領収書を手書きで発行する際に、宛名や但し書きなどで時間を要することがあります。POSレジで発行される領収書は、必要な記載内容が印字されるため効率よくレジ業務をこなせます。
今回の記事では、POSレジの領収書発行機能を解説します。また、領収書それぞれの項目の詳細や発行する際の注意点も解説しているため、これからPOSレジ導入を検討している方は参考にしてみてください。
領収書とは
領収書は金銭の受け渡しがあったことを証明する重要な書類です。主に経費精算の際に使用されるもので、記入に間違いがあったり複数発行したりすることは避けなければなりません。
ここでは、領収書が購入の証明であることや経費精算で利用されること、レシートとの違いなどを解説します。
商品購入の証明
領収書とは、商品やサービスの購入を証明する重要な公式文書です。
購入者が代金を支払った証拠として機能し、購入日時や場所、商品名、金額などの詳細情報が記録されます。
領収書は、記載されている情報によって取引の透明性が確保され、後日問題が発生した際に参照できる証拠書類です。
領収書は企業活動や個人事業で発生した経費の使用を正当化する証明となり、会計処理や税務申告の資料として活用されます。
さらに、組織内での資金の流れを可視化することで、内部不正を防止する重要な役割も担っています。このように、領収書は、経済活動の信頼性と透明性を支える基盤として機能しているのです。
経費精算で使われる
領収書は、経費精算の際に欠かせない重要書類です。
領収書は商品やサービスを購入した証明となるため、事業の経費処理の基本的な証拠書類として使用されています。
企業の経理部門は、領収書をもとに適切な経費計上と会計処理を行うことで、正確な財務報告を行っています。
経費計上が正確に行われているかの確認書類にもなるため、領収書は指定された一定期間保存しておかなければなりません。領収書の保管に必要な期間は次のとおりです。
法人 | 黒字申告 | 7年 |
赤字申告 | 10年 | |
個人 | 青色申告 | 7年 |
白色申告 | 5年 |
また、領収書の保管は不正防止の観点からも重要です。領収書という物理的な証拠がなければ、「実際には使用していないが、経費だけ計上する」などの不正利用が可能になってしまいます。
架空経費の計上は、企業の財務状況をゆがめるだけでなく、税務上の問題を引き起こす可能性もあります。
関連記事:確定申告で経費にできるもの一覧~書き方のポイントや計上できるもの一覧
レシートとの違い
領収書とレシートは日常的に使われる購入証明書類ですが、その役割と記載内容には次のような明確な違いがあります。
種類 | 商品の記載 | 宛名の記載 |
---|---|---|
レシート | あり | なし |
領収書 | なし | あり |
領収書の最大の特徴は、受取人の情報が明記されている点です。受取人として、誰が金銭を支払ったかの宛名が明記されています。
宛名が記載されていることによって、特定の個人や企業が支払いを行ったことを正式に証明する機能を持ちます。一方、レシートには通常、宛名の記載がありません。
レシートは、主に購入した商品やサービスの詳細、価格、日時、購入場所などの情報を含み、取引の記録として機能します。
企業の経費精算や確定申告などの公的な手続きでは、単なるレシートではなく宛名入りの領収書が求められることが多い傾向です。
POSレジで領収書を発行する際に印刷される内容
POSレジを活用することで、領収書に必要な内容を簡単な操作で出力できます。
一方で、手書きで領収書を発行する際は、必要な情報を漏れがないように記入しなければなりません。
領収書を発行する際に印刷される内容として、次の内容が挙げられます。
- 領収書であることを示すタイトル
- 取引年月日
- 発行者
- 宛名
- 但し書き
- 金額
- 収入印紙
- 適格請求書発行事業者番号
- 税率ごとに区分して合計した対価の額
- 税率ごとに区分した適用税額
以上を参照に、POSレジの出力内容に不備がないか確認しましょう。また、手書きで領収書を作成する際の参考にもしてみてください。
関連記事:【領収書の書き方】宛名(会社名・個人名・個人事業主)など徹底解説
領収書であることを示すタイトル
