数あるキャッシュレスサービスの中でも代表的な「Suica」は、鉄道利用時だけでなく、飲食店や小売店などさまざまな場所で利用できます。多くのユーザーがSuicaを保有しており、事業者としては顧客の取り囲みに生かせる決済方法です。
とはいえ、お客様がSuicaによる決済を行う際に、どれくらいの決済手数料が発生するのか気になるところでしょう。そこで今回の記事では、Suica決済の概要に加えて、Suicaの決済手数料や導入するメリットなどを詳しく解説していきます。
Suicaとは
Suicaは、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が発行している交通系ICカードです。発行枚数は9,000万枚を超えており、国内でも利用者が多い交通系ICカードといえます。スマートフォンで決済可能な「モバイルSuica」も提供し、若年層のユーザーも多いのが特徴です。
また、SuicaはJR東日本の鉄道利用時だけでなく、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、飲食店など幅広い店舗での決済が可能です。首都圏に限らず、北海道から東海、関西、九州などの鉄道事業者を利用する際にも、Suicaでそのまま支払うことができます。
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Suica決済で事業者側が支払う手数料はいくら?
お客様がSuicaを使って決済を行う際に、事業者側に決済手数料が発生します。そこで、事業者に課されるSuicaの決済手数料がいくらなのか、他のキャッシュレス決済における決済手数料と比較していきます。
Suicaの決済手数料
まず、Suicaの決済手数料は決済額に対して「3〜4%」です。例えば、お客様が1,000円の商品をSuicaで決済したとすると、加盟店事業者は30円程度の決済手数料を支払うことになります。
なおSuicaの決済手数料は、事業者によって3〜4%の中で異なるといわれており、契約時に手数料の割合を確認しておきましょう。決済代行会社と契約する際に、見積書を見ながらシミュレーションしてみてください。
他のキャッシュレス決済との比較
次に、Suicaと他のキャッシュレスサービスでの決済手数料について比較します。一般的に、クレジットカードの決済手数料は、ブランドによって異なるものの「3〜10%」といわれています。Suicaよりも決済手数料が高額で、加盟店事業者にとって負担が大きくなりやすいです。
また、近年注目度が高まっているQRコード決済は、「1〜4%」の決済手数料が発生します。各サービスで決済手数料が異なるものの、クレジットカードの決済手数料よりも負担になりにくいのがメリットです。ただし、クレジットカード同様に、事業者のビジネス規模に応じて決済手数料に幅が出るため、Suicaを含む交通系電子マネーの決済手数料が高いというわけではありません。
参考記事:QRコード決済の手数料はいくら?決済サービスの手数料一覧や導入メリット
【事業者側】Suica決済を導入するメリット
それでは、加盟店事業者にとってSuica決済を店舗に導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。下記の通り、Suica決済を店舗に導入するメリットを4つ紹介していきます。
- 幅広い層を顧客として取り囲める
- レジ業務の効率化につながる
- 未回収のリスクを下げられる
- 現金管理の手間を省ける
- 購買促進にキャンペーンを生かせる
幅広い層を顧客として取り囲める
1つ目のメリットは、幅広い層を顧客として集客しやすいことです。キャッシュレス決済は現金を持ち歩く必要がないため、老若男女問わず多くのお客様を集客するチャンスがあります。
中でも、Suicaを含む交通系電子マネーは申し込む際に審査が必要なく、利用者が多い点が魅力といえるポイントです。クレジットカードは各カード会社で審査が設けられており、一定の水準をクリアしないと保有することすらできません。また、クレジットカードは使いすぎの原因にもなるため、利用しにくいと感じるユーザーもいます。
一方で、Suicaは前払い方式の決済サービスであるため、審査がないだけでなく、使いすぎを防げることから、誰でも持ち歩きやすいのが特徴です。普段、鉄道を利用するユーザーをまとめて集客しやすいのもメリットで、事業者にとって売上や顧客数の改善につながります。
レジ業務の効率化につながる
次に、店舗におけるレジ業務の効率化に生かせることもメリットです。従来は、現金でのやり取りが中心であったため、お客様から代金を受け取り、釣り銭を返すという動作を必要としていました。
