近年、クレジットカード決済やスマホ決済など、現金を使わないキャッシュレス決済のニーズが高まっています。特に小規模店舗や個人事業主にとって、キャッシュレス対応はお客さまに選ばれるための大きな武器となるでしょう。
しかし、キャッシュレス決済導入に対して、費用や審査にまつわる不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、キャッシュレス決済のメリット・デメリットから導入までの流れ、またサービス選びのポイントなどをわかりやすく解説します。POSレジとの連携による業務効率化やミス防止のヒントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
参考サイト:経済産業省 2025年3月発表 2024年のキャッシュレス決済比率
キャッシュレス決済導入のメリット
消費者の決済手段が多様化する中で、キャッシュレス決済の導入は店舗経営において重要な選択肢となっています。キャッシュレス決済の導入は、以下のような効果をもたらします。
- 売上の向上
- 現金管理の負担軽減
- 決済の迅速化
- 市場競争力の向上
売上の向上
キャッシュレス決済の導入で、お客さまの購買意欲が高まり、売上の向上につながります。
まとめ買いやついで買いがしやすくなり、客単価のアップにも期待できるでしょう。特に、若年層や外国人観光客など現金を持ち歩かない層のニーズに応えることで、新たな販売機会を得ることができます。
決済アプリと連携したポイント還元やキャンペーンを活用することで、リピーターの獲得にもつながります。また、非常時や災害時にもキャッシュレス決済での対応ができれば、販売機会の損失を防ぎ、安定した売上を維持できるでしょう。
現金管理の負担軽減
キャッシュレス決済を導入することで、レジ締めの作業時間が短縮され、現金管理に関するコストも削減できます。
偽造紙幣や盗難のリスクだけでなく、金額の打ち間違いやおつりの渡し間違いが減ることで、スタッフの負担軽減やヒューマンエラーの防止にもつながるでしょう。
キャッシュレス決済導入により、現金管理に費やしていた時間を接客など他の業務に充てることができ、業務効率の向上に期待できます。
決済の迅速化
おつりの計算や現金の受け渡しが不要になることで、レジでの会計処理が大幅にスピードアップします。特に混雑時の待ち時間削減につながり、顧客満足度の向上に貢献します。また、正確な金額での決済により、レジ差額の心配もなくなるでしょう。
市場競争力の向上
お客さまは支払い方法の選択肢を重視する傾向があり、キャッシュレス対応は重要な差別化要因となっています。また、POSレジとキャッシュレス決済端末を連携することで、決済データをもとにした売れ筋商品の分析や適切な在庫の補充が可能となります。
お客さまの購買傾向を把握して効果的なマーケティング施策を立案すれば、競合との差別化や売上アップにも期待できるでしょう。
キャッシュレス決済導入のデメリット
キャッシュレス決済にはさまざまなメリットがありますが、導入にあたってはデメリットもきちんと知っておく必要があります。キャッシュレス決済を取り入れることで店舗が受けるデメリットは、主に以下の2つです。
- 不具合発生や停電で使えなくなる
- 決済手数料がかかる
不具合発生や停電で使えなくなる
電気や通信の不具合によって決済ができなくなる可能性があることは、キャッシュレス決済の大きなデメリットです。災害による停電や通信障害が起きてしまうと、インターネット接続が必要な端末を使用するキャッシュレス決済は、利用できません。
そのため、現金支払いやオフラインでも使える決済など、キャッシュレス決済が使用できなくなったときでも会計ができる方法をあらかじめ準備しておく必要があります。
決済手数料がかかる
キャッシュレス決済は、利用するたびに決済手数料(加盟店手数料)がかかることもデメリットです。キャッシュレス決済を導入すると、一般的に決済金額の3~5%を手数料として契約会社に支払わなくてはなりません。
関連記事:キャッシュレス決済に必要な手数料の相場は?種類や導入メリットなど解説
キャッシュレス決済の種類と特徴
キャッシュレス決済にはさまざまな種類があり、特徴や使い勝手が異なります。
ここからは、おもな3つの決済方法について、それぞれの特長や導入のポイントを紹介します。
- クレジットカード決済
- QRコード決済
- 電子マネー決済
クレジットカード決済
キャッシュレス決済のなかで最も普及しているのが、クレジットカード決済です。
利用可能な店舗が多く安心感があり、外国人観光客にとっても使い慣れている決済方法のため、ニーズが高い決済方法といえるでしょう。
安定した集客が見込める一方で、手数料が3〜5%前後かかることや入金までに数日〜数週間のタイムラグがある点については、導入前に把握しておく必要があります。
また、決済端末や通信環境の整備が必要になる場合もあるため、導入コストやランニングコストをあらかじめ確認しておくと安心です。
信頼性の高さと安定性から、キャッシュレス決済の導入を検討している方にとって有力な選択肢といえるでしょう。
関連記事:
クレジットカード決済の手数料とは?導入メリットや選ぶ際のポイント
レジにはクレジットカード決済は必須?POSレジ連携がおすすめ!
