近年、キャッシュレス化が進む中で、さまざまな電子マネーサービスが普及しています。普段、街中で「Suica」や「nanaco」といった多種多様な電子マネーが見られますが、電子マネーにはどのような種類があるのでしょうか。
本記事では、電子マネーの種類について4つのカテゴリ別でご紹介します。また、事業者が電子マネー決済を導入するメリット、注意点も詳しく説明しているので参考にしてみてください。
電子マネーとは
電子マネーとは、電子データをやりとりすることで決済を行う決済サービスです。店舗での決済時に、現金と同様に決済手段として用いることが可能で、電子データの送受信を介して商品・サービスの代金を支払います。
店舗・消費者双方にとって、紙幣や硬貨によるやり取りがなくなることから、スピーディな決済が実現できます。また電子マネーでの決済では、スマートフォンや各専用のカードを用いるため、気軽に決済を行えるのが特徴です。
電子マネーの種類は大きく分けて4つ存在する
電子マネーの種類は、大きく分けて4つ存在します。下記の通り、4つの種類に関してそれぞれの特徴や違いを解説していきます。
- 交通系
- 流通系
- クレジットカード系
- QRコード決済系
交通系
電子マネーを代表する決済の種類として、交通系が挙げられます。交通系は、鉄道会社をはじめとする公共交通機関が発行する電子マネーで、「Suica」や「PASMO」といったサービスがあります。
上記の交通系電子マネーは、電車・バスの運賃だけでなく、街中のコンビニや小売店、飲食店など幅広い場所で使用できます。また交通系電子マネーは、カードタイプを採用しているもののほか、スマートフォンにインストール可能なものもあります。なお、電子マネーにあらかじめ入金するプリペイド型が一般的です。
流通系
2つ目は、流通系の電子マネーです。小売流通系企業が発行する電子マネーの種類で、「WAON」や「nanaco」といったサービスがあります。
流通系電子マネーは、キャッシュレスでの支払いが可能であるほか、買い物をするたびにポイントが付与されるのが特徴です。ためたポイントは加盟店舗での支払いに使用し、お得に買い物をすることができます。
クレジットカード系
クレジットカード系は、クレジットカードと紐付けて決済する電子マネーの種類です。プリペイド型の電子マネーと異なり、利用金額はクレジットカードの利用代金として引き落とされるため、あらかじめチャージする必要がありません。
代表的なクレジットカード系の電子マネーは「iD」や「QUICPay」です。クレジットカード単体として使用可能であるほか、スマートフォンにインストールして使用できます。
またクレジットカード系の電子マネーは、通常のクレジットカード利用時と異なり、サインレス、暗証番号レスでの決済が可能であるという利便性があります。ただし、1回の決済における利用上限額が決まっている点に注意が必要です。
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QRコード決済系
QRコード決済系の電子マネーは、QRコードをスマートフォンで読み取って決済するサービスです。事業者にとっては、新たに専用の端末を導入する必要がないことから、初期費用を安く済ませられるのが特徴です。
消費者にとっても、スマートフォンでQRコードを読み取るだけで決済可能であることから、スムーズかつスピーディな支払いが行えます。クーポンも定期的に配付されており、お得に買い物をすることができます。
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電子マネーの支払い方法は3種類ある
上記で解説した通り、大きく分けて4つの種類がある電子マネーですが、各種類で支払い方法が異なるため、消費者がどのようにして決済を行うのか確認しておきましょう。
- プリペイド型
- ポストペイ型
- デビット型
プリペイド型
プリペイド型は、事前にアプリや電子カードに現金をチャージする支払い方法で、残高分だけが利用可能です。交通系電子マネーで紹介した「Suica」や「PASMO」、一部の流通系電子マネー、QRコード系でプリペイド型が採用されています。
プリペイド型の電子マネーは、事前にチャージした分だけしか使えないので、使い過ぎの防止に役立つでしょう。ただし、プリペイド型はチャージ可能な上限額が決まっており、上限額は各電子マネーサービスで異なる点に注意する必要があります。
ポストペイ型
次にポストペイ型の電子マネーは、事前にチャージが必要なプリペイド型と異なり、後払いの支払い方法です。主に、クレジットカード系電子マネーがポストペイ型を採用しており、利用金額がクレジットカードの支払い日に請求されます。
事前に電子マネーサービスにチャージする必要がないため、残高が足らなくて支払いができないという事態に陥ることがありません。
デビット型
