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2021.01.13
法律・制度 経営

経費で落とすとは?知っておきたい経費の基礎知識

経営者や経理担当者にとって、「経費」の概念を正しく理解することは必須です。本記事では、そもそも経費とは何か、そして「経費で落とす」とはどういうことかを解説します。

経費とは

経費とは、事業をする際にかかる費用を指します。言い換えると、事業で収入を得るために使ったお金ということです。

例えば飲食店の場合では、料理を作るために仕入れた食材の代金や使った水道代、電気代などが経費となります。また、店を周知するためにかかった広告費や、雇った従業員の給料なども経費に含まれます。

経費には、大きく分けて2種類あります。ひとつは、収入を得るために直接かかった費用です。先ほどの飲食店の例であれば、仕入れた食材の代金などが当てはまります。

そしてもうひとつが、販売や商品管理などのためにかかった業務上の費用です。こちらには、従業員に支払う給料や広告費などが該当します。

「経費で落とす」の意味

「経費で落とす」とは、会計処理において費用を経費として計上することです。

事業者の所得は、収入から経費を差し引くことで決まります。つまり、経費の金額が高まるほどに最終的な所得を低く抑えられることになります。所得税などについては所得に応じて課税されるため、経費をきちんと計上して所得を抑えることは節税にもなります。

ただし、所得を少なくしたいがために経費を不当に水増ししてはいけません。税務調査で経費として認められないと指摘された場合は追徴課税されることもあります。経費は利益を得るためにかかった正当な費用だと認識しておきましょう。

「何でも経費で落とせる」は嘘?

「何でも経費で落とせる」は嘘?

事業に関連して使ったお金であっても、すべてを経費で落とせるわけではありません。経費で落とせるものには、以下のような費用が挙げられます。

  • 仕入れ費:商品を作るための材料など、仕入れにかかる費用
  • 水道光熱費や通信費:水道や電気、ガス、通信など事業を運営するために必要な費用
  • 消耗品費:紙やペン、割り箸など消耗していくものにかかる費用
  • 旅費、交通費:仕事をするうえで必要な出張など、移動や宿泊にかかる費用
  • 接待交際費:取引先との飲食など、仕事上必要な交際にかかる費用
  • 給料、福利厚生費:従業員に支払う給料や賞与、福利厚生にかかる費用

経費に該当するかを判断するポイントは、その行動が「事業に関連するかどうか」です。一見同じような行動であっても、事業に関連しない場合は経費として認められません。

例えば、取引先と食事をする場合、仕事の相談をメインとしていれば、食事にかかったお金を接待交際費として経費で落とせます。仕事の相談は事業を継続するうえで必要なものなので、経費に当たるのです。

一方、同じように取引先と会食するケースでも、会食中に一切業務について触れずプライベートな会話に終始するのであれば、正当な経費として計上することは難しくなるでしょう。

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また、法人では経費として計上できる費用であっても、個人事業主は経費として落とせない費用があることにも注意が必要です。例えば、個人事業主は健康診断費用を「福利厚生費」として経費で落とすことができません。福利厚生は従業員のためのものと考えられているため、個人事業主の場合は健康診断費用もプライベートの支出となってしまうのです。

何が経費で落ちるのかは、明確に決められているものではありません。常識の範囲内で、経費として落とせるかどうか考えてみましょう。

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経費で落とすメリット

経費で落とすメリット

事業にかかった費用を経費で落とすと所得を圧縮できるため、納める税金の額を減らすことができます。このことについて、以下の2つのケースを想定して説明していきます。

  • 個人事業主の場合
  • 法人の場合

個人事業主の場合

個人事業主が事業にかかった費用を経費で落とすと、翌年支払う所得税や住民税を減額できます。

法人化していない個人事業主の場合、得た収入に対して支払わなければならない税金は、所得税法に基づいて課される所得税です。所得税は、収入から経費や所得控除を引いた課税所得の金額に応じて、5〜45%課税されます。課税所得の金額が大きいと、その分支払う所得税額も高くなります。つまり、事業にかかった経費をきちんと計上すれば課税所得の金額を低くでき、所得税額を安く抑えられるのです。

また、経費を計上し課税所得を低く抑えることで、支払わなければならない住民税の額も少なくなります。住民税は、都道府県や市町村へ納めなくてはならない税金で、金額は前年の課税所得の金額をもとに決められます。そのため課税所得が低ければ、その分住民税の金額も安くなるのです。

