飲食店を経営するうえで、すべての経営者が知っておきたいポイント、それが「QSC」です。QSCとは「クオリティ」「サービス」「クレンリネス」の頭文字をとったもので、飲食店経営に欠かせないキーワードといわれています。
本記事では、飲食店におけるQSCとはどのようなものなのか、そしてQSC向上のポイントについて紹介します。
QSCとは
QSCの向上は、飲食店経営において重要な意味を持っています。
- Q:クオリティ(品質)
- S:サービス(接客)
- C:クレンリネス(清潔さ・身だしなみ)
QSCとは、「Quality:クオリティ」「Service:サービス」「Cleanliness:クレンリネス」の頭文字をとった言葉で、提供する商品の品質、接客、店舗の清潔さやスタッフの身だしなみの3つを指しています。飲食店が顧客満足度を向上させるためには、このQSCを行動指針として、提供する食事の質を高めるとともに、店舗やスタッフの清潔感を重視し、よりよい接客を行うことが大切です。
また、最近では、QSCに「H:ホスピタリティ」を加えた「QSC+H」を心がける必要があるといわれています。
なぜQSCの徹底が重要なのか?

飲食店の事業の根幹である料理の質が高ければ、新規顧客を呼び寄せリピーターを獲得できるようになるでしょう。
この料理における「質」とは、味はもちろんのこと、見た目やボリュームも大切になってきます。メニュー表を見ただけで顧客の心を引き付けられるビジュアルか、誰もが満足できるボリュームを設定できているか、味は確かか、定期的に確認し改善する必要があるでしょう。
飲食店では、こうした料理の質に加えて、接客の質も顧客満足度を左右する要素となりえます。呼ばれたらすぐにテーブルに駆け付ける、丁寧な話し方を心がけるなど、店舗全体で質のいい接客を提供できるように、研修を行うなど対策を取りましょう。
また、店舗全体や各スタッフの清潔感もお店のイメージに直結するものです。店舗全体が油汚れで黄ばんでいたり、スタッフの身だしなみが崩れていたりすると、味や接客に申し分のない店舗でも顧客が離れてしまう可能性があります。
店舗もスタッフも、常にお客様の目に触れていることを意識して各業務に取り組む必要があるのです。
関連記事:気持ちの良い接客サービスとは?5つの要素と成功事例をご紹介
QSC向上に必要なステップ
QSCを向上させるためには次のステップを踏み、それぞれの改善に取り組みましょう。
- 顧客アンケートの実施
- 顧客情報の収集・分析
- 改善案の共有・実践
- 結果の分析・共有
- 従業員の教育方法見直し
- 店舗やユニフォームのクリーニング
まずは顧客アンケートを実施して、自店舗の顧客の傾向を把握します。顧客アンケートで顧客それぞれの情報を収集できたら、その情報を分析しましょう。
次に分析結果をもとに改善案を練り、店舗全体で共有して実践します。改善の結果が出たら、データを分析して再び情報を店舗全体で共有します。
顧客アンケートの実施

まずは顧客アンケートの実施です。自店舗の商品やサービスを、家族や知人にすすめたいかを問う「顧客推奨度調査」を行うと良いでしょう。
顧客推奨度調査では、すすめたい度合いを0~10の数値で顧客に評価してもらいます。これによって、顧客それぞれがどのような商品に愛着を持っているのかを知ることができます。
人が自分の好きなものを誰かにすすめることは、一般的に心理的ハードルの高い行動だといわれています。よって、顧客推奨度調査の結果は信頼度が高く、店舗経営に活かしやすいと考えられているのです。
顧客推奨度調査について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:ロイヤルカスタマーとは?定義や優良顧客との違いなど詳しく解説
顧客情報の収集・分析
顧客情報の収集には、POSレジを活用しましょう。POSレジを使うことで、販売データに顧客データを紐づけて管理できるようになります。
顧客それぞれがいつ何をオーダーしたのか、一度の決済でどれくらいの金額を支払ったのか、リピート間隔は、などさまざまな情報を容易に収集できるのがPOSレジの利点です。
関連記事:飲食店はPOSレジがおすすめ?導入のメリットや導入事例を紹介!
