ります
- ありがとうございました
- 失礼いたします
まずは、小売・アパレル・飲食などの業種を問わずどの店舗でも使用する、お客様をお迎えする初めのあいさつ「いらっしゃいませ」です。お店の第一印象を決める大事なポイントになるフレーズですので、明るくハキハキと発しましょう。イメージとしては、ドレミ音階の「ラ」の高さの音を出せるとベストです。
「お待たせいたしました」は、料理や商品をお客様に提供する際に、必ず添えたい一言です。実際は短時間であっても、マナーの意味でも常に「お待たせいたしました」を習慣づけましょう。同じ理由から、お客様を待たせるときは、必ず「少々お待ちください」と告げてからその場を離れるようにします。
「かしこまりました」「恐れ入ります」「申し訳ございません」はいずれも謙譲語で、「わかりました」「ありがとう」「すみません」を自分の立場を下げて使う表現となります。日常会話ではあまり使わないため、接客に慣れていないとなかなかスムーズに出てこないことがあるかもしれません。積極的に使って、早く口を慣らすようにしてください。中でも「申し訳ございません」は謝罪のときに使う言葉です。誤って「すみません」と言ってしまうとお客様をますます怒らせてしまうおそれがあるため、特に気をつけましょう。
「ありがとうございました」は、お客様をお見送りする際のあいさつです。これも「いらっしゃいませ」と同じく「ラ」の音階で、感謝を込めて明るく発声するようにしてください。
「失礼いたします」も、どのお店でも接客中によく使うフレーズでしょう。料理をテーブルに並べる際やお客様と通路ですれ違うときなど、さまざまなシーンで使える汎用性の高い接客用語です。お客様に近づくタイミングで自然と口から出てくるよう、習慣づけると良いでしょう。
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接客におけるクッション言葉の重要性
接客用語の中には、「恐れ入ります」「かしこまりました」のように、間にはさむことで会話が丁寧かつプロフェッショナルらしくなる“クッション言葉”があります。クッション言葉はスムーズな接客には欠かせない重要なものですので、下記の例文を参考にうまく会話に取り入れてみてください。
- NG:こちらのボードにお名前をお書きください
- GOOD:恐れ入りますが、こちらのボードにお名前をお書きください
- NG:こちらの席にご案内いたします
- GOOD:恐れ入ります。こちらのお席でよろしいでしょうか
- NG:すぐにお調べいたします
- GOOD:かしこまりました。すぐにお調べいたします
レジの接客用語
レジでお客様に対応する際、以下の5つの接客用語はよく使われます。しかし頻出するにもかかわらず、いわゆる“バイト敬語”と呼ばれる間違った使い方をしているスタッフが多いため、ぜひ正しいフレーズを身につけさせましょう。
- よろしかったでしょうか→よろしいでしょうか
- ~になります→~でございます、~です
- ~円からお預かりします→~円、お預かりします
- なるほどですね→おっしゃる通りです
- すみません→申し訳ございません
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コンビニ・スーパーで使用する接客用語
コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、下記のような接客用語が頻繁に使われています。どのような場面で使うのか、またこれらの用語を使うときにやってしまいがちなNG例などを、次項で具体的に解説します。
- 次にお並びのお客様、こちらのレジで承ります
- レシートのお渡しでございます
- どうかなさいましたか
- ○○のポイントカードはお持ちでしょうか
次にお並びのお客様、こちらのレジで承ります
「次にお並びのお客様、こちらのレジで承ります」は、いわゆる“フォーク並び”でレジを待っているお客様を呼び込む際に、よく使うフレーズです。つい「こちらのレジへどうぞ」と言いたくなりますが、「引き受ける」の謙譲語である「承る」を使うことで、お客様への敬意を示すことができ丁寧な印象を与えます。
レシートのお渡しでございます
つり銭とレシートを渡す際に使う定番のフレーズですが、これを誤って「レシートのお返しです」と言ってしまうのはNGです。つり銭はお客様に「返す」ものですが、レシートは「返す」のではなく「渡す」ものです。レシートを差し出す際は、「レシートのお渡しでございます」が正解です。
「先に●●円のお返しでございます」とまずお釣りをお返ししてから、「レシートのお渡しでございます」とレシートを差し出すのが、最も丁寧な接客です。
どうかなさいましたか
何かに困っていそう、あるいは具合の悪そうなお客様への声かけは、「どうかなさいましたか」が正しい接客用語です。よくありがちな間違いとして「どうかいたしましたか」と言ってしまうケースがありますが、「いたす」は「する」の謙譲語で、自分がへりくだるときに使う表現です。お客様相手には不適切ですので、「する」の尊敬語の「なさる」を用いましょう。
○○のポイントカードはお持ちでしょうか
レジで接客する際に、お店のポイントカードの有無を確認するのは、親切かつ丁寧な接客方法です。声かけによって「そういえば」と思い出すお客様もいらっしゃいます。
最近はお店のカードだけでなく、楽天ポイントカードやTカードなどの提携ポイントサービスも多いため、「●●カードはお持ちですか?」と積極的に一声かけるようにしましょう。
アパレルで使用する接客用語
アパレル店では、下記のような接客用語が頻繁に使われています。
- ご試着なさいますか?