確定申告後に金額が決まる所得税や住民税は、個人事業主にとって大きな出費となりがちです。だからこそ、事業にかかる費用はできるだけ経費で落とし、課税所得を抑えることが大切になります。

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法人の場合

法人が事業にかけた費用を経費で落とすと、支払うべき法人税を減らせます

会社を作ると、会社の利益に対して法人税が発生します。法人税は、個人事業主の所得税と同様、課税所得に税率をかけて算出されます。つまり、法人も経費をきちんと計上すれば、法人税を抑えることができるのです。

また、法人の場合は個人事業主よりも経費で落とせるものの幅が広いため、経費で落とせるものがないか細かく確認すると良いでしょう。

経費で落とさなかった場合のデメリット

ここまで見てきたように、事業のために使った費用を経費で落とすことには、税制上大きなメリットがあります。つまり、費用を経費で落とさないことは、翌年支払う税金が増えるというデメリットに直結するのです。

もちろん、経費を不当に水増しして課税所得を減らそうとしてはいけません。ただし、本来経費で落とせるはずの費用まで計上しないとなると、減らせたはずの税金は一向に減らないのです。

正しく経費を計上することは、基本的な節税方法のひとつ。事業にかかった費用をきちんと把握し、無駄に多くの税金を納めなくて済むようにしましょう。

個人事業主に適用される「家事按分」とは

個人事業主に適用される「家事按分」とは

フリーランスや個人事業主は、法人よりも経費の幅が狭いという特徴があります。その一方で、家事按分という考え方が可能です。

フリーランスや個人事業主が自宅で仕事をする場合、事業費と生活費が混在してしまいます。例えば電気やインターネット、ガスなどは仕事をするうえで必要となることが多いですが、これらはプライベートな時間でも使用するものです。このように事業費と生活費が混在しているときに、家賃や光熱費などの一部を必要経費として落とすことができます。これが、家事按分の考え方です。

事業費と生活費を明確に区別することは難しいですが、合理的な基準によって分けられる場合は、経費として按分できます。この合理的な基準は、フリーランスや個人事業主が自分で決めるものです。ただし、きちんと説明できるように合理的な基準を定めなければ、税務調査で不適切な按分を指摘され、追徴税等を課される可能性もあります。

経費にしたいからといって高すぎる割合に設定するのではなく、適切な家事按分を行うべきです。

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経費計上のタイミング

経費計上のタイミングには、以下の2つの考え方があります。

  • 現金主義
  • 発生主義

それぞれについて、具体的な例を交えて確認していきましょう。

現金主義

現金主義とは、収入や支出があったときに計上するという考え方です。実際にお金が動いた日付で、費用を計上します。

例えば、5月1日にかかる経費が確定し、6月30日に支払いをしたケースで考えてみましょう。このケースでは、5月1日時点ではまだお金が動いていません。実際にお金が動いたのは、6月30日です。そのため、現金主義に基づいて考えるのであれば、6月30日に帳簿をつけます。

ただし、日本の会計において現金主義が認められているケースは、あまり多くありません。それは、一定期間ごとの正確な損益を把握するのが難しいからです。基本的には、以下で紹介する発生主義で会計処理をすることになります。

発生主義

発生主義とは、収入や支出があったときではなく、収入や支出が発生する事実のあったときに計上するという考え方です。実際に金銭のやり取りがあった日ではなく、取引が発生した日に計上します。

例えば、現金主義で見た例と同様に5月1日にかかる経費が確定し、6月30日に支払いをしたケースを見ていきましょう。この場合、経費が発生したのは5月1日なので、発生主義に基づいて会計処理をするのであれば5月1日に帳簿をつけることになります。

企業会計の原則において、費用はこの発生主義で計上することとなっているので、多くの場合経費は発生主義で計上されています。

まとめ

事業にかかる費用を経費で落とすと、税制上のメリットがあります。しかし、事業に関わると考えるものすべてを経費にできるわけではありません。常識の範囲内で、適切に経費を計上しましょう。

また、会計処理の際に覚えておきたいポイントもいくつかあります。家事按分の考え方や現金主義と発生主義の違いなども、押さえておくとよいでしょう。

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