QRコード決済
スマートフォンひとつで完結できるQRコード決済は、近年急速に普及している決済方法です。
特に若年層を中心に利用者が増えており、手軽さやスピーディーに決済完了できる点が好まれています。
決済端末がなくてもスタートできるプランも多く、手数料は0~3%と他の決済方法よりも安いため、コストを抑えたい店舗にも向いています。
ただし、お客さまがスマートフォンに対応アプリを入れている必要があるため、自店舗のターゲット層のニーズとの相性を見極めることが大切です。
関連記事:
QRコード決済とは?種類やレジ導入のメリットまで詳しく解説
QRコード決済の導入方法と費用~10社のサービスを一斉比較!
電子マネー決済
SuicaやPASMOなどの交通系ICをはじめとする電子マネー決済は、事前にチャージして使うプリペイド方式が主流です。
タッチするだけで決済が完了するため、レジ業務をスムーズに進めたい店舗に最適といえるでしょう。また、通勤・通学時に利用されることが多く、駅近の店舗や飲食店などでは特に集客効果が期待できます。
手数料は3〜4%で、専用の端末や読み取り機器が必要なため、初期導入コストが発生する点には注意しておきましょう。交通系ICの利用率が高いエリアで営業している店舗では、積極的に導入を検討したい決済手段です。
関連記事:
電子決済の導入のメリットとは?POSレジ連動を推奨する理由
電子マネーの種類10選!カテゴリ別の種類や店舗側の導入メリット
キャッシュレス決済導入前にチェックすべき注意点
キャッシュレス決済は利便性が高い反面、導入には一定の審査やシステムの整備が必要です。
ここでは、導入前に知っておくべき注意点や、つまずきやすいポイントについて紹介します。
- 審査に通過できない主な理由
- トラブル発生時のサポート体制
審査に通過できない主な理由
キャッシュレス決済を導入するためには、まずサービス提供会社の審査を通過しなければなりません。決済サービスは利用者の信用を担保する仕組みでもあるため、業種や過去の実績、提出書類の内容などが厳しくチェックされます。
特に、個人事業主や開業してから間もない店舗では、審査がより厳しくなる傾向があるため注意が必要です。
申請書類に不備がないか、本人確認書類や事業内容の説明が明確かなどを、事前にしっかり確認しておくことがスムーズな導入への近道となります。
トラブル発生時のサポート体制
キャッシュレス決済はインターネット回線を利用するため、通信障害やシステムトラブルが発生すると利用できなくなる可能性があります。こうした緊急時にどのようなサポートが受けられるかは、導入するうえでの重要なポイントです。
サポートは24時間体制か、また緊急時の連絡手段にはどのようなものがあるのかを確認しておくことで、トラブル発生時にも冷静に対応できるでしょう。
決済サービス選定の際は、使いやすさだけでなく安心して使い続けられるかという点にも注目することが大切です。
キャッシュレス決済導入の流れ
キャッシュレス決済をスムーズに導入するためには、導入の流れを把握しておくことが重要です。ここでは、決済サービスの選定から審査、実際の運用開始までの3ステップを紹介します。
- 決済サービスの選定
- 申し込みと審査
- 導入準備と運用開始
1. 決済サービスの選定
まず、自社の業態や規模に適した決済サービスを選定します。決済サービス選定の際は、以下について比較検討するとよいでしょう。
- 初期費用
- 月額料金
- 手数料
- 対応決済の種類
- 入金サイクル
この他にも、月間の決済件数予測や、主要な客層の利用傾向を考慮することが重要です。特に、決済手数料率と月額固定費のバランスを考慮し、収益に見合った選択をすることがポイントとなります。
2. 申し込みと審査
選定したサービスへの申し込み後、審査が行われます。
申し込みの手順や審査については、決済サービス会社と直接契約するか、決済代行サービスを利用するかで異なります。直接契約はやや手続きが煩雑なものの自由度が高く、決済代行サービスは手続きが簡単でサポートも受けやすいのが特徴です。
事前にそれぞれの必要書類を確認し、自分の事業内容やサービスが審査基準に適合しているかをチェックしておくと、スムーズに導入へ進めるでしょう。
3. 導入準備と運用開始
