キャッシュレス決済の需要が増加し、2025年時点でも日本のキャッシュレス流通率は向上しています。商業企業はもちろん、個人事業主や小規模企業においても、キャッシュレス導入が重要な戦略の一つとなりつつあります。
最新のデータによると、2023年の日本のキャッシュレス決済比率は39.3%(126.7兆円)で、前年の36.0%から着実に増加しています。内訳としては、クレジットカードが83.5%(105.7兆円)、デビットカードが2.9%(3.7兆円)、電子マネーが5.1%(6.4兆円)、コード決済が8.6%(10.9兆円)となっています。
本記事では、キャッシュレス導入のメリット、導入ステップや決済サービスの比較ポイント、さらに活用できる補助金制度について解説します。
参考サイト:経済産業省 2024年3月発表 2023年のキャッシュレス決済比率
キャッシュレス決済導入のメリット
消費者の決済手段が多様化する中で、キャッシュレス決済の導入は店舗経営において重要な選択肢となっています。キャッシュレス決済の導入は、以下のような効果をもたらします。
加えて、緊急時や災害時における事業継続性の向上も見逃せないメリットです。現金取扱いに依存しない決済手段を確保することで、様々な状況下でも安定した営業が可能となります。
- 売上の向上
- 現金管理の負担軽減
- 決済の迅速化
- 市場競争力の向上
売上の向上
キャッシュレス決済により、消費者の購買心理的なハードルが下がり、追加購入が促進されます。特に若年層や外国人観光客など、現金を持ち歩かない層の取り込みが可能になり、決済アプリと連携したポイント還元やキャンペーンを活用することで、リピーターの獲得にもつながります。
現金管理の負担軽減
レジ締めの作業時間が短縮され、現金の保管や輸送に関するコストも削減できます。偽造紙幣や盗難のリスクが減ることで、スタッフの精神的負担も軽減。現金管理に費やしていた時間を、接客など他の業務に充てることが可能になります。
決済の迅速化
お釣りの計算や現金の受け渡しが不要になることで、レジでの会計処理が大幅にスピードアップします。特に混雑時の待ち時間削減につながり、顧客満足度の向上に貢献します。また、正確な金額での決済により、レジ差額の心配もなくなります。
市場競争力の向上
消費者は支払い方法の選択肢を重視する傾向があり、キャッシュレス対応は重要な差別化要因となっています。また、決済データの分析により顧客の購買傾向を把握でき、効果的なマーケティング施策の立案が可能になります。
キャッシュレス決済導入のデメリット
これまで説明してきたとおり、キャッシュレス決済にはさまざまなメリットがありますが、キャッシュレス決済を導入しようと考えている方は、デメリットもきちんと知っておく必要があります。キャッシュレス決済を取り入れることで店舗が受けるデメリットは、主に以下の2つです。
- 不具合発生や停電で使えなくなる
- 決済手数料がかかる
不具合発生や停電で使えなくなる
電気や通信の不具合によって決済ができなくなる可能性があることは、キャッシュレス決済の大きなデメリットです。災害による停電や通信障害が起きてしまうと、端末を使用するクレジットカードなどのキャッシュレス決済は利用できません。
そのため、現金決済やオフラインでも使える決済など、キャッシュレス決済が使用できなくなったときでも会計ができる方法をあらかじめ準備しておく必要があります。
決済手数料がかかる
キャッシュレス決済は、決済手数料(加盟店手数料)がかかることもデメリットです。店舗がキャッシュレス決済を導入するときは、決済金額の数%を決済手数料として契約会社に支払わなくてはなりません。
キャッシュレス決済の加盟店手数料相場
キャッシュレス決済の加盟店手数料は、決済方法によって大きく異なります。以下に4つの主要な決済方法ごとの相場をまとめました。
- クレジットカード決済
- 電子マネー決済
- QRコード決済
店舗の規模や業種、顧客層、販売商品の単価などによって最適な決済方法は異なります。導入を検討する際は、複数の決済方法を比較検討し、自店に合った選択をすることが重要です。
クレジットカード決済
最も普及している決済方法で、手数料は一般的に3〜5%程度です。VISA、MasterCard、JCBなどが代表的です。大手チェーン店や取引量の多い店舗では交渉により2%台に抑えられることもありますが、小規模店舗では5%を超えるケースもあります。
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電子マネー決済
