クレジットカード決済への対応は、いまや多くの店舗にとって選択肢ではなく、必須条件となりつつあります。キャッシュレス化が進むなか、現金を使わない顧客のニーズに応えることは、売上や顧客満足度を左右する重要なポイントです。
本記事では、レジでクレジットカード決済を導入することで得られるメリットや、導入前に知っておきたいデメリットを解説します。
さらに、POSレジとの連携によって、自店舗運営にどのような効果をもたらすのかも紹介します。これからキャッシュレス対応をはじめたい方や見直しを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
レジにクレジットカード決済を導入するメリット
近年、クレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済の普及が進んでいます。その背景には、急激なインバウンド客が増加したことや、国がキャッシュレス決済の導入を後押しする施策に取り組んでいることなどがあります。
キャッシュレス決済にはさまざまな手段がありますが、歴史が古く知名度も普及率も高いのがクレジットカードです。クレジットカード決済を導入すると、店舗は以下のようなメリットを受けられます。
- レジ管理の手間が省ける
- 客単価が上がる
- お客さまの来店機会が増える
- レジ締め作業の効率化ができる
レジ管理の手間が省ける
クレジットカード決済の導入は、レジ作業の効率化につながります。クレジットカード決済はお客さまとの現金のやりとりが発生しないので、預り金や釣り銭の数え間違いを減らせます。現金を扱うときのような確認作業に時間をかけずに済むため、スムーズな会計が実現するのです。
さらに、現金を取り扱う際に起こるミスやクレームも防げ、レジ担当者の心理的負担が減るのもメリットです。
客単価が上がる
クレジットカード決済の導入には、顧客単価が上がるというメリットもあります。クレジットカード決済は分割払いやポイント還元があるため、出費に対する消費者の心理的ハードルを下げ、現金払いよりも多額の出費につながる傾向があるのです。
クレジットカード払いの請求は基本的に翌月以降に行われるため、手元のお金がすぐ減るわけではありません。このタイムラグによってお金を使っているという感覚が薄れ、出費額が高めになるのです。
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お客様の来店機会が増える
クレジットカード決済の導入で多様なニーズに対応できるようになり、お客様が来店する機会の増加が見込めます。
キャッシュレス決済のポイント還元率などに対する注目が集まったこともあり、クレジットカードが使える店舗を積極的に選ぶ人は少なくありません。現金を持ち合わせていない人も、クレジットカードが使える店舗を利用するでしょう。
また、クレジットカード決済は外国人客のニーズも満たせます。日本よりもクレジットカード決済が普及している海外諸国は多く、現金を日本円に両替する手間も省けるため、外国人の集客を検討するならクレジットカード決済の導入は欠かせません。特に観光地などでは、大きな集客効果が見込めます。
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参考サイト:経済産業省 2025年4月発表 2024年のキャッシュレス決済比率
レジ締め作業の効率化ができる
クレジットカード決済の導入によって、現金管理の負担が大幅に軽減されます。紙幣や硬貨を数えたり、釣銭の確認や現金差額のチェックに時間をかけたりといった作業が不要になるため、レジ締め作業の時間を短縮することが可能です。
また、POSレジと連携すれば、売上データの自動集計や帳簿への反映もシステム上で完結させられ、ヒューマンエラーのリスクも最小限に抑えられます。
クレジットカード決済導入による業務効率化が進むことで、スタッフの負担が減り、労働環境の改善にも期待できるでしょう。
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クレジットカード決済の店舗側のデメリット
一見良いこと尽くめのクレジットカード決済ですが、導入する店舗側にはいくつかデメリットもあります。メリットを知るだけではなく、クレジットカード決済ならではのデメリットもきちんと確認しておきましょう。クレジットカード決済を導入することによる店舗のデメリットは、主に以下の3つです。
- 入金までにタイムラグがある
- 手数料の負担が大きい
- カードの不正利用がある
- ネットワーク障害のリスクがある
入金までにタイムラグがある
通常のクレジットカード決済は入金までに時間がかかるため、店舗運営においてはデメリットとなるでしょう。
カード会社や決済代行会社などとの契約内容によっても変わりますが、売上金が入金されるまでには原則1か月、最長で2か月ほどかかります。さらに、末日にまとめて入金されるため、規模の小さな店舗は目先の資金繰りが厳しくなることもあり得ます。手元の現金が不足して黒字倒産に陥ることがないよう、クレジットカード決済を導入する際は入金のタイミングも含めてシミュレーションをすることが大切です。
手数料の負担が大きい
クレジットカード決済を導入するには、クレジットカード加盟店となってカード会社や決済代行会社と契約する必要があります。その際、決済金額の数%を加盟店手数料として支払わなければいけません。業種や店舗の規模によって加盟店手数料の金額は異なりますが、相場は以下のようになっています。
- コンビニエンスストア、家電量販店などのチェーン店:1〜2%
