キャッシュレス決済が普及する中で、特に利用者が多い「クレジットカード決済」は店舗にぜひ導入しておきたい決済方法の一つです。とはいえ店舗にとっては、クレジットカード決済に伴う手数料や導入時の初期費用など気がかりな点も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、クレジットカード決済の手数料や相場について解説していきます。また、クレジットカード決済を導入するメリット・デメリットに加えて、決済手数料をなるべく安く済ませる方法もまとめているので、ぜひ今後の参考にしてください。
クレジットカード決済の手数料とは
クレジットカード決済手数料とは、クレジットカードを保有する利用者と、クレジットカード決済を導入する加盟店が負担する決済手数料を指します。クレジットカード会社は、クレジット決済が発生するごとに、カード利用者と加盟店の双方から手数料を受け取っています。
加盟店側に発生する決済手数料は、顧客が支払う代金に上乗せすることがクレジットカード会社の規約において禁止されており、加盟店が負担しなければなりません。クレジットカード決済による手数料で赤字が発生しないように、加盟店は商品の価格設定を慎重に行う必要があります。
決済手数料外に発生する費用
クレジットカード決済では、決済手数料以外にもさまざまな費用が発生します。下記の3つの費用について解説します。
- 初期費用
- 月額費用
- トランザクション費用
初期費用
1つ目は、クレジットカード決済導入における初期費用です。クレジットカード決済サービスを導入する際に発生する費用で、導入初月のみ請求されます。初期費用は、無料のサービスもあれば数十万円かかるサービスもあるので、導入時に比較してみてください。
月額費用
次に月額費用です。決済システムの利用料や運用に関わる毎月の固定費で、決済事業者ごとに料金が異なります。月額数千円〜数万円に設定されていることが多いです。
トランザクション費用
最後に、トランザクション費用です。トランザクション費用とは、クレジットカード決済代行会社を利用した場合に、決済処理を行うときに必要な費用です。クレジットカード決済の処理件数に応じて発生する費用であり、1回の決済当たり数円~数十円となります。
クレジットカード決済手数料の相場
クレジットカード決済の加盟店手数料は、決済金額に対して3~10%前後に設定されていることが多いです。とはいえ、業種や商品、店舗における売上規模などによって手数料が異なるので事前に確認しましょう。
特に、事業者の経営規模で決済手数料が異なる点は注意が必要です。例えば、大手の小売店だとクレジットカード決済手数料が1〜3%前後である一方で、個人経営の小売店では3〜5前後に設定されることがあります。
上記のように決済手数料が異なるのは、大手企業と個人経営では未回収リスクに差があるのが理由です。また小売店の中でも、コンビニ、家電量販店、デパートでも若干の差が生じるほか、サービス業は未払いリスクによって決済手数料が高いといわれています。
クレジットカード手数料を支払ってでも導入するメリット
クレジットカード決済手数料は、事業者にとって大きな負担となります。売上金から手数料が差し引かれることから、キャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性があるほか、商材によっては利益が出にくいことも考えられます。
とはいえ、クレジットカード決済手数料を支払ってでも導入するメリットがあります。そこで、事業者がクレジットカード決済を導入する5つのメリットを解説していきます。
新規顧客・リピーターの獲得
クレジットカード決済を導入するメリットとして、新規顧客やリピーターの獲得につながることが挙げられます。キャッシュレス決済が推奨されている中で、最小限の現金しか持ち歩かない消費者も増えてきました。現金をあまり持ち歩かない消費者にとって、クレジットカード決済に対応している店舗は利用しやすく、リピーターになる可能性も期待できます。
また、クレジットカード決済を導入していない店舗では、インバウンド需要への対応が難しくなります。訪日外国人観光客が来店しても、クレジットカードによる決済を行えないために購入ができなかった場合、機会損失となってしまいます。このように顧客獲得のためにも、決済手数料を支払ってでもクレジットカード決済を導入すべきといえるのです。
顧客の購入単価向上
2つ目のメリットとして、クレジットカード決済の導入により顧客の購入単価が向上する可能性が高まることが挙げられます。現金決済のみしか対応していない店舗だと、顧客は手元にある金額までしか支払うことができません。
しかしクレジットカードに対応していれば、顧客の現金が足りていない状況でも商品購入が可能であるほか、予算よりも高価なものを購入できるようになります。また、多くのクレジットカード会社はポイントがたまるサービスを展開しており、ポイント獲得目当てで高額商品を購入する顧客も珍しくありません。現金決済のみでは顧客の購入単価が上がりにくい一方で、クレジットカード決済を導入することで購入単価の向上に期待できます。
店舗スタッフの負担軽減
3つ目のメリットは、店舗スタッフの負担が軽減されることです。現金決済のみの店舗では、レジでの決済時に顧客から現金を預かり、レジからお釣りを取り出して手渡すという動作を繰り返し行うほか、レジ締め時に現金を計算する作業が必要となります。
