キャッシュレス決済は、レジ業務の効率化や顧客が簡単に決済できる利便性の高さなど、さまざまなメリットがある一方で、利用するには手数料を払うことに注意しなければなりません。
本記事では、キャッシュレス決済の種類と手数料の相場を紹介しています。
また、キャッシュレス決済導入で手数料以外に必要となる費用やキャッシュレス決済を導入するメリットなどを解説しているため、キャッシュレス導入を検討している方は参考にしてみてください。
キャッシュレス決済の手数料とは
キャッシュレス決済の手数料とは、店舗がキャッシュレス決済を導入する際に避けられないコストです。
手数料は、お店側がクレジットカード会社などのキャッシュレス決済サービス提供元に支払わなければなりません。一般的に売上に対して3~4%程度の一定割合がかかりますが、割合はキャッシュレス決済の種類や店舗の規模によって異なります。
税務面では、決済サービス提供元と直接契約を結んでいる場合、この決済手数料は消費税の非課税対象です。一方で、決済代行会社を介して間接的に契約している場合は、手数料に消費税が課税されるため注意しましょう。
店舗経営では、手数料コストを事前に把握しておくことが収益管理の面で重要です。
参考サイト:国税庁 クレジット手数料
関連記事:キャッシュレス決済導入のメリットとは?導入の流れと各社の比較ポイント
キャッシュレス決済の種類と手数料の相場
キャッシュレス決済の種類と手数料の相場は次のとおりです。
キャッシュレス決済の種類 | 手数料の目安 |
---|---|
クレジットカード | 1~7% ※事業の規模や業種による |
電子マネー | 3%台 |
QRコード | 1~2%台 |
キャリア決済 | 5~10% |
それぞれの特徴と手数料目安を詳しく解説します。
クレジットカード決済の手数料
クレジットカード決済の手数料は、事業の規模や業種によって異なります。
個人経営の飲食店などの小規模事業者では、決済手数料が4~7%前後と比較的高めに設定されていますが、コンビニエンスストアなどの大手チェーン店では、取引量の多さを背景に1%前後という低い料率で契約できることもあります。
現代社会ではキャッシュレス決済が急速に普及しており、クレジットカード決済の選択肢を提供しないことは、潜在的な顧客を逃す機会損失につながりかねません。
そのため、一定の決済手数料を負担したとしても、それによって得られる集客増や売上向上のメリットを考慮すれば、クレジットカード決済の導入は経営戦略として合理的な選択といえるでしょう。
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電子マネー決済の手数料
電子マネー決済とは、現金を電子データとして管理し、そのデータの移動によって支払いを完結させる決済方法です。
電子マネー決済は公共交通機関での利用にとどまらず、自動販売機やコンビニエンスストアなど、日常的な買い物の場面でも幅広く活用できるようになっています。
2021年に経済産業省が実施した「キャッシュレス決済実態調査」の結果によると、電子マネー決済の手数料率は平均して3%台に設定されていることが公表されました。手数料率を踏まえた上で、事業者は導入メリットと費用のバランスを考慮した判断が求められます。
参考サイト:経済産業省 キャッシュレス決済実態調査
関連記事:電子マネーの種類10選!カテゴリ別の種類や店舗側の導入メリット
QRコード決済の手数料
QRコード決済は、スマートフォンの専用アプリとQRコードを組み合わせた決済方法です。
日本でQRコード決済方法が広く普及し始めたのは2010年代後半からですが、普及促進のための競争期を経て、2021年10月には多くのQRコード決済サービス提供会社が手数料の有料化に踏み切りました。
有料化後、QRコード決済サービスの手数料率はおおむね1~2%台に設定されており、クレジットカードや電子マネーと比較すると比較的低い水準となっています。
関連記事:QRコード決済とは?種類やレジ導入のメリットまで詳しく解説
キャリア決済の手数料
キャリア決済とは、商品やサービスの代金を携帯電話会社の通信料金と一緒に支払える決済方法です。
キャリア決済の手数料率は5~10%が一般的で、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、ほかのキャッシュレス決済方法と比較すると、高い水準にあります。
一方で、利用者にとっては支払い時にクレジットカード情報を入力する必要がなく、キャリアの契約情報だけで手軽に決済できる大きな利便性があります。
利用者側のデメリットとしては、利用限度額が比較的低く設定されているため、高額な買い物には不向きです。事業者側は手数料の高さと、顧客の利便性のバランスを考慮しなければなりません。
キャッシュレス決済の手数料分を商品単価に上乗せできるのか