Suica、PASMO、nanaco、WAONなどが該当し、手数料相場は3〜4%程度です。小額決済が多いため、1回あたりの実質負担は数円から数十円になることが多いです。交通系ICカードは利用頻度が高く、導入効果が期待できます。
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QRコード決済
PayPay、楽天ペイ、LINE Payなどが該当し、手数料は0〜3%程度と幅があります。普及促進のため無料期間やキャンペーンを実施しているサービスも多く、導入コストが低いのが特徴です。ただし、サービスごとに利用条件が異なるため、注意が必要です。
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※2024年10月時点の情報です。
キャッシュレス導入の流れ
1. 決済サービスの選定
まず、自社の業態や規模に適した決済サービスを選定します。この際、月間の決済件数予測や、主要な客層の利用傾向を考慮することが重要です。特に、決済手数料率と月額固定費のバランスを考慮し、収益に見合った選択をすることがポイントとなります。
2. 申し込みと審査
選定したサービスへの申し込み後、審査が行われます。審査期間は通常2週間から1ヶ月程度で、必要書類として、登記簿謄本や届出印の印鑑証明書、決算書類などが求められます。
3. 導入準備と運用開始
審査通過後は、決済端末の設置とスタッフトレーニングを実施します。特に、不正利用の防止や返金対応などのオペレーションについて、しっかりとした研修が必要です。
【事業者向け】キャッシュレス決済の比較ポイント
キャッシュレス決済サービスを導入する際に、どの基準で選べばよいかを整理しました。この基準をもとに、サービスを比較しながら選ぶことが重要です。
比較基準 | 説明 |
---|---|
初期費用 | 端末の購入費や導入費用の見極め |
決済手数料 | 1回の取引ごとに発生する手数料率 |
対応決済方法 | クレジットカード・QRコード・電子マネーなどの対応状況 |
導入のしやすさ | 申し込みや審査のハードルの高さ |
入金サイクル | 売上が銀行口座に振り込まれるまでの期間 |
サポート体制 | トラブル時の対応やカスタマーサポートの充実度 |
【個人事業主向け】キャッシュレス決済の導入ポイント
個人事業主がキャッシュレス決済を導入する際に特に注意すべきポイントを解説します。個人事業主ならではの観点から、効率的な導入方法と活用できる支援制度についてご紹介します。
導入コストを抑える方法
初期投資を最小限に抑えることは、個人事業主にとって特に重要です。キャッシュレス決済サービスを選ぶ際は、初期費用が無料のプランがあるサービスを検討します。また、月々の売上予測に基づいて、手数料率の比較検討を行うことで、長期的な運用コストを抑えることができます。加えて、決済端末は購入ではなくレンタルを選択することで、初期費用を抑制することも可能です。
導入手続きと必要書類
個人事業主向けの審査は、必要書類が法人より少なく、比較的シンプルです。一般的に必要な書類は、本人確認書類、営業許可証(業種による)、確定申告書の控えなどです。サービスによっては、オンラインでの申請も可能で、最短数日で利用開始できるものもあります。審査をスムーズに進めるため、これらの書類は事前に準備しておくことをおすすめします。
補助金や助成金を活用する
個人事業主でも活用できる様々な支援制度があります。小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金は、キャッシュレス決済の導入費用の一部を補助してくれる制度です。これらの補助金は定期的に募集が行われており、申請のタイミングを逃さないよう注意が必要です。
また、地方自治体独自の支援制度も多く存在します。商工会議所や商工会に相談することで、利用可能な制度の情報を得ることができます。補助金申請の際は、事業計画書の作成が求められることが多いため、導入の目的や期待される効果を明確にしておくことが重要です。くわしくは「キャッシュレス導入に活用できる補助金・助成」をご確認ください。
キャッシュレス導入に活用できる補助金・助成金
キャッシュレス決済の導入費用を抑えるために活用できる主な補助金・助成金として、以下のものがあります。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- 自治体独自の支援制度
これらの補助金・助成金を活用することで、キャッシュレス決済導入の初期費用を抑えることが可能です。各制度の詳細や最新情報、申請手続きについては、公式サイトを参照の上、直接お問い合わせいただくことをお勧めします。
