デシル分析は、小売店の経営に関わる方が覚えておきたい分析方法のひとつです。とてもシンプルでわかりやすく、顧客分析を手軽に行えるというメリットがあります。
ここでは、デシル分析とABC分析やRFM分析との違い、活用シーンやエクセルを使った具体的な分析方法について詳しく解説します。
デシル分析とは
デシル分析とは、顧客を累計購入金額によってグループ分けする手法です。購買データを元に、購入金額の高い顧客から順に10等分してグループを決めます。そこから各ランクの購入金額や売上高構成比を試算し、分析を行いマーケティング施策につなげるのです。
例えば100人の顧客がいた場合、購入金額の高い順に並べてから10人ずつの10グループに分けます。そこから売上構成比や購入比率を試算することで、どのグループが売上貢献度の高い優良顧客層であるかがわかります。
活用シーン
デシル分析には、売上貢献度の高い優良顧客を把握できるメリットがあります。そのため、優良顧客を可視化してそこに集中したマーケティング施策を実施することにより、効率的に売上アップを図れるのです。
また、デシル分析によって顧客を適切にグループ分けして購入金額や売上構成比を分析することにより、それぞれのグループに適したマーケティング施策を行えるようになります。予算が限られていて、特定のターゲットだけに施策を展開したいときに向いている分析です。
ABC分析との違い
デシル分析と類似している分析方法に、ABC分析が挙げられます。ABC分析は、デシル分析と同じく購買金額を分析する方法です。しかし、デシル分析が10個のグループに分けるのに対し、ABC分析ではABCの3段階に分けることになります。
デシル分析よりもさらにシンプルなので、ざっくりとした分析をしたいときに適していますが、顧客数が多くなるとひとつのグループに属する人数も増えるので、ターゲットがあいまいになってしまいがちです。特定のターゲットを見据えて集中的に施策を展開したいときはデシル分析、購買状況の全体像をつかみたいときはABC分析と使い分けるのが良いでしょう。
RFM分析との違い
もうひとつ、デシル分析と似ている分析手法としてRFM分析があります。RFM分析とは、デシル分析より詳しく購買状況を把握し分析したいときに使われる手法です。
デシル分析で分析するのは顧客の購買金額のみですが、RFM分析では購買金額に加えて購買日や購買頻度も分析することになります。より細かく条件を加えることで絞り込みの精度が高まり、ターゲットへのアプローチ方法の幅が広がります。
一方、分析に加えるデータが増えるため分析の難易度が上がり、時間がかかってしまうのがデメリットです。時間がかかってもより細かくターゲットを絞り込みたい場合は、RFM分析を活用すると良いでしょう。
「RFM分析」の手順については、以下の記事をご参照ください。
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RFM分析とは?エクセルを使った分析方法やデシル分析との違いを解説
エクセルを使ったデシル分析方法
デシル分析は非常にシンプルなので、エクセルを使って自力で分析できます。以下の手順で進めていきましょう。
- 必要なデータをそろえ、リストを作成する
- 顧客ごとの購入金額を算出する
- 購入金額ごとに顧客を10個のグループに分ける
必要なデータを揃え、リストを作成する
まずは、デシル分析をするために必要なデータを用意してリストを作りましょう。
デシル分析に最低限必要なのは、顧客名と購入金額です。ここでは簡易的に、「注文番号」「顧客ID(顧客名)」「注文日」「購入金額」を表にしています。必要であれば、商品名や単価、数量などもリストに追加してください。
顧客ごとの購入金額を算出する
続いて、顧客ごとの購入金額を算出します。先ほど作成した表をすべて範囲選択し、エクセルの「挿入」タブから「ピボットテーブル」を選択しましょう。行ラベルに「顧客ID(顧客名)」、値ラベルに「購入金額」をドラッグしてください。購入金額の集計方法が「合計」になっていれば、顧客ごとの注文金額が自動で合計されます。
ピボットテーブルができたら、金額の大きい順に並べ替えておきましょう。購入金額列の1番上のセルで右クリックして、「並べ替え」「降順」を選ぶと購入金額の合計が大きい順に並び替えられます。
金額が大きい順番に並び替えると、以下のようになります。
購入金額ごとに顧客を10個のグループに分ける
次は、購入金額ごとに顧客を10個のグループに分けます。まず、購入金額が大きい順に順位をつけておきましょう。