デビット型の電子マネーは、電子マネーで決済した直後に金融機関の口座から支払った分が自動で引き落とされるタイプです。主に、QRコード系電子マネーがデビット型を採用しており、口座残高以上の支払いには利用できません。
消費者にとっては、プリペイド型同様に使い過ぎを防げるだけでなく、口座からすぐに引き落とされることからリアルタイムで支払い状況を把握できます。
電子マネーの種類10選
交通系・流通系・クレジットカード系・QRコード系の電子マネー決済サービスを、合わせて10選紹介します。それぞれの特徴を踏まえながら、集客強化を進めていきましょう。
交通系
交通系の電子マネーには、SuicaやPASMOといった大手鉄道事業者が運営するサービスがあります。
Suica(スイカ)
Suicaは、JR東日本が発行する電子マネーで定期券機能も搭載できます。また、全国のコンビニや小売店、飲食店などでも支払い可能であるほか、記名式のカードであれば紛失時に利用停止や再発行も可能です。
関連記事:Suicaの手数料はいくら?他のキャッシュレス決済との比較や導入メリット
PASMO(パスモ)
PASMOは、株式会社パスモが発行する電子マネーです。関東近辺の大手私鉄会社が共同で発行する電子マネーで、Suicaと同じように全国の鉄道・バスに加え、日常の決済にも利用できます。
流通系
流通系の電子マネーは、スーパーやコンビニ、通販での利用が目的とされています。発行会社の系列店で利用すると、ポイントが優遇されるメリットもあります。
WAON(ワオン)
WAONは、イオンリテールが発行するプリペイド型の電子マネーです。イオンだけでなく、コンビニや飲食店での決済にも対応しています。また、イオングループや系列店舗で決済した場合にのみ、利用金額に応じてWAONポイントがたまる特典も付きます。
nanaco(ナナコ)
nanacoは、セブン&アイグループが発行するプリペイド型の電子マネーです。nanaco登録時にカードが発行されますが、スマートフォンの専用アプリを使うことでカードなしでも利用できます。
楽天Edy
楽天Edyは、楽天グループが運営するプリペイド型の電子マネーです。楽天ポイントをためることも可能で、たまったポイントは楽天Edyはもちろんこと、楽天市場や加盟店での支払いに使えます。
クレジットカード系
クレジットカード系の電子マネーには、NTTドコモが運営するiDや、JCBのQUICPayがあります。後払いのポストペイ型にも対応しており、クレジットカード同様に利用できます。
iD
iDは、NTTドコモが運営する電子マネーサービスです。クレジットカードやプリペイドカード、デビットカードとの紐付けが可能で、紐付け先に応じて支払い方法が変わります。
関連記事:クレジットカード決済の手数料とは?導入メリットや選ぶ際のポイント
QUICPay
QUICPayは、大手クレジットカード会社であるJCBが運営する電子マネーサービスです。カードタイプのものやスマートフォンに内蔵させるタイプのほかに、コイン型やキーホルダー型といったものにも搭載できます。
関連記事:QUICPay(クイックペイ)の決済手数料はいくら?サービス概要や導入メリットを解説
QRコード系
最後にQRコード系は、各店舗に掲示されているQRコードを読み取ることで決済が行えるサービスです。代表的なQRコード決済サービスとして、PayPay、d払い、楽天ペイを紹介していきます。
関連記事:QRコード決済の手数料はいくら?決済サービスの手数料一覧や導入メリット
PayPay
PayPayは、PayPay株式会社が運営する電子マネー決済サービスです。利用者は約6,000万人近くで、事業者にとっては新規顧客開拓に重要なサービスといえます。全国の加盟店で利用可能であるほか、公共料金の支払いにも対応しています。
関連記事:PayPay加盟店の手数料はいくら?導入時のコストやメリット
d払い
d払いは、NTTドコモが運営する電子マネー決済サービスです。Docomoの回線を契約していないユーザーでも登録が可能であるほか、利用金額に応じてdポイントを獲得できます。
関連記事:d払いの決済手数料はいくら?導入メリット・デメリットや入金サイクル
楽天ペイ
楽天ペイは、楽天ペイメント株式会社が提供する電子マネー決済サービスです。楽天Edy同様に、利用金額に応じて楽天ポイントがたまるほか、ためた楽天ポイントはさまざまな場所で支払いに使えます。アプリ決済、クレジットカード決済、電子マネー決済の3つの決済方法を総称したサービスです。
関連記事:楽天ペイの決済手数料はいくら?決済方法の種類や導入メリット
事業者が電子マネーを導入するメリット
キャッシュレス決済が多くの消費者に活用されるようになったことで、事業者も導入を進めていく必要があります。そこで、事業者が電子マネー決済を導入することによるメリットを解説していきます。
- レジの混雑緩和につながる
- 新規顧客の獲得が狙える
- 現金管理の手間を省ける