クレジットカード決済を導入した店舗では、顧客からカードを預かって専用端末に差し込むだけで決済を済ませられるため、現金自体を扱う頻度が減るでしょう。さらにクレジットカード決済分は、自動的にデータが保管されるため、売上確認が便利になります。現金を取り扱うことによる負担を軽減するだけでなく、従業員の配置転換や人件費のコストカットにも生かせるのがメリットです。
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店舗の信頼性担保
クレジットカード決済を導入しているということは、店舗の信頼性を担保することにもつながります。クレジットカード決済を導入するためには、カード会社や代行会社における厳しい審査に通過しなければなりません。
つまり、クレジットカード決済を導入することで、社会的な信頼性を示せるメリットがあるのです。消費者に一定の安心感を与えられれば、高額商品が購入される可能性も高まり、全体的な売上アップも期待できます。
クレジットカード決済を導入する際の注意点
クレジットカードは店舗にとって、購入単価が上がりやすくなる、店舗の信頼性につながるなどのメリットがあります。しかし、導入時には注意点も押さえておかなければなりません。
以下の注意点を押さえた上で、クレジットカード決済の導入を進めていきましょう。
- 初期導入コストが発生する
- 入金サイクルにタイムラグが生じる
- セキュリティの管理を徹底する
導入コストが発生する
クレジットカード決済を導入する際に、初期導入コストが発生する点に注意が必要です。まずクレジットカード決済の導入においては、クレジットカード会社と直接契約する方法と決済代行会社と契約する方法がありますが、基本的にどちらも初期費用がかかります。
また記事冒頭でも解説した通り、クレジットカード決済サービスでは月額利用料や決済手数料が発生します。メリットを得られる一方で、コスト負担が高まってしまう点に気を付けましょう。
入金サイクルにタイムラグが生じる
クレジットカード決済導入で特に気を付けたいのが、入金サイクルにタイムラグが生じる点です。現金決済であれば、顧客の支払いと同時にお金が入金されますが、クレジットカード決済は後から入金されるため、売上が発生してから実際に入金が完了するまでに時間がかかります。
つまり、資金繰りが難しくなる可能性も考えられるのです。このことから、クレジットカード決済の導入を懸念する事業者も多くいます。なお、入金サイクルはクレジットカード会社によって異なり、当月末締め・翌月末入金、当月末締め・翌月15日入金といった形で独自に決まっています。資金繰りが懸念材料である場合、可能な限り入金サイクルが短いカード会社や代行会社を選びましょう。
セキュリティの管理を徹底する
クレジットカードを扱う上で、セキュリティの管理を徹底する必要があります。仮にクレジットカードの保有者である顧客の情報が漏洩した場合、店舗としての信頼が低下し売上悪化につながるだけでなく、行政処分を受ける可能性も考えられます。
上記の事態を起こさないためにも、セキュリティ対策が求められるのです。クレジットカード会社や代行会社を選定する際に、国際セキュリティのスタンダードである「PCI DSS」や、個人情報保護に関するプライバシーマークといったセキュリティに関する証明を取得しているか確認しましょう。
クレジットカード決済を導入する方法
それでは、クレジットカード決済を店舗で導入するには、どのような方法があるのでしょうか。一般的に、クレジットカード会社との直接契約と、クレジットカード決済代行会社の利用の2つの方法があります。それぞれの導入方法について解説していきます。
- クレジットカード会社と直接契約する
- 決済代行会社を利用する
クレジットカード会社と直接契約する
1つ目の方法は、クレジットカード会社と直接契約することです。代行会社を挟まずに、VISAやMastercard、JCBといったクレジットカード各社と直接契約する方法で、手数料を抑えられるというメリットがあります。
ただし、クレジットカード会社によって申請方法が異なるため、書類も各社で準備しなければなりません。特に個人経営者や小規模店舗の場合、大手企業よりも審査基準が厳しく設定されているといわれています。また、クレジットカード会社ごとに決済システムを構築する必要もあるので、工数や費用がかさんでしまうデメリットに注意しましょう。
決済代行会社を利用する
次に、決済代行会社を利用する方法です。包括加盟店方式とも呼ばれており、クレジットカード決済導入を一括でまとめて行います。
クレジットカード各社と直接契約を結ぶ必要がなくなるため、事業者における導入の手間が省けるほか、入金サイクルが統一されることから運用が便利になる点がメリットといえます。また、導入に伴う決済代行会社の審査も一括で行えるので、申請手続きの負担も軽減されます。一方で、クレジットカード会社よりも決済手数料が高くなる可能性がある点に注意しましょう。
クレジットカードの決済手数料を安くする方法
クレジットカード決済システムの導入は、初期費用やランニングコストが負担となってしまいます。とはいえクレジットカード決済は、顧客獲得や従業員の手間を軽減させるためにも、導入しておきたい決済方法です。
そこで、クレジットカードの決済手数料を安くする方法を解説します。さまざまなアイデアを活用してみてください。
- クレジット決済代行会社を比較する
- その他キャッシュレス決済との併用
- クレジットカード会社と直接契約する
クレジット決済代行会社を比較する