改善案の共有・実践
分析したデータから改善点を見出したら改善案を策定し、すべてのスタッフに共有します。
例えば、リピート率の低さが浮き彫りになったのなら、リピート率を高めるために「既存メニューのクオリティをチェックし使う食材を見直す」「盛り付けを工夫するように指示する」といった改善案を共有しましょう。アンケートで「接客態度が悪い」などの回答があれば、スタッフに接客態度を改めるように伝えるとともに、全体で研修を行うなどの対策が必要です。
改善案を共有する際には、アンケートで得たお客様の声を添えることでスタッフの理解も得られやすくなります。
結果の分析・共有
改善案を実施したあとは、顧客側にどのような変化があったのか、販売データやアンケートから調査し、その結果を再びスタッフに共有します。
改善案通りに課題部分を改めることができたのか、改善案を実施したけれど顧客側に変化がなかったのか、結果を振り返り情報を共有して、次の改善につなげていきましょう。
従業員の教育方法見直し
QSCの向上には、従業員教育の方法を見直すことが重要です。マニュアルやチェックリストは基本的な業務の指針として必要不可欠ですが、マニュアルだけでは実際の接客シーンや清掃業務の細かなニュアンスを従業員が具体的にイメージすることは困難です。
そのため、実践的なトレーニングやロールプレイングを導入することが効果的です。実際の店舗環境で模擬的な接客シーンを演じることで、マニュアルには書ききれない接客の細かい点や、お客様の表情や態度に応じた柔軟な対応を学べます。 実際の業務で起こったトラブルをノウハウとして残しておき、予期せぬ状況をトレーニングに意図的に組み込むことで、従業員は臨機応変な対応力を養えます。実践的な教育を通じて、従業員は状況に応じて柔軟かつスマートに対応するスキルを身につけられるでしょう。
店舗やユニフォームのクリーニング
店舗やユニフォームの清潔さも、忘れずに確認しましょう。日常的な清掃活動やユニフォームの通常洗濯だけでは、時間の経過とともに落ちにくい汚れが蓄積され、店舗全体が徐々に不衛生になる可能性があります。床や壁の染み込んだ汚れ、換気扇周りの油汚れ、ユニフォームの襟や袖の黄ばみなどは、通常の清掃では完全に除去することが困難です。
普段の清掃では落ちにくい汚れは、専門のクリーニング業者を定期的に利用することが効果的な解決策となるでしょう。プロの技術と専用の洗剤・機材を用いることで、普段では取れない頑固な汚れも徹底的に除去できます。 また、清潔な環境で働くことは、従業員の仕事に対する誇りやモチベーションの向上にもつながります。
QSCのチェック項目

自店舗のQSCの現状を知るためには、QSCそれぞれがどのような状態にあるのかチェックすることも必要です。QSCそれぞれのチェックシートを作り、定期的に確認するようにしましょう。
QSCのチェックシートには、「QSC値を高めるため、あるいは維持するために必要な項目」を入れ込むことが大切です。QSCそれぞれでチェックしておきたい項目の例を紹介します。
Q:クオリティのチェック項目の例
- 食材の鮮度
- 食材の廃棄量
- 調理手順の再現性の高さ
- 調理後すぐにテーブルに料理が届けられているか
- 見た目はいいか
S:サービスのチェック項目の例
- 来店から席に案内するまでの応対の質
- コミュニケーションは過不足なくとれているか
- 混雑時にも問題なく対応できているか
- クレーム時の対応オペレーションを理解しているか
- あいさつをしっかりできているか
- 笑顔で接客できているか
C:クレンリネスのチェック項目の例
- 駐車場はきれいか
- 従業員の身だしなみは整っているか
- 客席は清潔か
- 客席から見た店内の様子は万全か
- トイレを清潔に保てているか
- 店内全体の整理整頓はできているか
- 感染症対策は万全か
お客様に安心して来店いただけるような環境づくりに注力しましょう。
QSCのバリエーション
QSCには複数のバリエーションがあります。前述したQSC+Hとあわせていくつかのバリエーションを紹介します。
- QSC+H
- QSC+A
- QSC+V
QSC+HはQSCに「H:ホスピタリティ」を加えたもの、ほかの二つはQSCに「A:アトモスフィア」日本語にすると雰囲気を加えたもの、「V:バリュー」つまりは価値を加えたものです。
QSC+H
ここでいうホスピタリティとは「おもてなし」のことです。接客は通常のサービス、おもてなしは顧客に喜ばれることを意識し積極的に行う「接客の先」のサービスといえます。
子ども連れの顧客に対して子ども用の椅子を用意するかどうか聞くのが接客で、泣いている子どもがいたらそっと飴やおまけのおもちゃを渡すなどの行為がホスピタリティというイメージです。
関連記事:接客とは?接遇との違いや接客の質を上げるポイントを解説
QSC+A
QSC+Aのアトモスフィアとは、お店の雰囲気や空気感のことを指します。「あのお店は雰囲気がいい」と思ってもらえれば、その顧客はリピーターになる可能性が高くなります。
店舗の外装・内装からBGM、スタッフの制服にも気を配り、顧客が料理の味に加え雰囲気まで楽しめるようサービスを提供します。
QSC+V
QSCに「V:バリュー」、つまり価値を加えたものがQSC+Vです。これはマクドナルドが提唱したもので、同社の理念として掲げられています。