キャッシュレス決済の手数料分を商品価格に上乗せする行為は、基本的に認められていません。
キャッシュレス決済の手数料負担を避けるために、その分のコストを顧客に直接請求することは禁止されているケースがほとんどです。
実際、多くのキャッシュレス決済サービス会社の利用規約では、顧客への手数料の転嫁を明確に禁止する条項が設けられています。
ルールに違反した場合、キャッシュレス決済サービスの利用停止措置を受けたり、契約違反によるペナルティが課されたりするリスクがあるため注意が必要です。キャッシュレス決済の導入は、手数料を含めた総合的なコストや利益を考慮した上で判断する必要があります。
キャッシュレス決済導入で手数料以外に必要となる費用
キャッシュレス決済導入で手数料以外に必要となる費用として次のものが挙げられます。
- 初期費用
- ランニングコスト
- 振込手数料やその他費用
それぞれの費用の詳細を解説します。
初期費用
キャッシュレス決済導入で手数料以外に必要となる費用として、初期費用に該当する決済端末の設置費用があります。
キャッシュレス決済を実施するためには、クレジットカードや交通系ICカードなどの決済手段を読み取るための専用機器が必須です。多くの決済サービス会社では、専用端末を導入時に事業者が購入するか、あるいは月額料金を支払ってレンタルする必要があります。
一方で、キャッシュレス市場で競争が激化している近年では、各社が差別化戦略として無料で決済端末を提供するサービスも増加傾向にあります。無料提供の場合でも、契約期間や最低決済額などの条件が設けられていることが多いため、導入前に詳細な条件確認は欠かせません。
ランニングコスト
月額利用料は、キャッシュレス決済サービスを継続的に利用するために店舗が定期的に支払うランニングコストです。
ランニングコストは主に決済システムの利用権、サポートサービス、およびシステムの保守・管理に対する対価として発生します。多くの決済サービス会社では、決済端末のレンタル料が月額利用料に含まれることが一般的で、端末を無料提供する場合でも、システム利用料として別途月額費用を設定しているケースもあります。
料金体系は会社によって異なり、低コストプランから高機能プランまでさまざまな料金体系があるため注意が必要です。キャッシュレス決済を導入する際には、決済手数料だけでなく、月額利用料も含めた総コストを計算し、店舗の売上規模や客層に適したサービスを選択することが重要です。
振込手数料やその他費用
キャッシュレス決済で発生した売上金が店舗の口座に入金される際には、金融機関が定めた振込手数料がかかります。
振込手数料の負担は、店舗側が全額負担するケース、決済事業者が負担するケース、あるいは一定金額以上の取引では無料となるなど、契約内容やサービスによって条件が変わってきます。
また、キャッシュレス決済を円滑に運用するためには、そのほかにもさまざまな費用を考慮しなければなりません。
決済処理に不可欠なインターネット通信費、QRコード決済を導入する場合はQRコードを印刷するためのプリンター代、さらに既存のレジシステムとの連携を考えるなら、決済端末と互換性のあるPOSレジなどのハードウェア購入やレンタル費用も発生します。
手数料を払ってでもキャッシュレス決済を導入するメリット
手数料を払ってでもキャッシュレス決済を導入するメリットとして次の内容が挙げられます。
- 客単価の向上
- 業務の効率化
- ヒューマンエラー抑止や防犯効果
- キャンペーンによる購買意欲向上
- 新規顧客の獲得
それぞれの詳細を見ていきましょう。
客単価の向上
キャッシュレス決済の特徴は、顧客が手持ちの現金に制約されることなく買い物ができる点です。
財布の中の現金残高を気にする必要がない心理的なハードルの低下により、現金決済と比較して支出金額が自然と増加する傾向があります。特に高額商品の購入では、大量の現金を用意して支払う際の心理的抵抗感が大幅に軽減されるでしょう。
カードやスマートフォンをかざすだけの簡単な動作で決済が完了するため、価格に対する感覚が鈍くなり、より高価な商品を選択する可能性が高まります。
また、キャッシュレス決済の手軽さは「ついで買い」を促進するため、メインの商品を購入した際に関連商品や追加商品を勧められると、現金決済の場合よりも購入に応じやすくなります。
業務の効率化
キャッシュレス決済の導入は、日常業務の効率化に貢献します。
現金決済と比較して、キャッシュレス決済ではカードやスマートフォンをかざすだけで即座に決済が完了するため、時間の短縮が可能です。
1件あたりの会計時間が短くなることで、レジの回転率が向上し、待ち時間の削減にもつながります。
同じスタッフ数でもより多くの顧客に対応できるようになり、顧客満足度の向上と売上増加の両方につながるでしょう。さらに、営業終了後のレジ締め作業も効率化されます。