- 百貨店:2〜3%
- 一般小売店、専門店:3〜5%
- 飲食店:3〜7%
なお、加盟店手数料を商品やサービスの代金に上乗せすることは禁じられています。手数料を消費者から回収するのは規約違反となり、今後クレジットカード決済ができなくなってしまう可能性もあるのです。そのため、クレジットカード決済のたびに加盟店は必ず手数料を支払わなければならず、これは痛い出費になります。
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カードの不正利用がある
他人のクレジットカードで不正に支払った利用者がいた場合、店舗は損害を被るリスクがあります。店舗で支払いをした利用者が他人のカードを不正利用していた場合、店舗は売上金をカード会社に返金しなければなりません。これをチャージバックといいます。
チャージバックは、利用者にとっては安心してクレジットカード決済ができる仕組みです。一方で、店舗側は売上金を返金しなければならないうえに商品が手元に戻ってくることもないため、損失が出てしまいます。
ネットワーク障害のリスクがある
クレジットカード決済は通信環境に依存しているため、インターネット回線の不具合があると決済そのものがおこなえなくなる可能性があります。
特に、回線トラブルや災害発生時など、イレギュラーな状況下では対応に手間取ることもあるでしょう。スムーズな対応を維持するためには、トラブル発生時のマニュアル整備や現金対応などの代替手段の確保も重要です。
クレジットカード決済の安定性を保つためには、ネットワーク環境の見直しや保守体制のチェックが欠かせません。
クレジットカード決済とPOSレジの連携がおすすめな理由
導入にあたり注意すべき、クレジットカード決済のデメリット。これらの一部はPOSレジと連携することで解消されます。
POSレジとは、お客さまとの金銭のやり取り時点での販売情報を記録・集計できる「POSシステム」を搭載したレジです。専用のレジ端末を使用したもの、タブレットPCを利用した手軽なものなど、さまざまな事業者が多様なPOSレジを提供しています。
クレジットカード決済ができる端末とPOSレジをつなぐことでスムーズにクレジットカード決済を導入でき、金額の入力ミスを防げる、レジ対応時間を短縮できるなどさまざまなメリットを受けられます。
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また、POSレジの提供元によっては、クレジットカード決済のデメリットを解消できる以下のようなサービスや機能を提供しています。
- 入金がスピーディーになる
- 偽造カードの不正利用を防げる
- 販売データの自動集計・分析ができる
入金がスピーディーになる
通常のクレジットカード決済の売上金は、売上を上げた月の翌月末や翌々月末に一括で入金されるのが基本です。しかし、POSレジの提供元によっては、通常より早い入金が可能になるケースもあります。
最短で翌営業日に入金されるサービスもあるため、資金繰りの悪化を懸念してクレジットカード決済の導入に踏み切れない場合は、POSレジとの連携を検討してみましょう。
なお、振込手数料はかかる場合とかからない場合があるので、POSレジ導入時にチェックする必要があります。
カードの不正利用を防げる
クレジットカード決済端末とPOSレジを連携すると、クレジットカードの偽造や情報漏洩といった被害を防げます。
2016年12月に公布された割賦販売法の一部を改正する法律により、店舗では2020年3月から決済端末のIC対応化が義務となりました。ICチップに対応しているクレジット決済端末を導入すれば偽造のカードは使えなくなり、カードの不正利用を防止できます。なお、ICチップ対応のクレジット決済端末と連動させてもPOSレジにはカード情報が保存されないので、情報漏洩の心配はありません。
関連記事:POSレジとは?POSシステムとの違いや導入メリットと機能比較を解説
販売データの自動集計・分析ができる
クレジットカード決済とPOSレジを連携させることで、売上データや購買情報を自動的に集計・分析できるようになります。
これにより、「どの時間帯に売上が伸びるか」「どの商品がよく売れているか」など、マーケティングに活かせるヒントが得られるでしょう。
特に、ID-POSというお客様単位での購買履歴を追えるシステムと組み合わせれば、リピーター分析やセール施策の最適化にもつながります。
クレジットカード決済とPOSレジの連携によって、手作業で行っていた集計や報告作業が不要となり、業務効率の向上にも期待できるでしょう。
クレジットカード決済の基本と仕組み
キャッシュレス化の加速により、クレジットカード決済は日常に欠かせない決済方法のひとつとなっています。
導入するにあたっては、クレジットカード決済の仕組みを理解しておくことが大切です。
- クレジットカード決済とは
- 基本的なクレジットカード決済の流れ
それぞれ詳しく解説します。
クレジットカード決済とは
クレジットカード決済とは、現金を使わずに商品の購入やサービスの支払いができる仕組みです。
支払い時にお客様がクレジットカードを提示することで、カード会社が一時的に代金を立て替え、後日利用者であるお客様に請求するという仕組みで成り立っています。
クレジットカード決済はスピーディーかつ安全で、利用者にとっても店舗にとっても利便性の高い手段といえます。
非接触型のタッチ決済やスマホ決済とも連携できるようになり、多様なニーズに対応しているのもクレジットカード決済の特徴です。
基本的なクレジットカード決済の流れ