- 恐れ入りますが、こちらにお名前をご記入いただけますでしょうか
- ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております
まずアパレル特有のフレーズである「ご試着なさいますか?」は、接客の基本です。鏡の前で服を合わせていたり、パンツやスカートのサイズタグを見ていたりするタイミングで声かけすると、より効果的です。ここで注意したいのは、「する」の謙譲語「いたす」を使った「ご試着いたしますか?」というNGフレーズを言ってしまうことです。謙譲語はお客様に対しては不適切ですので、間違えないようにしましょう。
また、アパレルでは会計の際にショップカードを作ることも多いので、クッション言葉をはさんで「恐れ入りますが、こちらにお名前をご記入いただけますでしょうか」と声かけができると、かなり丁寧な印象を与えます。
レジを終えたら、お客様が購入した商品のペーパーバッグを店頭までお持ちし、出入り口でお渡しして「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」と笑顔を添えて見送りましょう。
飲食店で使用する接客用語
レストランやカフェなどの飲食店では、下記のような接客用語が頻繁に使われています。
- すぐにご案内いたしますので、こちらにおかけになってお待ちください
- 店内のご利用ですか?
- こちらが当店のフードメニューでございます
- ご注文は以上でよろしいでしょうか
飲食店の接客は、まずお客様を席にご案内する場面から始まります。「すぐにご案内いたしますので、こちらにおかけになってお待ちください」と椅子を勧めると親切です。この場合は案内するスタッフがへりくだって言う、「する」の謙譲語「いたす」を使うのが正解です。また、新型コロナウイルスの流行から持ち帰り利用をするお客様も増えたため、先に「店内のご利用ですか?」と確認すると良いでしょう。
お客様が席に着いたら、「こちらが当店のフードメニューでございます」とメニューを提示します。この場合、「メニューになります」と言ってしまいがちですが、「なる」とはAからBに変化するという意味ですので、「~になります」はNGです。
注文の最後には必ず「ご注文は以上でよろしいでしょうか」と伺って、オーダー漏れがないか確認します。この場面では「よろしかったでしょうか」と過去形で聞くのは間違った日本語で、NGですので注意してください。
接客にはおもてなしの心が重要
小売業・アパレル業・飲食店でよく使われる接客用語はそれぞれ違いますが、共通するのは、おもてなしの心を込めた「接遇」の視点と姿勢が重要であるということです。「来店してくださって嬉しい」「少しでも快適に食事やお買い物を楽しんでほしい」という気持ちを持って、丁寧な接客を心がけましょう。
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よくあるご質問
接客8大用語とは「いらっしゃいませ」「お待たせいたしました」「かしこまりました」「少々お待ちください」「申し訳ございません」「恐れ入ります」「ありがとうございました」「失礼いたします」とのことです。詳細は【基本】接客8大用語にて解説しているのでご参考ください。
接客用語の中には、「恐れ入ります」「かしこまりました」のように、間にはさむことで会話が丁寧かつプロフェッショナルらしくなる“クッション言葉”があります。クッション言葉はスムーズな接客には欠かせない重要なものです。