多くの領収書には最上部に「領収書」という文字が明記されており、これによって文書が単なるメモや情報提供ではなく、正式な金銭受領の証明書類であることを示しています。
領収書の記載がない場合、企業によっては経費として認められないケースがある点に注意が必要です。
多くの企業では経費処理を厳格に実施し、正式な「領収書」の表記がある文書のみを有効な書類として受け付ける規定を設けています。
取引年月日
領収書を発行する際には、金銭の授与が行われた日を正確に記載することが求められます。
記載する日付は、支払いが実際に行われた日付を反映しており、後日の会計処理や税務申告の際の重要な基準の一つです。
日付は月日だけではなく、年度まできちんと記載されていなければなりません。会計年度をまたぐ経費処理や、複数年度にわたる取引の管理で特に重要です。
正確な年月日の記載がない領収書は、企業の経理規定によっては無効とみなされ、経費として認められないケースもあります。
発行者
領収書に記載される発行者情報は、取引の透明性と信頼性を確保する上で重要な要素です。領収書を発行した人や会社の名称・住所・連絡先を正確に記載することで、その取引の当事者が明確化されます。
複数店舗を運営している企業の場合は、どの店舗で発行されたかを特定できるよう、発行した店舗の名称まで記載されるべきです。
また、社印は領収書で必須の要素ではありませんが、社印が押されていることで領収書としての証拠能力が高まります。
後日のトラブル防止や取引の正当性を証明する際に役立つため、取引相手のためにも社印があったほうが望ましいとされています。
宛名
領収書の宛名記載は、取引の当事者を明確にする意味を持ちます。そのため、領収書を受け取るほうの名前や会社名は正式な名称で記載されるべきです。
特に会社名は、「株式会社」などの法人形態を省略せずに正確に記載しなければなりません。また、「上様」という一般的な宛名は、正式な文書としてはふさわしくないため避けるべきです。
具体的な宛名のない「上様」表記の領収書は、特定の取引相手との関係を証明する証拠能力が低く、企業の経費精算規定によっては受理されないケースもあります。
但し書き
領収書の但し書きは、取引の具体的内容を明示するための欄です。但し書きには、商品やサービスの名称、数量、単価などの取引の内容が分かるように記述します。
但し書きの情報は後日の取引内容確認や経費精算の際に、何に対して支払いが行われたかを明確にする役割を果たします。
但し書きを記入する際は、お客さまに確認してから記入するようにすることでトラブルを防止できるでしょう。
事前確認により、購入者の意図と異なる内容が記載されることを防ぎ、後日の認識の相違によるトラブルを未然に防げます。
但し書きは取引の透明性を高め、お客さまとの双方にとって安心できる証拠書類として、取引内容を残せる効果があります。
金額
領収書に記載する金額は、いくつかの重要なルールが存在します。具体的には、次のルールに注意する必要があります。
記入箇所 | 記入する内容 |
---|---|
金額の前 | ¥ |
金額の末尾 | ― または ※ |
3桁ごと | , |
金額の前に「¥」を付けることには不正防止の目的があります。そのため、¥の記入は数字との間にスペースを作らずに記入しなければなりません。
末尾の「―」または「※」も同様に、記号を入れることで不正に桁数を増やすなどの行為を防止する意図があります。
収入印紙
領収書における収入印紙の貼付は、印紙税法に基づく重要な法的要件です。税抜きで5万円以上の領収書には収入印紙を貼付しなければなりません。
また、5万円以上100万円以下の領収書の場合は、200円の収入印紙が必要です。領収書に収入印紙を貼る際には、領収書と収入印紙の両方にまたがるように割印を押します。
割印は、収入印紙が確かにその領収書のために使用されたことを証明し、再利用を防止することが目的です。
適切な収入印紙の貼付と割印は、税法上の要件を満たすだけでなく、取引の正当性を示す重要な要素です。
出典:国税庁/ No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書
適格請求書発行事業者番号
インボイス制度の導入に伴い、領収書には適格請求書発行事業者番号の記載が必要です。