審査通過後は、決済端末の設置とスタッフトレーニングを実施します。特に、不正利用の防止や返金対応などのオペレーションについて、しっかりとした研修が必要です。
【事業者向け】キャッシュレス決済の比較ポイント
キャッシュレス決済サービスを導入する際に、どの基準で選べばよいかを整理しました。この基準をもとに、サービスを比較しながら選ぶことが重要です。
比較基準 | 説明 |
---|---|
初期費用 | 端末の購入費や導入費用の見極め |
決済手数料 | 1回の取引ごとに発生する手数料率 |
対応決済方法 | クレジットカード・QRコード・電子マネーなどの対応状況 |
導入のしやすさ | 申し込みや審査のハードルの高さ |
入金サイクル | 売上が銀行口座に振り込まれるまでの期間 |
サポート体制 | トラブル時の対応やカスタマーサポートの充実度 |
【個人事業主向け】キャッシュレス決済の導入ポイント
個人事業主がキャッシュレス決済を導入する際に特に注意すべきポイントを解説します。個人事業主ならではの観点から、効率的な導入方法と活用できる支援制度についてご紹介します。
導入コストを抑える方法
初期投資を最小限に抑えることは、個人事業主にとって特に重要です。キャッシュレス決済サービスを選ぶ際は、初期費用が無料のプランがあるサービスを検討します。また、月々の売上予測に基づいて、手数料率の比較検討を行うことで、長期的な運用コストを抑えることができます。加えて、決済端末は購入ではなくレンタルを選択することで、初期費用を抑制することも可能です。
導入手続きと必要書類
個人事業主向けの審査は、必要書類が法人より少なく、比較的シンプルです。一般的に必要な書類は、本人確認書類、営業許可証(業種による)、確定申告書の控えなどです。サービスによっては、オンラインでの申請も可能で、最短数日で利用開始できるものもあります。審査をスムーズに進めるため、これらの書類は事前に準備しておくことをおすすめします。
補助金や助成金を活用する
個人事業主でも活用できる様々な支援制度があります。小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金は、キャッシュレス決済の導入費用の一部を補助してくれる制度です。これらの補助金は定期的に募集が行われており、申請のタイミングを逃さないよう注意が必要です。
また、地方自治体独自の支援制度も多く存在します。商工会議所や商工会に相談することで、利用可能な制度の情報を得ることができます。補助金申請の際は、事業計画書の作成が求められることが多いため、導入の目的や期待される効果を明確にしておくことが重要です。くわしくは「キャッシュレス導入に活用できる補助金・助成」をご確認ください。
キャッシュレス導入に活用できる補助金・助成金
キャッシュレス決済の導入費用を抑えるために活用できる主な補助金・助成金として、以下のものがあります。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- 自治体独自の支援制度
これらの補助金・助成金を活用することで、キャッシュレス決済導入の初期費用を抑えることが可能です。各制度の詳細や最新情報、申請手続きについては、公式サイトを参照の上、直接お問い合わせいただくことをお勧めします。
小規模事業者持続化補助金
- 対象: 小規模事業者(商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)では従業員5人以下、それ以外の業種では20人以下)
- 補助内容: 経営計画に基づく販路開拓や業務効率化の取り組みに要する経費の一部を補助。キャッシュレス決済端末の導入費用も対象となる場合があります。
- 申請方法: 商工会議所や商工会のサポートを受けながら申請を行います。
- 引用元: 小規模事業者持続化補助金(一般型)公式サイト
IT導入補助金
- 対象: 中小企業・小規模事業者等
- 補助内容: 自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)の導入費用の一部を補助。キャッシュレス決済システムの導入も対象となる場合があります。
- 申請方法: IT導入支援事業者と連携し、公式ウェブサイトから申請を行います。
