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2024.11.19
法律・制度 経営

経費で落とすとは?知っておきたい経費の基礎知識

経営者や経理担当者にとって、「経費」の概念を正しく理解することは必須です。本記事では、そもそも経費とは何か、そして「経費で落とす」とはどういうことかを解説します。

経費とは

経費で落とすことを理解する前に、まずは経費とはそもそも何かを理解しておきましょう。経費の概念と、「経費で落とす」の意味をそれぞれ解説します。

経費とは事業にかかる費用

経費とは、事業をする際にかかる費用を指します。言い換えると、事業で収入を得るために使ったお金ということです。

例えば飲食店の場合では、料理を作るために仕入れた食材の代金や使った水道代、電気代などが経費となります。また、店を周知するためにかかった広告費や、雇った従業員の給料なども経費に含まれます。

経費には、大きく分けて2種類あります。ひとつは、収入を得るために直接かかった費用です。先ほどの飲食店の例であれば、仕入れた食材の代金などが当てはまります。

そしてもうひとつが、販売や商品管理などのためにかかった業務上の費用です。こちらには、従業員に支払う給料や広告費などが該当します。

経費で落とすの意味

「経費で落とす」とは、会計処理において費用を経費として計上することです。

事業者の所得は、収入から経費を差し引くことで決まります。つまり、経費の金額が高まるほどに最終的な所得を低く抑えられることになります。所得税などについては所得に応じて課税されるため、経費をきちんと計上して所得を抑えることは節税にもなります。

ただし、所得を少なくしたいがために経費を不当に水増ししてはいけません。税務調査で経費として認められないと指摘された場合は追徴課税されることもあります。経費は利益を得るためにかかった正当な費用だと認識しておきましょう。

「何でも経費で落とせる」は勘違い?

何でも経費で落とせるのは勘違いなのでしょうか。経費には、経費として落とせるものと、経費には計上できないものがあるのが現状です。経費で落とせるものと落とせないものの特徴をそれぞれ解説します。

出典:国税庁/ No.2210 必要経費の知識

経費で落とせるもの

事業に関連して使ったお金であっても、すべてを経費で落とせるわけではありません。経費で落とせるものには、以下のような費用が挙げられます。

  • 仕入れ費:商品を作るための材料など、仕入れにかかる費用
  • 水道光熱費や通信費:水道や電気、ガス、通信など事業を運営するために必要な費用
  • 消耗品費:紙やペン、割り箸など消耗していくものにかかる費用
  • 旅費、交通費:仕事をするうえで必要な出張など、移動や宿泊にかかる費用
  • 接待交際費:取引先との飲食など、仕事上必要な交際にかかる費用
  • 給料、福利厚生費:従業員に支払う給料や賞与、福利厚生にかかる費用

経費に該当するかを判断するポイントは、その行動が「事業に関連するかどうか」です。一見同じような行動であっても、事業に関連しない場合は経費として認められません。

例えば、取引先と食事をする場合、仕事の相談をメインとしていれば、食事にかかったお金を接待交際費として経費で落とせます。仕事の相談は事業を継続するうえで必要なものなので、経費に当たるのです。

経費で落とせないもの

基本的には、事業と直接関連しないものや、事業主自身の個人的な費用は経費として落とせません。例えば、取引先との会食費用でも、業務に関する話題が一切なく、プライベートな会話のみで終わる場合、経費として正当には認められにくくなります。

また、法人であれば経費として計上できる費用でも、個人事業主の場合は経費として落とせないものもあるため注意が必要です。健康診断費用は法人では福利厚生費として計上可能ですが、個人事業主では認められません。福利厚生は従業員のためのものと考えられており、個人事業主の健康診断費用はプライベートな支出とみなされます。

経費として計上するにあたって、認められにくいものとして、衣料品代が挙げられます。ビジネス用のスーツなど、業務に関連するものとして経費で落とせそうですが、日常でも着用する可能性があるため、経費として認められることは難しい傾向です。