インボイスの発行には適格請求書発行事業者の登録番号が必要不可欠であり、登録番号がなければ正式なインボイスとして認められません。
番号は「T+13桁の法人番号または13桁の数字」という特定の形式で付与されます。登録番号を取得するためには、税務署に所定の用紙を提出して申請する必要があります。
登録が完了すると、適格請求書発行事業者として認められ、取引先は仕入税額控除を受けることが可能です。
関連記事:インボイス制度対応のPOSレジとは?導入時に知っておきたいポイント
税率ごとに区分して合計した対価の額
インボイス制度で、税率ごとに区分して合計した対価額の記載は必須条件です。軽減税率制度を考慮し、標準税率(10%)と軽減税率(8%)を明確に区別する必要があるためです。
領収書上では、どの商品に対してどの税率が適用されているのかがひと目で分かるよう、区分して記載することが求められます。
消費税別の明確な区分により、購入者は正確な税額計算と適切な経理処理が可能になり、税務申告の際のミスや混乱を防止できます。
税率ごとに区分した適用税額
領収書には税率ごとに区分した適用税額も明記する必要があります。
単に商品やサービスの合計金額だけでなく、各税率に対応する実際の消費税額を具体的な金額で示さなければなりません。
例えば、「10%対象商品:5,000円 消費税額:500円」「8%対象商品:3,000円 消費税額:240円」のように記載します。
明確な税額表示により、購入者は自社の経理処理で正確な仕入税額控除を行えるほか、適正な税務申告が可能です。
また、税務調査の際にも取引の透明性が確保され、スムーズな対応につながります。
POSレジで領収書を発行する際の注意点
POSレジで領収書を発行する際は次のポイントに注意する必要があります。
- 控えを保管しておく
- 金額は不正を防止する書き方で書く
- レシートと同時に発行しない
- 宛名は省略しない
それぞれの注意点を詳しく解説します。
控えを保管しておく
POSレジで領収書を発行する際の注意点として、控えの保管が挙げられます。
領収書の控えを適切に保管しないと、どのような取引に対して領収書を発行したのか、発行元に履歴が残りません。
控えが残らないと、受け取った側から取引内容に関する問い合わせがあった場合に、履歴がたどれず確認ができない可能性があります。
お客さま対応の質を低下させるだけでなく、信頼関係の構築にも悪影響を及ぼしかねません。また、税務調査の際にも取引の証明が困難になり、不必要なトラブルを招く可能性があるでしょう。
国税庁は、領収書保管のリスクを回避するため、紙の控えだけでなく電子データでの保管も勧めています。
電子データでの保管は、物理的なスペースの節約になるだけでなく、検索性の向上や長期保存のしやすさなどのメリットもあります。
金額は不正を防止する書き方で書く
金額を手書きで記入する際は、不正を防止するための記載方法に注意しましょう。金額の改ざんや追記を防ぐための工夫が必要です。
例えば、「10,000」と記載した場合、数字の前に「1」を追加して「110,000」に改ざんされるリスクがあります。
不正行為は、発行者が意図しないまま金額の水増しに加担したと疑われることにもなりかねません。
金銭的な問題にとどまらず、ビジネス上の信用問題や、場合によっては法的な問題にまで発展する可能性があります。
金額の前には「¥」を、末尾に「-」か「※」を忘れずに記載することが推奨されています。適切な金額記載は、健全な取引関係の構築と維持に貢献する重要な要素です。
レシートと同時に発行しない
レシート自体も領収書としての役割を果たしており、購入の証明書類としての基本的な機能は、領収書とレシートの両方が持ち合わせています。
そのため、領収書とレシートを同時に発行してしまうと、同一取引に対して2つの証明書類が存在することになり、二重発行の状態となりかねません。
二重発行の状況は、意図せずとも不正な経費の二重計上につながるリスクがあります。
購入者側が別々の経費として処理してしまうと、会計上の不整合が生じ、後の監査や確認作業で問題となります。
取引の透明性と正確性を確保するためには、どちらか一方の発行にとどめるか、レシートを回収した上で領収書を発行するなどの対応が望ましいでしょう。
宛名は省略しない