クレジットカード決済は、一般的に以下のステップで進みます。
- 利用者がクレジットカードを提示または端末にかざす
- 店舗の決済端末がカード会社のネットワークと通信し、認証・与信処理を実行
- 承認後、カード会社が代金を立て替え払いする
- 売上データがまとめて処理され、後日店舗に入金される
利用者がクレジットカードを提示してから承認・決済までは数秒〜十数秒程度で完了するため、現金支払いに比べて会計のスピードが格段に上がります。
また、POSレジとクレジットカード決済を連携すれば売上管理も同時に行えるため、運用面での手間も軽減されるでしょう。
クレジットカード決済導入前に注意すべきポイント
クレジットカード決済の導入には多くのメリットがありますが、その一方で事前に確認しておきたい注意点も存在します。
- 導入方法の選定が必要
- 決済エラー時の対応準備
- 決済端末のサポート体制を確認
導入方法の選定が必要
クレジットカード決済の導入にあたっては、さまざまな方法があります。なかでも代表的なのが、クレジットカード会社と直接契約する方法と決済代行サービスを利用する方法のふたつです。
直接契約は手数料が抑えられる一方、審査や手続きが複雑になりがちです。一方で決済代行サービスは、複数ブランドへの一括対応やサポート体制が整っているという利点があります。
どちらが自店舗に合っているかは、業種や取引規模・運用体制によって異なるため、導入前の比較検討が重要です。
決済エラー時の対応準備
決済端末のトラブルやネットワーク障害によって、カード決済がうまくいかないケースもあります。
決済エラー時に備えて、現金対応やQRコード決済などの代替手段の手順をあらかじめスタッフ全員で共有しておくことが大切です。また、顧客対応のマニュアルを用意しておけば、トラブル発生時でも冷静かつスムーズな対応が可能になるでしょう。
いざというときにどう対応するかを想定しておくことが、お客様の安心感と信頼感につながります。
決済端末のサポート体制を確認
導入する端末の保守サポート体制も、見落とせない重要ポイントです。
決済端末が故障した際すぐに交換できるか、問い合わせ窓口は迅速に対応してくれるかなど、トラブル発生後の対応力が問われます。また、導入前にはサポート内容の明確な説明を受け、トラブル発生時の流れをしっかり確認することが大切です。
トラブル発生時に、十分なフォローが受けられないという事態を回避するためにも、決済端末のサポート体制はかならずチェックしましょう。
レジにクレジットカード決済を導入する方法
クレジットカード決済を導入するには、契約方法やサービスの選定が必要です。
ここでは、契約方法やサービス選定時の注意点について紹介します。
- クレジットカード会社と契約
- 決済代行サービスと契約
- 決済代行サービス選びの注意点
クレジットカード会社と契約
おもな契約方法のひとつとして、主要なクレジットカード会社(JCB、VISA、MasterCardなど)と直接契約する方法があります。
直接契約では、それぞれのブランドごとに契約や審査が必要になるため手続きはやや煩雑になりますが、手数料が抑えられる点が魅力です。
自由度の高い運用が可能な一方で、複数ブランドへの対応にはそれぞれの基準をクリアしなければならず、導入までに時間がかかる傾向があります。
大規模店舗やブランドイメージを重視する業態には、特におすすめの方法です。
決済代行サービスと契約
もっと手軽にクレジットカード決済を導入したい場合は、決済代行サービスの利用が便利です。
一度の契約で複数のクレジットカードブランドに対応できるうえ、端末のレンタルや保守サポートもセットになっていることが多く、導入までスピーディーに完結します。
初期費用ゼロ・固定費なしのプランを用意している代行サービスもあり、コスト面でも導入ハードルが低いといえるでしょう小規模店舗や初めての導入を検討する方にとって、決済代行サービスはメリットの多い選択肢です。
決済代行サービス選びの注意点
決済代行サービスを選ぶ際は、以下の要素について比較検討することが大切です。
- 手数料率
- 入金サイクル
- 対応カードブランド
- サポート体制
たとえば、手数料が安くても入金が遅ければ資金繰りに支障が出る可能性があったり、サポートが不十分だとトラブル時の対応に不安が残ったりします。
それぞれの決済代行サービスを比較し、自店舗のニーズにマッチしたサービスを選びましょう。
まとめ
クレジットカード決済の導入は、店舗運営の効率化や売上・顧客満足度アップに直結するメリットがある一方で、入金のタイムラグや手数料発生といったデメリットもあります。
しかし、POSレジとの連携や信頼できる決済代行サービスの選定を通じて、デメリットについては十分にカバーできるでしょう。
本記事を参考にして、自店舗に最適なクレジットカード決済の導入方法や対策を見極め、ぜひキャッシュレス対応への第一歩を踏み出してください。
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よくある質問
「レジ管理の手間が省ける」「客単価が上がる」「客層を広げられる」などがあげられます。また、日本よりもクレジットカード決済が普及している海外諸国は多く、また、現金を日本円に両替する手間も省けるため、外国人の集客を検討するならクレジットカード決済の導入は欠かせません。特に観光地などでは、大きな集客効果が見込めます。
「入金までにタイムラグ」「手数料の負担」「カードの不正利用」などがあげられます。メリットデメリットを理解した上での検討を進めていきましょう。