現金決済と異なり、Suicaは専用端末にタッチするだけで支払いが完結するので、レジ業務における手間や負担が解消されます。また、クレジットカード決済と比較しても、暗証番号を入力する必要がなく、よりスピーディな決済が可能です。従業員の負担が軽減し、レジ業務の効率化につながるほか、コア業務への配置転換も実現できます。
未回収のリスクを下げられる
3つ目のメリットは、未回収リスクの軽減につながることです。現金で受け渡しを行うことで、従業員が誤った金額をお客様から受け取ったり、釣り銭の計算を間違えたりする恐れがあります。
Suicaを含む交通系ICカードは、入力した金額が自動で決済される仕組みであることから、現金と異なり未回収のリスクを軽減できます。また、売上金を現金として保管する必要がなくなり、盗難防止にも役立つのがメリットといえます。
現金管理の手間を省ける
最後に、現金を管理する手間が省きやすいのもSuicaのメリットです。現金でのやり取りは、未回収のリスクだけでなく、レジ業務全般の負担増加につながります。
例えばレジ締め業務では、従業員が売上金を1円単位でチェックする作業が発生するため、どうしても人為的なミスが起こる可能性が高まります。Suicaで決済した売上については、自動で売上データが記録されるため、現金のように1円単位で従業員が計算する必要がありません。
また現金のみの対応だと、多忙な時間帯や繁忙期はレジに長蛇の列ができる可能性も高くなります。Suicaであれば、決済までの時間を短縮することが可能で、従業員の負担を抑えるだけでなく、顧客満足度の向上にも貢献します。
購買促進にキャンペーンを生かせる
Suicaでは、定期的に利用者向けのキャンペーンが実施されています。キャッシュバックキャンペーンやポイント還元など、幅広いキャンペーンが展開されており、利用者にとって便利に使えるのがメリットです。
事業者にとっても、キャンペーンが実施されることで、お客様の購買促進に生かせられます。キャンペーンの告知を行いSuicaでの支払いを促すことで、店舗の売上アップにも期待できるでしょう。
【顧客側】Suicaが導入されるメリット
Suicaが導入されることで、事業者だけでなく、利用者であるお客様にとってもメリットがあります。お客様の満足度向上にもつながるので、どのようなメリットがあるのかをチェックしてみてください。
- 現金を持ち歩く必要がなくなる
- 先払いによる支払いができる
- 日本全国でSuicaが使える
現金を持ち歩く必要がなくなる
お客様にとって、現金を持ち歩く必要がなくなるのがメリットといえます。Suicaが利用可能であれば、最小限の現金しか持ち歩く必要がないため、お客様の負担軽減につながります。
特に、Suicaは鉄道で利用するユーザーも多く、Suicaだけで支払いが済ませられるのであれば利便性も向上します。このように、Suicaはお客様の負担軽減や利便性の向上に役立つ決済方法です。
プリペイドによる支払いができる
Suicaは、プリペイド(チャージ式)による決済であるため、安心して利用できるのもメリットです。例えばクレジットカードは、後払いによる決済方法なので、使いすぎのリスクが生じます。
一方で、Suicaは残高をチャージしておかないと使えないことから、使いすぎを防ぐのに効果的です。日常的に利用する店舗がSuicaに対応していれば、使いすぎてしまうリスクを避けながら利用できます。
日本全国でSuicaが使える
SuicaはJR東日本が発行する交通系電子マネーでありながら、全国の公共交通機関で利用できます。関東圏の私鉄各線はもちろんのこと、関西や九州圏の鉄道・バスの乗り降りでもそのままSuicaで決済可能です。
また、全国のコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどでもSuicaが対応しており、別の決済手段を新たに用意する必要がありません。旅行先でもSuicaで支払えるのが、顧客にとってのメリットといえます。
【事業者側】Suica決済を導入するデメリット・注意点
Suicaを決済手段として導入することで、事業者にとって多くのメリットが期待できます。しかし、メリットだけでなく、デメリットや注意点も存在するため、導入時には下記のポイントも気を付けましょう。
- Suica決済の専用端末が必要となる
- 高額決済には向いていない
- 事業者側に決済手数料が発生する
Suica決済の専用端末が必要となる
Suica決済を導入する際には、専用の端末が必要となります。クレジットカード決済端末を持っていても、Suicaの決済は別の端末で行うため、電子マネー専用リーダーを導入しなければなりません。