事業でしか使わないものだと明確に判断できる基準がある場合は問題ありませんが、曖昧な場合は経費計上が難しくなるでしょう。

また、健康経営を目的にスポーツクラブの会員費を支出しても、従業員全員分としない限り経費として認められません。従業員を雇用しており、全員分の会員費を福利厚生費用として計上する場合のみ認められることが一般的です。

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経費で落とすメリット・デメリット

経費で落とすことに対して、具体的なメリットは何があるのかを解説します。また、経費で落とすデメリットも合わせて解説しますので、経費計上すべきかどうか悩んでいる方は参考にしてみてください。

経費で落とすメリット

事業にかかった費用を経費で落とすと所得を圧縮できるため、納める税金の額を減らすことができます。このことについて、以下の2つのケースを想定して説明していきます。

  • 個人事業主の場合
  • 法人の場合

個人事業主の場合

個人事業主が事業にかかった費用を経費で落とすと、翌年支払う所得税や住民税を減額できます。

法人化していない個人事業主の場合、得た収入に対して支払わなければならない税金は、所得税法に基づいて課される所得税です。所得税は、収入から経費や所得控除を引いた課税所得の金額に応じて、5〜45%課税されます。課税所得の金額が大きいと、その分支払う所得税額も高くなります。つまり、事業にかかった経費をきちんと計上すれば課税所得の金額を低くでき、所得税額を安く抑えられるのです。

また、経費を計上し課税所得を低く抑えることで、支払わなければならない住民税の額も少なくなります。住民税は、都道府県や市町村へ納めなくてはならない税金で、金額は前年の課税所得の金額をもとに決められます。そのため課税所得が低ければ、その分住民税の金額も安くなるのです。

確定申告後に金額が決まる所得税や住民税は、個人事業主にとって大きな出費となりがちです。だからこそ、事業にかかる費用はできるだけ経費で落とし、課税所得を抑えることが大切になります。

出典:国税庁/ No.2260 所得税の税率

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法人の場合

法人が事業にかけた費用を経費で落とすと、支払うべき法人税を減らせます

会社を作ると、会社の利益に対して法人税が発生します。法人税は、個人事業主の所得税と同様、課税所得に税率をかけて算出されます。つまり、法人も経費をきちんと計上すれば、法人税を抑えることができるのです。

また、法人の場合は個人事業主よりも経費で落とせるものの幅が広いため、経費で落とせるものがないか細かく確認すると良いでしょう。

出典:国税庁/ No.5759 法人税の税率

経費で落とすデメリット

経費で落とすことで節税効果が得られますが、出費自体は増えるため、資金が減少する点に注意が必要です。基本的なことですが、経費が増えすぎると利益が減少し、最悪の場合、赤字に陥ってしまいます。

また、経費として計上する内容が事業と直接関連しないものや、プライベートな支出を含んでいると、税務署から脱税の疑いをかけられるリスクとなりかねません。経費に計上する際は、その支出が事業と関連しているかどうかを確認し、必要に応じて関連性を証明する書類をそなえておくことが重要です。

すべての出費を経費として落とすことはできないことを理解し、正確な管理が求められます。経費計上に不安がある場合や判断に迷う場合は、税理士に相談するのが賢明です。適切なアドバイスを受けることで、正しい経費計上を行い、無用なトラブルを避けられます。

経費で落とす際の「家事按分」とは

フリーランスや個人事業主は、法人よりも経費の幅が狭いという特徴があります。その一方で、家事按分という考え方が可能です。家事按分に関して、次の内容を解説します。

  • 生活費の一部を経費として落とせる
  • 家賃の家事按分
  • 通信費の家事按分
  • 水道光熱費の家事按分

それぞれの、妥当な按分や考え方をみていきましょう。

生活費の一部を経費として落とせる

フリーランスや個人事業主が自宅で仕事をする場合、事業費と生活費が混在してしまいます。例えば電気やインターネット、ガスなどは仕事をするうえで必要となることが多いですが、これらはプライベートな時間でも使用するものです。このように事業費と生活費が混在しているときに、家賃や光熱費などの一部を必要経費として落とせます。これが、家事按分の考え方です。