領収書の発行では、宛名や名称は決して省略してはいけません。特に多くの場合で見られる「株式会社」を(株)と括弧を使用して省略するなどの簡略化は、正式な領収書としては不適切です。
宛名の正確さは、領収書の法的・経理的な有効性に直結します。宛名を間違えたり、正式名称を使用しなかったりすると、その領収書が正式な経費証憑として認められません。
結果的に、お客さまの経費処理や税務申告に支障をきたし、大きな迷惑をかけることになります。
特に企業間取引では、経理部門が厳格なチェックを行うことが多く、不備のある領収書は受理されないケースもあるでしょう。
POSレジで領収書を発行するメリット
POSレジで領収書を発行することで、インボイス制度への対応が容易になります。また、インボイスへの対応も含めて、混雑時でも効率よく領収書を発行できることもメリットの一つです。
POSレジを活用するメリットを詳しく解説します。
インボイス制度への対応が容易
インボイス制度の導入により、領収書の発行要件が厳格化されました。
このような状況下で、手書きの領収書では、税率ごとの消費税額や登録番号の記入漏れが多く見られるのが現状です。記入漏れや不備があった場合、取引先の税額控除に影響を与える重大な問題となりかねません。
複数の税率が適用される商品を扱う場合、手書きでは計算や記載の正確性を保つのが難しいこともあるでしょう。
インボイス制度に対応したPOSレジを導入することで、要件を満たした領収書の発行が簡単に行えます。
POSレジは自動的に税率ごとの金額計算を行い、適格請求書発行事業者番号や必要な項目を漏れなく印字します。人為的ミスを防止し、法令遵守を確実にするとともに、発行作業の効率化も実現できることが強みです。
関連記事:レジミス対策 | 過不足金や操作ミスをなくす方法を解説
効率よく領収書を発行できる
領収書の発行は、従来の手書き方式では、特に混雑時などに専用の用紙を探し出し、慌てて記入するケースが多く見られました。
手書きは時間的プレッシャーも加わり、ヒューマンエラーのリスクが高まります。日付の記入漏れや、宛名の省略、印鑑の押し忘れ、インボイス番号の記入間違いなど、さまざまなミスが生じます。
領収書の記入ミスは、お客さまのクレームや信頼低下につながる深刻な問題です。特に忙しい時間帯や複数の顧客対応が重なる状況では、ヒューマンエラーの発生確率はさらに高まります。
一方、POSレジは、簡単な操作のみで必要な情報が漏れなく記載された領収書が即座に印刷できます。
発行時間の短縮だけでなく、正確性の向上も実現し、結果として顧客満足度の向上と業務効率化の両立が可能です。
まとめ
今回の記事では、POSレジの領収書発行を解説しました。領収書は金銭の受け渡しがあったことを証明する重要な書類です。
主に経費精算の際に使用されるもので、記入の間違いは避けなければなりません。
領収書には記入すべきさまざまな項目があり、また税率区分で金額を分けるなど、混雑時には対応が難しい記入項目もあることがミスにつながる要因の一つです。
POSレジを導入することで領収書の発行作業を簡素化できます。また、インボイスに対応した記入方法にも対応できるため、飲食経営の業務効率化を目指したい方は参考にしてみてください。
POSレジの領収書発行でよくある質問
POSレジで領収書を出す方法は、使用するレジの機種やシステムによって若干異なりますが、一般的な流れは以下のとおりです。
商品の会計処理が完了した後に、レジ画面上の「領収書」ボタンを選択
表示される画面で、宛名や但し書きなどの必要情報を入力
インボイス対応レジであれば、適格請求書発行事業者番号などは自動的に印字
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POSレジ導入によって領収書の発行作業が容易になるメリットがあります。
POSレジでの領収書再発行は基本的に可能です。
再発行の方法は、通常「過去取引」や「履歴」などのメニューから該当する取引を検索し、「再発行」ボタンで印刷します。
ただし、POS機種によって保存期間や操作方法は異なります。
多くのシステムでは当日分のみ簡単に再発行でき、過去の取引は管理者権限が必要な場合もあります。
また、再発行された領収書には「再発行」や「複製」の表示がされるシステムもあり、二重発行防止の仕組みが整っているケースが多い傾向です。