飲食店の経営者や、多店舗展開する大手飲食チェーンの人材管理担当者にとって、自店のスタッフ離職率の高さが深刻な悩みになることは少なくありません。
その背景には、他業種と比較して飲食業界の離職率が高いという事実があります。本記事では、飲食業界の離職率が高い理由を分析し、離職を食い止めるための3つの施策をご紹介します。
離職率の求め方
まずは自店の離職率を把握しましょう。一般的な離職率を求める計算式は、以下の通りです。
(任意の日から一定期間における退職した人数)÷(任意の日に在籍していた人数)×100
ただし、アルバイトスタッフが多く在籍し、人の出入りが頻繁な飲食店では、離職率の求め方に工夫が必要です。この計算式に、離職率の算出期間中に採用した人を含めてしまうと、正しい離職率が求められなくなってしまうためです。
飲食業では重要な戦力となるアルバイトですが、多くは学業などと併用していることが多く、長期間にわたって安定的に働くことはまれです。離職を前提としたアルバイトは離職率の計算からは除き、「試用期間(3カ月程度が普通)の終了までに離職したアルバイトの人数だけをカウントする」、などとするとよいでしょう。
飲食店の離職率平均
厚生労働省の調査「産業別の入職と離職の状況(令和5年上半期)」によると、宿泊業・飲食サービス等の離職率は14.8%となっており、全産業平均の8.7%と比べても突出しています。また、離職率が高いことで、新規人材の採用コストの負担が大きくなっていることも予想されます。
飲食店の離職率が高い理由
飲食店の離職率が高い理由は、下記の3点に集約されます。
- 負担となりやすいシフト体制
- コミュニケーション不足
- 賃金が上がらない
負担となりやすいシフト体制
飲食店は土日や祝日に集中してお客様が来店するため、従業員は休みを取りづらく、世間一般の休日でも働かなければなりません。そのため、土日休みの友人や家族との予定が合わない、週末に開催されるイベントに参加できないなど、さまざまな不都合を被ります。
また、病気などで同僚が急な休みを取った時でも、すでにほとんどの従業員がシフトに入っている場合の補充は難しく、人員が不足した状態で働くこととなり、疲弊してしまいます。閉店後にもお客様が居座ってしまって、気が付くと長時間労働していたというケースも少なくありません。
働く曜日の制約やシフトのきつさ、人手の足りなさ、長時間労働などを負担に感じて、離職してしまう人が多いと考えられます。
参考記事:飲食店DXの効果とは? 成功事例で見るシステム導入のポイント
コミュニケーション不足
飲食店で働く人は、正社員よりもアルバイトやパートの従業員が多いのが一般的です。このような非正規雇用の従業員は、それぞれが決められたシフト制で働いているため、決まった人以外と顔を合わせる機会が少なく、全員でコミュニケーションを取ることが難しくなります。
お互いに顔も名前も知らないのに働く場は一緒であることや、日常的に仕事の引継ぎが発生することも、問題を引き起こします。たとえば前夜の店内清掃が不十分で、朝の開店前の作業が増えるといった場合は、業務負担に加え相手に対する不満を抱えたまま、誰にも文句を言えずに葛藤することに。
こうしたフラストレーションにより、お店を辞めてしまうというケースも多く見られます。
賃金が上がらない
飲食店のオペレーションはルーティンワークが多く、「誰でもできる仕事」というイメージもあるため、賃金が上がりにくいのが実情です。また、小規模な飲食店になると、オーナーの独裁体制という職場も多く、評価体制も曖昧になりがちです。
一生懸命に仕事を頑張っても正当に評価されないことが続くと、やりがいを感じられなくなり、将来にも期待が持てないため離職へとつながってしまいます。
飲食店の離職率を下げる方法
飲食店を経営する以上、従業員の離職を少しでも減らしたいと思うのは当然のことです。離職率が抑えられれば、新規の採用コストもかからず、教育の手間も軽減されます。
次に紹介する、飲食店の離職率を下げる方法をぜひ実践してみてください。
- シフト希望を積極的に反映する
- 評価制度を構築する
- オペレーションの効率化
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入
シフト希望を積極的に反映する
まずは、従業員が希望する勤務シフトを最大限に尊重することです。
平日に休みたい人もいれば、家族と過ごすため休日に休みを取りたい人もいます。従業員の家族構成やバックグラウンドを理解したうえで、積極的にシフトに反映してあげましょう。「希望を聞いてくれる職場だ」とわかれば、不満を抱えることも少なくなるでしょう。
またシフトに急な欠員が出た場合でも、他の従業員の休みを削ってまで出勤させることがないよう、余裕を持ったシフト管理も重要なポイントになります。
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評価制度を構築する
評価制度を見直すことも、離職率を下げる大きな原動力となります。
仕事をしっかり行えば、それ相応の見返りを求めるのは当然のことです。もちろん経営者側としても、従業員の頑張りに応える義務があります。正当な評価はモチベーションを高め、仕事にもますます熱が入ってサービスの質が上がり、結果として顧客満足度の向上にもつながるでしょう。まずは従業員から、現在の評価制度への満足度をヒアリングし、必要に応じて制度改革を行ってみてください。
さらに、従業員に仕事における改善点を提案させたり、イベント時の内装のアイデアを募集したりといった試みも効果的です。従業員ならではの視点を評価し、昇給・昇格のひとつの条件として待遇に反映させることで、「お店の一員として必要とされている」と、長く働いてもらうことができます。
オペレーションの効率化
オペレーションの効率化は、スタッフの負担を軽減し、業務をスムーズに進行させるために重要です。業務フローを見直し、無駄な作業や重複を削減することで、スタッフ間のコミュニケーションや移動時間を短縮できます。
適切な役割分担やシフト調整により、過度な労働を防ぎ、スタッフの働きやすさが向上します。これらの改善により、スタッフの満足度が高まり、離職率の低下が期待できます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入
店舗におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入は、業務の効率化とスタッフの負担軽減に繋がります。注文管理や在庫管理システムの導入により、業務の迅速化とミスの削減が実現できます。
デジタル技術を活用することで、スタッフはよりクリエイティブな業務に集中でき、顧客対応もスムーズになります。店舗の競争力が高まり、スタッフの働きやすい環境が提供され、離職率の低下が狙えます。
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まとめ
飲食店の離職率を下げるためには、従業員のシフト希望を尊重し、働きやすい環境を作ることが重要です。評価制度を見直し、努力を正当に評価することでモチベーションの向上つながります。
また、DX導入も重要な施策です。従業員の負担軽減や、離職率を低下させるためにも、『POS+ time recorder』の導入をご検討ください。
よくある質問
全員のシフト希望を完全に反映するのは難しいですが、従業員の希望を尊重する姿勢が大切です。希望に沿ったシフトを提供し、調整が必要な場合は柔軟に対応することで、スタッフの信頼を得ることができます。全体の人員バランスを考慮しつつ、無理なく調整を行うことが離職防止に効果的です。
評価制度は「公平性」と「透明性」を重視し、明確な基準と具体的な目標を設定します。定期的にフィードバックを行い、従業員の意見を反映させることで、評価に対する満足度を高めることができます。改善点の共有や、共に成長する姿勢を示し、従業員のモチベーション向上と離職防止につながります。