事業費と生活費を明確に区別することは難しいですが、合理的な基準によって分けられる場合は、経費として按分できます。この合理的な基準は、フリーランスや個人事業主が自分で決めるものです。ただし、きちんと説明できるように合理的な基準を定めなければ、税務調査で不適切な按分を指摘され、追徴税等を課される可能性もあります。

経費にしたいからといって高すぎる割合に設定するのではなく、適切な家事按分を行うべきです。

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家賃の家事按分

賃貸住宅を事業にも使用している場合、家賃の一部を経費としての計上が可能です。ただし、按分のルールに従わなければならず、不適切な計上を行うと税務署から指摘されるリスクとなりかねません。

自宅兼事務所として利用している場合には、実際に事業に使っている割合のみが経費に含まれます。割合は、使用しているスペースの面積や、仕事に費やす時間帯をもとに算出する方法が一般的です。専用の作業スペースが家全体の20%を占めている場合、その20%分の家賃を経費として計上できます。

一方で、自宅とは別に専用の事務所を構えている場合、その事務所の家賃は全額を経費として計上可能です。ただし、事業主と生計を一にする家族の所有物件を利用している場合、経費として認められません。家賃の按分は正確な記録と根拠が必要で、不安な場合は税理士に相談するのが良いでしょう。

通信費の家事按分

通信費には電話の通話料やインターネットの通信料などが含まれ、事業に使用されている場合、経費として計上できます。ただし、プライベートでも利用している場合には、事業と個人使用分を按分しなければなりません。

通信費の按分方法としては、事業に使っている日数や一日の使用時間の割合に基づいて按分するのが一般的です。例えば、週に5日事業で使用している場合、その使用日数に基づいた割合を経費に計上します。

使用時間の詳細な記録までは不要ですが、税務署から説明を求められた際にそなえ、按分の基準を明確にしておくことが重要です。根拠となる割合が合理的であれば、スムーズに対応ができ、経費計上の正当性も保てるでしょう。

水道光熱費の家事按分

水道光熱費も、事業とプライベート両方に使用している場合、按分が必要です。自宅兼事務所として使っている場合は、業務に必要な使用分を正確に見積もり、その割合を経費として計上しなければなりません。

水道光熱費のメーターが事業用とプライベート用に分かれている場合は、それぞれの使用分が明確に分かるため、按分せずにそのまま計上できます。しかし、多くのケースでは、同一のメーターを使用しているため、事業使用割合を計算し、それに基づいて按分を行う必要があるでしょう。

按分方法としては、家賃の按分と同様に、建物全体の使用面積や事業に使用する時間帯を基準にするのが一般的です。自宅のうち業務スペースが全体の20%を占める場合、水道光熱費も20%を事業用経費として計上できます。また、一日のうち事業で使用する時間が全体の何割かを基にして按分も可能です。

カフェや外出先で仕事をすることが多い場合には、自宅での水道光熱費の使用割合が少なくなるため、経費として計上できる割合も減らさなければなりません。適切な按分がされていないと税務署から指摘されるリスクがあるため、実際の使用状況を反映した合理的な割合を算出し、根拠を明確にしておくことが重要です。

経費計上のタイミング

経費計上のタイミングには、以下の2つの考え方があります。

  • 現金主義
  • 発生主義

それぞれについて、具体的な例を交えて確認していきましょう。

現金主義

現金主義とは、収入や支出があったときに計上するという考え方です。実際にお金が動いた日付で、費用を計上します。

例えば、5月1日にかかる経費が確定し、6月30日に支払いをしたケースで考えてみましょう。このケースでは、5月1日時点ではまだお金が動いていません。実際にお金が動いたのは、6月30日です。そのため、現金主義に基づいて考えるのであれば、6月30日に帳簿をつけます。