新たに専用のカードリーダーを準備する場合、電子マネーを取り扱う各会社と直接契約するか、さまざまな電子マネーサービスをすべて扱っている決済代行会社を利用するかを選択することとなります。
またSuicaの申込みをしてから、専用のカードリーダーが届くまでに1〜2カ月程度時間を要する可能性があります。いつからSuica決済を始めるかを踏まえた上で逆算し、申し込みのタイミングを決めておかないと、機会損失につながってしまうでしょう。
高額決済には向いていない
2つ目に注意しておきたいポイントは、Suicaは高額決済には向いていないことです。Suicaは、1回当たりのチャージ金額が2万円までとされており、お客様自身で上限を超える金額をチャージすることはできません。
つまり、Suicaは少額支払いに向いている決済方法ということです。とはいえ、少額支払いに向くことは日常的に利用しやすい決済サービスと言い換えることができ、リピーターを増やすのに効果的でしょう。
事業者側に決済手数料が発生する
Suicaの導入でどうしてもデメリットとなるのが、事業者側に決済手数料が発生することです。本記事冒頭でも解説した通り、決済手数料は加盟店側の負担になっており、お客様側で決済手数料を支払うことはありません。
なお、Suicaの決済手数料は事業者ごとに異なり、決済額に対して「3〜4%」が課せられています。クレジットカードの決済手数料よりは低いものの、どうしても決済手数料が発生してしまう点にデメリットを感じるかもしれません。あらかじめ毎月の売上金に対して、どれくらいの決済手数料が発生するのかをシミュレーションしておくことが大切です。
Suica決済を導入する方法
それでは、事業者がSuicaを導入する際には、どのような方法があるのでしょうか。Suica決済を導入するに当たって、以下の2つの方法を検討してみてください。
- JR東日本と提携する代理店と直接契約する
- 決済代行会社を介して契約する
関連記事:キャッシュレス決済の導入方法とは?決済の種類やメリット・デメリット
JR東日本と提携する代理店と直接契約する
1つ目の方法は、JR東日本と提携している代理店と直接契約することです。Suicaの発行主であるJR東日本と提携しているため、信頼性が高く、トラブルが発生した際の対応も迅速に行ってもらえます。また一般的に、決済代行会社を通すよりも決済手数料が安くなる場合もあるため、コストの軽減にも期待できます。
ただし、決済代行会社と比べると、JR東日本と提携する代理店はそこまで多くありません。JR東日本のホームページに代理店が掲載されているので、チェックしてみてください。
また代理店と契約する場合、Suicaのみしか導入できない点にも注意しましょう。他の電子マネーも同時に導入したい方は、次にご紹介する決済代行会社を介して契約する方法がおすすめです。
決済代行会社を介して契約する
2つ目は、決済代行会社を介して契約する方法です。決済代行会社は、さまざまな決済サービスを展開する企業と加盟店事業者を結ぶ役割があり、一度にまとめて複数の決済サービスが導入できます。
複数の決済サービスと契約可能であるため、各決済サービスに別々に申し込む必要がないほか、審査を受ける必要もありません。直接契約するよりも決済手数料が高くなるケースがありますが、入金サイクルもバラバラにならず、効率的に運用できます。
Suica決済を店舗に導入する流れ
店舗にSuica決済を導入するに当たって、代理店か決済代行会社どちらを介して契約するのかを決めましょう。いずれの場合でも相見積もりを行うだけでなく、「長期的に発生するコスト」「サポート体制」などを考慮する必要があります。
契約が完了した後は、Suica用の決済端末を準備します。一般的に、据え置きタイプ、モバイルタイプ、マルチタイプの3種類があり、店舗のレイアウトに合わせて選定しましょう。また、同時にインターネット環境の整備も必要です。
Suica決済の申し込みを行ってから1〜2カ月ほどで使用できる場合が多く、あらかじめ逆算してから導入を進めることが大切です。
まとめ
お客様がSuicaを利用する際に、事業者が負担する決済手数料について解説しました。Suicaの決済手数料は3〜4%ほどで、クレジットカードの決済手数料と比較すると低く、事業者にとって負担になりにくい決済手段であるといえます。
また、9,000万人を超えるユーザーを抱えるSuicaは、将来的な売上増加にも欠かせない決済手段です。注意点にも気を付けながら、Suica導入のメリットを最大限に生かしていきましょう。