小規模事業者持続化補助金
- 対象: 小規模事業者(商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)では従業員5人以下、それ以外の業種では20人以下)
- 補助内容: 経営計画に基づく販路開拓や業務効率化の取り組みに要する経費の一部を補助。キャッシュレス決済端末の導入費用も対象となる場合があります。
- 申請方法: 商工会議所や商工会のサポートを受けながら申請を行います。
- 引用元: 小規模事業者持続化補助金(一般型)公式サイト
IT導入補助金
- 対象: 中小企業・小規模事業者等
- 補助内容: 自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)の導入費用の一部を補助。キャッシュレス決済システムの導入も対象となる場合があります。
- 申請方法: IT導入支援事業者と連携し、公式ウェブサイトから申請を行います。
- 引用元: IT導入補助金2025公式サイト
自治体独自の支援制度
- 対象: 各自治体の要件に応じて異なります。
- 補助内容: 地域特化のキャッシュレス推進助成金や補助金が提供されている場合があります。
- 申請方法: 各自治体の公式サイトや窓口で詳細を確認し、指示に従って申請します。
- 詳細情報: お近くの商工会議所や商工会、または自治体の公式サイトをご確認ください。
キャッシュレス決済はPOSレジ連携がおすすめ
キャッシュレス決済は、POSレジと連携させることでさまざまなメリットを受けられます。POSレジとは、顧客との金銭のやり取りが発生した時点の販売情報を登録し管理する「POSシステム」を搭載したレジのことです。キャッシュレス決済を導入するときは、レジとキャッシュレス決済端末をそれぞれ別に使用する方法か、レジとキャッシュレス決済端末を連携させて使う方法が選べます。
キャッシュレス決済とPOSレジを連携すると得られるメリットは、主に以下の2つです。
- 売上データを記録できる
- 業務の効率化を図れる
売上データを記録できる
POSレジは、いつどの商品がどれくらい売れたのか、データとして登録することができます。そのため、POSレジとキャッシュレス決済端末を連携させることにより、キャッシュレス決済の売上データを詳細に記録することができるのです。
商品が売れた時間帯や個数などを分析することで、効果的なマーケティング戦略を立案でき、売上アップにもつながります。
関連記事:POSデータとは?分析メリットと注意点・活用例を解説
業務の効率化を図れる
キャッシュレス決済とPOSレジを連携させること1回の操作で支払いが完了するため、業務の効率がアップします。
連携させていない場合、キャッシュレス決済で支払いを終えたあと、POSレジに会計データとして同じ金額入力しなければなりません。これは二度打ちと呼ばれ、会計に時間がかかってしまう原因となります。
さらに、二度打ちをすることで金額を間違えて入力してしまうリスクもあります。キャッシュレス決済とPOSレジの連携は、ヒューマンエラーを防ぎ、手間を削減して業務の効率化に貢献するのです。
関連記事:キャッシュレス対応のPOSレジとは?導入メリットを解説!
まとめ
キャッシュレス決済の導入は、もはや選択肢ではなく必須の経営戦略となっています。適切なサービスの選定と、利用可能な支援制度の活用により、効率的な導入が可能です。
まずは自社の規模や業態に合わせて、最適なキャッシュレス決済サービスを選定し、段階的な導入を検討しましょう。メリットとデメリットをきちんと把握したうえで、POSレジとの連携も含めて導入を検討することをおすすめします。
なお、補助金制度は定期的に更新されるため、申請を検討される際は必ず最新の情報をご確認ください。
関連記事:
キャッシュレス対応のPOSレジとは?導入メリットを解説!
キャッシュレス対応券売機とは?導入メリットや注意点を解説!
よくある質問
「レジ管理の手間が省ける」「顧客単価が上がる」「客層を広げられる」などがあります。また、外国人観光客が多い観光地などでは、キャッシュレス決済の導入によって顕著に客層が広がります。海外には、日本よりもキャッシュレス決済が浸透している国が多く、キャッシュレス決済ができる店舗を優先的に利用すると言われています。
キャッシュレス決済とPOSレジを連携メリットとしては「売上データを記録」「業務の効率化」があげれます。これらデータ管理することで戦略に役立てたり、業務の効率でコスト削減したりと最終的には売上最大化が期待できるでしょう。