- 未回収リスクを回避しやすい
レジの混雑緩和につながる
1つ目のメリットは、レジの混雑緩和につながることです。現金決済と比較して支払いのスピードが上がることから、レジの混雑緩和が期待できます。
現金決済では、顧客から現金を受け取り、店員がレジ操作を行った上で釣り銭を渡します。その際に、顧客が財布からお金を取り出したり、事業者がお釣りを渡したりする時間をキャッシュレス決済なら大幅に削減できるでしょう。
また、通常のクレジットカード決済と異なり、クレジットカード系電子マネーではサインや暗証番号が不要となります。全体的に決済完了までのステップが簡略化することで、顧客満足度の向上にもつながります。
新規顧客の獲得が狙える
2つ目のメリットは、新規顧客の獲得が狙えることです。電子マネーを設置することで、新規の顧客層を取り込みやすくなるほか、リピーターの確保にも生かせます。
近年では、現金を最小限しか持たずに、キャッシュレスでの支払いをメインとする消費が増加しています。このような消費者を取り囲むためには、代表的なキャッシュレス決済である電子マネーに対応する必要があるのです。
また、電子マネーにはポイントが付与されるものもあるので、リピーター獲得施策の強化にもつながります。さまざまな店舗で電子マネーが採用されている中で、新規顧客獲得には効果的なツールといえるでしょう。
現金管理の手間を省ける
電子マネーには、現金管理の手間を省けるというメリットもあります。現金決済では、お釣りの準備や売上管理だけでなく、レジ締め作業にも手間がかかっていました。しかし電子マネーは自動的に売上データが保存されるため、金銭部分の管理が便利になります。
特に、飲食店をはじめとする衛生管理が求められる業種において、電子マネーはさらなるメリットとなります。現金に触れるたびに手を消毒する必要もなく、オペレーションの負担軽減につながるでしょう。
未回収リスクが回避しやすい
さまざまなキャッシュレス決済の中でも、電子マネーは売上未回収のリスクを避けやすいメリットがあります。というのも、後払いのクレジットカード決済では、顧客の状況によっては支払いが滞る可能性があるためです。
そこでプリペイド型やデビット型の電子マネーであれば、すでに顧客がチャージした金額から支払われることから、未回収のリスクを回避できます。未回収のリスクを回避したい場合や確実に売上を回収したいという場合には、プリペイド型やデビット型の電子マネーが大きく役立つでしょう。
事業者が電子マネーを導入する際の注意点
事業者が電子マネー導入でメリットを得られる一方で、さまざまな注意点も押さえておかなければなりません。そこで、事業者が電子マネーを導入する際の注意点について解説していきます。
- 入金時のタイムラグが発生しやすい
- 初期費用や手数料などコストがかかる
- 災害時に使えない可能性がある
入金時のタイムラグが発生しやすい
電子マネー決済は、入金時のタイムラグが発生しやすい点に注意しましょう。キャッシュレス決済全般にいえることではありますが、すぐに入金される現金決済と異なり、電子マネー分の売上に関しては入金が即日ではなく、後日になってしまいます。
上記の点から、すぐに売上金が事業者のもとに届かない点をデメリットを感じるかもしれません。また、入金サイクルを把握しておかないと、キャッシュフローにも悪影響が出てしまうので注意が必要です。
初期費用や手数料などコストがかかる
次に、電子マネー導入時に、初期費用や手数料といったコストが発生する点にも注意しましょう。具体的には、電子マネーのカードを読み取るための専用端末を用意したりインターネット環境を整備したりしなければなりません。また、電子マネーサービスによっては決済手数料もかかるため、導入前にコストを計算する必要があります。
災害時に使えない可能性がある
電子マネーを導入する上で、災害時に使えないというリスクに注意しなければなりません。インターネット通信で電子マネーの決済が行われるため、災害時に不通になると、電子マネーの取り扱いが行えないリスクがあります。
災害時だけでなくても、インターネット障害が発生したり、店舗におけるインターネット環境がよくなかったりするだけでも、電子マネーの決済に悪影響が及びます。決済手段を電子マネーだけにするのではなく、現金決済にも対応することで万が一に備えられます。
関連記事:キャッシュレス決済の導入方法とは?決済の種類やメリット・デメリット
まとめ
電子マネーの種類は幅広く、普段よく見かける交通系ICカードや流通系のカード以外にも、クレジットカードを紐付けたクレジットカード系、QRコード系などがあります。それぞれ特徴も支払い方法も異なり、消費者にとっては生活環境に合わせて選べるのがメリットです。
また、事業者側も電子マネー決済を店舗に導入することで、新規顧客・リピーターの獲得が狙えるほか、現金管理の手間を省けるのがポイントです。いくつか注意点もありますが、売上拡大に重要な決済手段といえます。