- 引用元: IT導入補助金2025公式サイト
自治体独自の支援制度
- 対象: 各自治体の要件に応じて異なります。
- 補助内容: 地域特化のキャッシュレス推進助成金や補助金が提供されている場合があります。
- 申請方法: 各自治体の公式サイトや窓口で詳細を確認し、指示に従って申請します。
- 詳細情報: お近くの商工会議所や商工会、または自治体の公式サイトをご確認ください。
キャッシュレス決済はPOSレジ連携がおすすめ
キャッシュレス決済は、POSレジと連携させることでさまざまなメリットを受けられます。POSレジとは、顧客との金銭のやり取りが発生した時点の販売情報を登録し管理する「POSシステム」を搭載したレジのことです。キャッシュレス決済を導入するときは、レジとキャッシュレス決済端末をそれぞれ別に使用する方法か、レジとキャッシュレス決済端末を連携させて使う方法が選べます。
キャッシュレス決済とPOSレジを連携すると得られるメリットは、主に以下の2つです。
- 売上データを記録できる
- 業務の効率化を図れる
売上データを記録できる
POSレジは、いつどの商品がどれくらい売れたのか、データとして登録することができます。そのため、POSレジとキャッシュレス決済端末を連携させることにより、キャッシュレス決済の売上データを詳細に記録することができるのです。
商品が売れた時間帯や個数などを分析することで、効果的なマーケティング戦略を立案でき、売上アップにもつながります。
関連記事:POSデータとは?分析メリットと注意点・活用例を解説
業務の効率化を図れる
キャッシュレス決済とPOSレジを連携させること1回の操作で支払いが完了するため、業務の効率がアップします。
連携させていない場合、キャッシュレス決済で支払いを終えたあと、POSレジに会計データとして同じ金額入力しなければなりません。これは二度打ちと呼ばれ、会計に時間がかかってしまう原因となります。
さらに、二度打ちをすることで金額を間違えて入力してしまうリスクもあります。キャッシュレス決済とPOSレジの連携は、ヒューマンエラーを防ぎ、手間を削減して業務の効率化に貢献するのです。
関連記事:キャッシュレス対応のPOSレジとは?導入メリットを解説!
ヒューマンエラーの防止につながる
キャッシュレス決済をPOSレジと連携させることで、金額の入力ミスや打ち間違いなどのヒューマンエラーを防ぐことができます。
キャッシュレス決済とPOSレジを連携させていない場合、キャッシュレス決済で支払いを終えたあと、POSレジに会計データとして同じ金額を入力する必要があります。
これは二度打ちと呼ばれ、会計に時間がかかるだけでなく、金額の打ち間違いが発生する可能性もあるのです。
一方、キャッシュレス決済とPOSレジを連携させると、POSシステムが商品情報と金額を自動で処理するため、人的ミスが発生しにくくなります。ヒューマンエラーの防止でより正確な会計処理が実現し、店舗運営の信頼性が高まるでしょう。
関連記事:レジミス対策 | 過不足金や操作ミスをなくす方法を解説
まとめ
キャッシュレス決済の導入は、顧客満足度の向上や業務の効率化につながる、今や欠かせない経営戦略のひとつです。
業務形態に合った決済サービスを選び、必要な手続きを事前に確認することで、スムーズな導入を実現できるでしょう。
補助金や助成金の活用によってコストを抑えることもできるため、最新の情報をご確認のうえ、ぜひキャッシュレス決済の導入を検討してみてください。
関連記事:
キャッシュレス対応のPOSレジとは?導入メリットを解説!
キャッシュレス対応券売機とは?導入メリットや注意点を解説!
よくある質問
「レジ管理の手間が省ける」「顧客単価が上がる」「客層を広げられる」などがあります。また、外国人観光客が多い観光地などでは、キャッシュレス決済の導入によって顕著に客層が広がります。海外には、日本よりもキャッシュレス決済が浸透している国が多く、キャッシュレス決済ができる店舗を優先的に利用すると言われています。
キャッシュレス決済とPOSレジを連携メリットとしては「売上データを記録」「業務の効率化」があげれます。これらデータ管理することで戦略に役立てたり、業務の効率でコスト削減したりと最終的には売上最大化が期待できるでしょう。