ただし、日本の会計において現金主義が認められているケースは、あまり多くありません。それは、一定期間ごとの正確な損益を把握するのが難しいからです。基本的には、発生主義で会計処理をすることになります。

出典:国税庁/現金主義

発生主義

発生主義とは、収入や支出があったときではなく、収入や支出が発生する事実のあったときに計上するという考え方です。実際に金銭のやり取りがあった日ではなく、取引が発生した日に計上します。

例えば、現金主義で見た例と同様に5月1日にかかる経費が確定し、6月30日に支払いをしたケースを見ていきましょう。この場合、経費が発生したのは5月1日なので、発生主義に基づいて会計処理をするのであれば5月1日に帳簿をつけることになります。

企業会計の原則において、費用はこの発生主義で計上することとなっているので、多くの場合経費は発生主義で計上されています。

経費で落とす際の注意点

経費で落とす際の注意点として、次の3つの内容を解説します。

  • 不正計上にはペナルティがある
  • 領収書の保管を徹底する
  • 家族へ支払う給与は経費にならない

それぞれの注意点を詳しくみていきましょう。

不正計上にはペナルティがある

経費として認められない費用を不正に経費計上し、税金を実際よりも低く抑えると、税務署の調査が入る可能性があります。税務署が調査により未納の税金を確認した場合、その差額に加えて重いペナルティが科されることがあるでしょう。ペナルティには次の内容があります。

ペナルティ罰則
過少申告加算税未納分に10%が加算
無申告加算税50万円までは15%加算50万円を超える場合は20%が加算300万円を超える場合は30%が加算
不納付加算税未納分の10%が加算
重加算税過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%加算無申告加算税に代えて40%加算

さらに、不正計上が意図的であると認められた場合、罰則は会社にとどまらず、不正に関与した個人も罰せられる可能性があります。関与者は業務上横領罪や私文書偽造罪などの刑事罰に問われることもあり、社会的信用を損ねるだけでなく、個人に法的責任が追及されるリスクとなりかねません。

経費計上の際は正確な処理と記録を行い、不明な点や判断に迷う点があれば税理士に相談することが重要です。

出典:財務省/加算税の概要

領収書の保管を徹底する

領収書の保管は、通常は確定申告提出期限の翌日から7年間の保管が求められます。領収書の保管が不十分な場合、税務調査で指摘され、経費が認められず追加徴税の対象になることもあるため、日頃からの保管を徹底しなければなりません。

また、決算で赤字が発生し、欠損金の繰越控除を利用する場合は保管期間が10年に延長されますので、より注意が必要です。一方、白色申告を行う事業者は、領収書の保管期間が5年間と短くなりますが、保管の義務があることには変わりありません。

領収書を適切に保管しておけば、税務調査の際にも正当な経費として認められる可能性が高くなり、税務リスクの低減にもつながります。経費証明の要となる領収書は、整理・保管の習慣を身につけ、確定申告書類と共に保管場所を明確にしておくと良いでしょう。

出典:国税庁/ No.5930 帳簿書類等の保存期間

家族へ支払う給与は経費にならない

家族に支払う給与は、通常、経費として認められません。家族は同じ生計で生活している場合が多く、給与の支払いが事業上の経費ではなく、家計の内部移動とみなされるためです。家族に対しては、所得税の配偶者控除や扶養控除の対象として扱います。

ただし、家族が別居しており、経済的に独立していることが明らかで、事業の中で他の従業員と同等の仕事を担っている場合には、給与を経費として認められるケースもあるでしょう。家族に支払う給与を経費として計上する際は、慎重に状況を整理し、申告を行いましょう。

まとめ

事業にかかる費用を経費で落とすと、税制上のメリットがあります。しかし、事業に関わると考えるものすべてを経費にできるわけではありません。常識の範囲内で、適切に経費を計上しましょう。

また、会計処理の際に覚えておきたいポイントもいくつかあります。家事按分の考え方や現金主義と発生主義の違いなども、押さえておくとよいでしょう。

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