現金決済の場合、レジの現金と売上データを照合し、金額の不一致があれば原因を調査する手間のかかる作業が必要です。一方で、キャッシュレス決済では照合作業が不要なことから、閉店後の業務時間を短縮できます。
ヒューマンエラー抑止や防犯効果
キャッシュレス決済のメリットの一つは、店舗内の現金保管量を削減できる点です。
店内に現金を多く置かない運営が可能になることで、強盗や窃盗などの犯罪リスクを低減できます。特に深夜営業の店舗や人通りの少ない立地の店舗にとって、この防犯効果は重要な導入メリットです。
また、店舗スタッフによる売上金の持ち出しといった不正行為のリスクが軽減されるため、オーナーやマネージャーが常駐していない店舗でも安心して営業できます。
さらに、現金決済では、レジ担当者のつり銭計算ミスや、顧客への受け渡し間違いなどが発生する可能性がありますが、キャッシュレス決済では人為的ミスが原理的に発生しません。
金銭トラブルによる顧客との衝突を避けられるため、店舗の信頼性向上にもつながります。
キャンペーンによる購買意欲向上
キャッシュレス決済サービスの各提供会社は、自社サービスの利用者拡大を目的として、さまざまな特典やキャンペーンを積極的に展開していることが特徴です。
例えばポイント還元率の一時的な引き上げや、特定の店舗やカテゴリでの追加ポイント付与、キャッシュバックなど、消費者にとって魅力的な特典が数多く提供されています。
店舗側はキャンペーンを効果的にアピールすることで、顧客の購買意欲を高める重要な販促ツールとして活用できます。
「〇〇ペイで支払うと◯%還元中」などの告知を店頭に掲示することで、顧客の目に留まりやすくなり、来店や購入の動機づけとなるでしょう。
新規顧客の獲得
キャッシュレス決済の導入は、これまでアプローチできなかった新たな顧客層を取り込む重要な戦略です。特にインバウンド需要の取り込みの観点でメリットがあります。
海外では、日本と比較してキャッシュレス決済の普及率が圧倒的に高く、韓国や中国、オーストラリアなどは特にキャッシュレス比率が高くなっています。
イギリスやシンガポールなどそのほかの国々でも、日本の32.5%を大幅に上回るキャッシュレス比率です。
観光客にとって、現金のみの店舗は利便性が低く、為替レートの問題や両替の手間なども障壁となります。
キャッシュレス決済に対応することで、外国人観光客の利便性を高め、言語の壁があっても簡単に支払いができる環境を整えられます。
参考サイト: 一般社団法人キャッシュレス推進協議会 キャッシュレス・ロードマップ2023
キャッシュレス決済を導入する手数料以外のデメリット
キャッシュレス決済のもっとも大きなデメリットの一つは、売上金の入金タイミングの遅れです。
現金決済では即座に手元に資金が入りますが、キャッシュレス決済では決済サービス会社からの振込までに数日から数週間のタイムラグが生じます。
日々の運転資金に余裕がない小規模事業者にとっては、キャッシュレス決済比率が高くなることで、短期的な資金繰りに支障をきたしかねません。
特に導入初月はもっとも資金不足に陥りやすい時期です。現金売上が減少する一方で、前月のキャッシュレス決済による入金もまだない状態となるため、資金が枯渇しがちです。また、キャッシュレス決済の導入には一定の初期費用が必要です。
決済端末の購入やレンタル費用、システム導入費用などの初期投資は、特に小規模事業者にとって大きな負担となりかねません。
まとめ
本記事では、キャッシュレス決済の手数料を解説しました。
キャッシュレス決済の手数料とは、店舗がキャッシュレス決済を導入する際に避けられないコストです。
手数料は、お店側がクレジットカード会社などのキャッシュレス決済サービス提供元に支払わなければなりません。
また、キャッシュレス決済の手数料分を商品価格に上乗せする行為は、基本的に認められていません。そのため、店舗側は手数料がかかることを意識した上で経営を行う必要があります。
キャッシュレス決済の種類別に手数料の目安を解説しているほか、キャッシュレス決済導入によるメリット・デメリットも解説しているため、これから導入を検討している方は参考にしてみてください。
よくある質問
一般的には、売上に対する手数料率として、クレジットカードが3~7%、電子マネーが3%台、QRコード決済が1~2%台、キャリア決済が5~10%程度です。
さらに、初期費用として決済端末の購入・レンタル費用や、ランニングコストとして月額利用料、振込手数料も発生します。
キャッシュレス決済でどれが一番いいかは、実際には店舗の業種や規模、客層によって異なります。
手数料率ではQRコード決済がもっとも低く、クレジットカードやキャリア決済より経済的です。一方で、判断材料として手数料だけでなく、利用客層の好みや月額費用、入金サイクル、操作性も考慮すべきです。
若年層にはQRコード決済、幅広い客層にはクレジットカード、外国人観光客には国際ブランドのカードが適しています。