ここでいうバリューとは、「顧客の満足につながるものすべて」を指すもので、マクドナルドでは企業の売上向上のために、各店舗の良いイメージを顧客に伝える必要があると考えられています。
飲食店がQSC向上に取り組んだ事例
飲食店がQSC向上に取り組んだ事例として、次の2つの例を紹介します。
- すかいらーくホールディングス
- 町田商店(ラーメン)
それぞれの例を参考に、自店舗のQSC向上に取り入れてみてください。
すかいらーくホールディングス
すかいらーくホールディングスは、中長期成長ロードマップで、QSC向上を最重視したオペレーション改革を店舗営業戦略の1つとして位置付けています。
2022年には顧客満足度覆面調査ツールを新たに導入し、サービス品質の客観的な評価と改善に着手しました。覆面調査により、各店舗のサービスレベルを定量的に把握し、具体的な改善ポイントを特定しています。
さらに、「収益改善プロジェクト」を立ち上げ、特定のモデル店舗を選定して集中的な改善活動を展開しました。収益改善プロジェクトでは、「売上向上」「コスト削減」「生産性向上」の3つの観点から包括的なアプローチを行い、QSC向上と収益性改善の両立を目指しました。
出典:すかいらーくグループ/2,700店舗にミステリーショッピングリサーチを導入決定
町田商店(ラーメン)
町田商店では、全店舗で均一な品質とサービスを提供するため、システムパワーを活用したQSC向上に注力してきました。システムパワー経営により、各店舗間でのQSCのばらつきを最小限に抑え、どの店舗でも同じ水準の商品とサービスを提供することを目指しています。
また、従業員のモチベーション向上を重視し、独自のインセンティブ制度を導入していることも特徴です。従業員の業務習得状況を可視化するポジション習得制度を実施しています。従業員は自身のスキル向上の進捗を明確に把握でき、次のステップに向けた目標設定が容易になります。
出典:ITmediaビジネス/家系ラーメンの「町田商店」が超えた「多店舗展開10億円の壁」 カギはシステムパワー経営にあり
自店舗で大切にするべきこととは

QSCの実践と徹底によって、企業や店舗の価値は向上します。そしてQSCを売上につなげるためには、店舗は「何を大切にしたいのか」を常に考え、行動することが大切です。チェーン展開のレストランだからといって、全店舗でQSCを均一化しようとするのではなく、地域に合ったサービスができないかなど、各店舗でQSCを計画・実行する必要があるでしょう。
QSCの実践で、経営危機から脱した店舗が実在します。アメリカのアルバートソンというスーパーは、1990年代に最盛期を迎え店舗数を拡大したものの、2000年代には経営難に陥り、不採算店舗を閉鎖し続ける状態になっていました。
このような中で、生き残り続けた店舗があります。その店舗では、顧客満足度の向上のために、顧客のニーズを把握して商品を仕入れ、提供するスタイルも他の店舗にならえではなく自店舗独自の方法を追求し、さらに顧客にいい印象を与えた従業員の給与をアップするなどの施策を実行したといいます。「顧客満足度の向上」「従業員満足度の向上」その両面を考えることで、どちらにもいい効果を与えた形です。
このように、QSCは、しっかりと計画して実施し、改善ポイントを見つけ実行していくことが大切です。QSCを日ごろから心がけられるよう、チェックシートを用いたり、朝礼で確認したりするなど工夫すると良いでしょう。
まとめ
QSCのバリエーションを経営理念に掲げる企業もあるように、QSCは店舗経営において非常に重要な考え方です。常日頃から意識して実施できるよう、スタッフにも周知徹底を行い、アクションプランを立て、その結果をフィードバックして新たな改善点につなげていくなど、具体的な行動に移していきましょう。
関連記事:飲食店オペレーションの重要性とは?効率的な運営がもたらす効果
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よくある質問
QSCとは「Quality:クオリティ」「Service:サービス」「Cleanliness:クリンリネス」の頭文字をとった言葉で、提供する商品の品質、接客、店舗の清潔さやスタッフの身だしなみの3つを指しています。
飲食店が顧客満足度を向上させるためにはこのQSCを行動指針として、提供する食事の質を高めるとともに、店舗やスタッフの清潔感を重視し、よりよい接客を行うことが重要と言われています。
飲食店でのQSCとは次の内容を指します。
Quality(品質):料理の味、鮮度、見た目、温度など、提供する食品の品質
Service(サービス):接客の質、スピード、丁寧さ、従業員の態度など、顧客へのサービス全般
Cleanliness(清潔さ):店舗の清掃状態、調理場の衛生管理、従業員の身だしなみなど、店舗全体の清潔さ
詳しくは「QSCとは」を参考にしてみてください。
QSCに「H:ホスピタリティ」を加えたものです。ここでいうホスピタリティとは「おもてなし」を意味しています。通常の接客に加えてお客様の状況に合わせて寄り添ったサービスができるかどうかがポイントです。
詳しくは「QSC+H」を参考にしてみてください。