まずは、クレジットカード決済代行会社を比較しましょう。上記で解説した通り、クレジットカード決済導入においては、クレジットカード会社との直接契約か決済代行会社の利用のどちらかを選ぶことになります。ただ、一般的に決済代行会社は手数料が高めに設定されています。
もちろん、手数料を安く済ませたいという場合には、クレジットカード会社と直接契約するのが対策となるでしょう。しかし、一括でまとめて契約しつつ手数料を安くしたい場合には、代行会社の手数料や条件を比較することが重要です。
その他キャッシュレス決済との併用
クレジットカード決済だけでなく、その他のキャッシュレス決済との併用も検討しましょう。QRコード決済や、交通系ICカードといった電子マネー決済もあるため、クレジットカードの決済手数料よりも安い決済方法を検討してみてください。
また、複数の決済方法を取り入れることで、顧客に対してより多くの選択肢を与えられるのもメリットになります。例えば、クレジットカードをあまり使用しない顧客にとっては、他の決済方法があるとリピーターになる可能性が高まります。
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クレジットカード会社と直接契約する
3つ目は、クレジットカード会社と直接契約することです。クレジットカード会社と直接契約するほうが手数料も安く、店舗の負担を軽減できます。
ただし、クレジットカード会社と直接契約する場合、ブランドごとに契約していかなければなりません。決済代行会社と契約すれば、複数ブランドのクレジットカードを一括で導入できるだけでなく、決済システムもブランドごとに用意する必要がないのです。
クレジットカード決済代行会社を選ぶポイント
クレジットカード決済代行会社を利用すると、決済手数料は直接契約するよりも高くなってしまいます。しかし、複数ブランドを一括で導入可能である、決済システムを統一できるなどのメリットを考えると、利用をぜひ考えたいところです。
そこで、決済代行会社を選ぶ際のポイントをまとめていきます。
- 決済手数料
- 初期費用、ランニングコスト
- 決済手段の種類
- 入金サイクル
- サポート体制
決済手数料
1つ目のポイントは、クレジットカード決済手数料です。決済手数料率は代行会社で異なることから、導入時に相見積もりを取る必要があります。
また、代行会社を通して導入しても、クレジットカードのブランドごとに決済手数料が決められているため、結果としてコストの負担が増えないように丁寧に比較しなければなりません。これまでの店舗における売上額に対して、どれくらいの決済手数料が発生するかを算出した上で、クレジットカード代行会社を選択しましょう。
初期費用・ランニングコスト
次に、初期導入費用やランニングコストです。クレジットカード決済代行会社の中には、導入時に初期費用を請求する会社があります。初期費用は店舗にとって負担につながるため、初期費用が安い代行会社や初期費用が発生しない代行会社を選びましょう。
またランニングコストも、決済代行会社を選定する際に重要なポイントとなります。サービス利用料として月額料金を設けている場合もあるので、サービス内容はもちろん、機能面やオプションなども見る必要があります。
決済手段の種類
3つ目は、決済手段の種類についてです。決済代行会社ごとに提供している決済手段が異なります。
また決済代行会社によっては、取り扱っていないクレジットカードブランドがある場合も考えられます。片方の決済代行会社ではAmerican Expressを取り扱っている一方で、もう片方の決済代行会社は取り扱っていないというケースもあるので、比較時に注意しましょう。
入金サイクル
入金サイクルもクレジットカード代行会社を選定する際に重要なポイントです。クレジットカード会社や決済代行会社は、各社独自で締め日・入金日を設けています。そして、締め日までに売り上げた金額が、入金日に事業者の登録口座へ振り込まれるような仕組みとなっています。
入金サイクルは、事業者の資金繰りにも大きく影響することから、慎重に判断しなければなりません。例えばなるべく売上金を早めに回収したい場合には、入金サイクルが短いあるいは月に複数回の入金があるなど、事業者にとって有利となる代行会社を選びましょう。
サポート体制
最後に、クレジットカード決済代行会社のサポート体制です。クレジットカード決済においてトラブルが発生した際に、安心して問い合わせられるような代行会社を選びましょう。
例えば、顧客のクレジットカードを端末に差し込んでも読み取れない、決済が完了しないといったトラブルが発生する場合があります。専門のサポートスタッフが対応してくれるかどうか、対応時間などのサポート体制も比較してみてください。
まとめ
クレジットカードの決済手数料について解説しました。キャッシュレス決済の中でも、クレジットカード決済は手数料が高く、店舗にとって負担になってしまう可能性があります。
一方でクレジットカード決済の導入は、新規顧客・リピーターの獲得につながりやすいだけでなく、顧客の購入単価の向上にも期待できます。手数料を抑える方法も参考にしながら、今後のクレジットカード決済導入に向けて役立ててみてください。
よくある質問
クレジットカード決済の手数料は、店舗の利益率に影響を与える可能性があります。小規模店舗では、手数料の負担が大きくなることがあるため、事前に相場や契約条件を確認することが重要です。
クレジットカード決済は、現金決済と異なり、売上発生から実際の入金までタイムラグがあります。入金サイクルが長いと資金繰りに影響するため、短いサイクルのカード会社や代行業者を選ぶことが重要です。