そして、デシルランクを割り振ります。今回の顧客数は21名だったので、10個のグループに分けるために2名ずつ割り振ります。顧客数が10で割り切れないときは、購入金額が少なくマーケティング戦略立案において影響が少ない1番下のランクに入れてしまいましょう。
次に、「デシルランク」、「顧客数」、「合計購入金額」、「合計購入金額比率」で表を作成してください。合計購入金額は、SUMIF関数を使うと簡単に算出できます。
合計購入金額が出せたら、合計購入金額比率を算出します。合計購入金額比率は、合計購入金額を総合計金額で割ることによって求められます。
比率を計算したら、分析をするために円グラフを作成すると見やすくなります。
デシル分析のメリット
デシル分析には、以下のようなメリットがあります。メリットを正しく把握したうえで、自店のマーケティングに利用できるかどうか判断しましょう。
- エクセルで簡単に分析可能
- 施策の打ち方が分かりやすい
エクセルで簡単に分析可能
デシル分析のメリットに、エクセルが使えれば自分で簡単に分析できることが挙げられます。購入金額がわかれば手軽に分析できるため、初めての分析にも向いているといえるでしょう。
手間がかからず分析ができれば、スピード感を持って適切な戦略立案につなげられます。売上を伸ばす施策を速やかに実施したい場合にもおすすめです。
関連記事:エクセルで顧客行動分析を行う方法|デメリットやPOSレジ導入の効果も解説
施策の打ち方が分かりやすい
デシル分析は、方法だけでなく施策の打ち方もわかりやすいのが特徴です。基本的に売上を伸ばしたい場合は、購入金額が多いグループに多くの予算を使ってマーケティング施策を行い、効率的に効果を出せるようにします。
一方、顧客全体の売上を底上げしたい場合は、下位のグループ向けの施策を打つこともできます。
いずれにせよ誰に対し何をすれば良いかが明確にわかるので、マーケティング戦略立案に慣れていない方でも適切な施策を打つことができるでしょう。
デシル分析のデメリット
メリットがある一方、デシル分析にはデメリットもあります。デシル分析最大のデメリットは、シンプルだからこそさまざまな要因を無視してしまうことです。単純な分析であることは、メリットであると同時にデメリットにもなるのです。
顧客は商品を購入するとき、価格の高低だけで判断しません。商品の良さや流行など、さまざまな要因が絡み合って購入に至るものです。
しかし、デシル分析は単純に売上金額だけを分析する手法なので、ほかの要因を考慮することができません。長期的なマーケティング戦略を考えたり、顧客の動向を徹底的に把握したりしたい場合は、より細かい分析が必要になるでしょう。
POS+(ポスタス)では顧客分析が簡単にできる
細かい分析をして適切な施策につなげたいと考えたとき、デシル分析では物足りなく感じてしまうかもしれません。しかし、細かい分析になればなるほど難易度は上がり、自力で行うのは難しくなってしまいます。そこで、POSレジ「POS+ retail(ポスタスリテール)」がおすすめです。
POS+ retail(ポスタスリテール)は、小売店向けに特化したPOSレジです。POSシステムで顧客管理をしてくれるので、手作業で情報を管理する手間が省けます。また、わざわざエクセルで表を作らなくても詳細な顧客分析ができるため、忙しいなかでもきちんと分析をして売上向上につなげたい方におすすめです。
関連記事:POSレジとは? POSシステムとの違いや 導入することで得られるメリットを解説
まとめ
デシル分析では、顧客行動を詳細に分析することはできないため、精密なマーケティング戦略を考えたい場合は、より詳細な分析が必要です。
しかし、デシル分析を用いることで、優良顧客の可視化が手軽にできます。データを元にマーケティング戦略を考える際、デシル分析は基本となるものです。初めて顧客行動を分析する場合や、全体像を速やかにつかみたい場合は、デシル分析を取り入れてみましょう。また効率的な顧客分析にはクラウドPOSレジ導入も有効ですので選択肢として検討してみましょう。
よくある質問
デシル分析とは、顧客を累計購入金額によってグループ分けする手法です。購買データを元に、購入金額の高い顧客から順に10等分してグループを決めます。そこから各ランクの購入金額や売上高構成比を試算し、分析を行いマーケティング施策につなげていく分析方法になります。
デシル分析は、全顧客の購買履歴データを用いて、購入金額の高い順に顧客を10のランクに分け、それぞれのランクの購入比率や売り上げ構成比率を分析する手法を指します。、RFM分析とは異なり、デシル分析には「直近の購買日」という概念が入っていません。そのため、デシル分析では過去に一度だけ高額の商品を購買した顧客と、小額の商品を複数回購買した顧客が同じグループに属してしまうことがあります。