飲食店やアパレル店を経営していると、「情物一致(じょうぶついっち)」という言葉を聞くことはありませんか? 一般的な用語ではないため馴染みがないかもしれませんが、経営者としては見過ごせない重要なビジネス用語です。
本記事では「情物一致」の目的と重要性を解説し、情物が不一致の場合に起こる問題や対策もあわせてご紹介します。
情物一致とは
「情物一致」とは、「情報(データ)」と「実際の物の数や状態」が一致している状態のことを指します。在庫の出入庫管理や、検品などの際によく使われる用語で、データ通りに商品在庫が存在していることを示します。
情物一致を実行するポイントはシンプルで、在庫や商品など「物」を動かす際に都度、出入庫管理表等の台帳に記録を残すことです。「あとでまとめて書こう」などと記録を怠ったまま忘れてしまうと、とたんに情物一致が崩れてしまいます。店舗内の物の移動時には必ず実行するよう、スタッフの意識付けを行いましょう。
情物一致の目的と重要性
情物一致を実施する重要な目的のひとつは、在庫や商品など社内資産の紛失を防ぎ、損害を無くすことにあります。社内資産が「どこに」「どれくらい」あるかを正確に把握できていないと、万が一盗難等の被害にあっていてもすぐに気づくことができず、損失につながってしまいます。
もうひとつの目的は、すべての社内資産をデータ上で管理できるようにすることです。情物一致が完璧にできていると、わざわざ倉庫や店舗に出向いて棚を確認しなくても、PC上ですべて把握できるため、在庫管理業務の効率が格段にアップします。
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情物が一致しないと起こる問題
データと社内在庫が一致しないこと(情物が不一致)は、さまざまな問題のきっかけになります。
- 急な在庫切れ
- 余剰在庫
急な在庫切れ
情物が不一致だと、「あるはずの在庫が実際にはなかった」という事態が起こり、急な在庫切れを起こす可能性が高まります。飲食店では「使おうと思っていた食材がなく料理が作れない」「アルコールのストックが切れてしまい、飲み放題に対応できなくなった」といったトラブルにつながりかねません。
またアパレル店においても、急な大量注文にお応えできなかったり、色違いやサイズ違いの用意がないばかりに販売機会を逃してしまったりといったことが起こり得ます。
余剰在庫
情物の不一致は、余剰在庫を抱えてしまうという問題にも直結します。本当はまだ十分にあるはずの在庫がデータ上では「ない」ことになると、追加発注によって在庫をさらに増やしてしまう事態になりかねません。特に、食材など消費期限があるものが余剰在庫になると期限切れで廃棄をせざるを得ないことになり、完全なロスコストになります。このような事態は明らかに経営を圧迫します。
また、余剰在庫は、在庫そのものがムダによる損失も大きいですが、溢れ返る商品を保管するために追加で倉庫を借りなければならなかったり、人手が足りなくなって新たに従業員を雇ったりと、 本来は必要でないコストを発生させる懸念もあります。
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情物の不一致が起こる原因
情物が一致しないという事態を引き起こす主な原因について解説します。
- 計数ミスや記録漏れなどのヒューマンエラー
- 在庫管理が機能していない
- 在庫の整理ができていない
計数ミスや記録漏れなどのヒューマンエラー
情物の不一致が起きる最大の原因は、在庫の個数を数え間違ったり、入出庫の記録が漏れていたりするなど、単純なヒューマンエラーによるものです。
個数の数え間違いについては、リストやタグ、バーコードなどを利用して、できるだけ見落としを減らす方法の導入を検討してみるといいでしょう。ヒューマンエラーは、記録者個人のミスだけに起因するものではなく、記録の方法が煩雑だったり、ダブルチェックがないためミスに気付かないという管理体制が原因だったりと、業務フロー自体に問題があることも考えられます。
在庫管理が機能していない
そもそも在庫管理が行われていない、管理システムはあるもののうまく機能していないなどの理由で、情物不一致を起こしているケースも多々あります。特に個人で始めた小規模な飲食店や雑貨店・アパレル店などでは、オーナーが1人でお店の切り盛りしてきたため、「在庫のことはすべて自分の頭に入っている」という状態が長く続いている場合が多いです。徐々にお店の規模が大きくなり従業員が増えたにもかかわらず、このような昔ながらの在庫管理が続いている、というケースは珍しくありません。
また、在庫管理システムを導入しているものの、すべての機能を把握していなかったり、ルールを無視した使い方をしていたりと、十分に使いこなせていないという場合もあります。いま一度自店の在庫管理システムを見直してみて、使い勝手がよくない部分があるのであれば、別のシステムへの切り替えを検討してみてもいいでしょう。
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在庫の整理ができていない
在庫管理の重要性はわかっていても、数量が物理的に多過ぎて把握しきれず、結果として情物の不一致が起こってしまうこともあります。特に在庫点数が多くなりがちなアパレル店によく見られるケースで、アクセサリーやヘア小物などの小さくて細かい物や、左右セットにして使う物は、管理が難しいものです。
飲食店などでも例外でなく、届いた食材を段ボールのまま倉庫に置きっぱなしにして、積み上げていくうちにその存在を忘れてしまい、二重に発注するなどムダが発生してしまいます。
在庫管理システムで情物一致を
在庫管理システムとは、店舗や倉庫内に存在する在庫の数や状態をデータに落とし込み、PC等のデバイス上で管理する仕組みのことです。手書きの在庫リストよりも更新が簡単で、出入庫の状態がリアルタイムで分かるようになるため、情物の不一致を起こしづらくなります。
在庫管理システムには、クラウド上でデータ管理をする「クラウド型」と、店内にサーバを設置してシステムソフトウェアを組み込んだ上で使用する「システム型」の、大きく2種類があります。システム型は導入するまでにコストとリードタイムがかかりますので、まずお試しで使ってみたいという場合はクラウド型がおすすめです。
これまでの在庫管理システムの課題
実際に在庫管理システムを導入しても、使い勝手が悪い、あるいは現場のニーズと合っていないといった理由で、実際には利用されていないケースも多々あります。
飲食店やアパレル店が抱える在庫には、売上や仕入などの業務の流れに連動させて帳簿に記入する「帳簿在庫」と、倉庫からの出入庫のタイミングで記録する「実在庫」があり、この2つの数字が合致していることで情物一致が成立します。しかし、帳簿在庫と実在庫を記録する担当者が別だったり、担当者は同じでも帳簿在庫と実在庫をそれぞれ別のリストに記入しなければならなかったりと、旧式のシステムではフローが非常に煩雑なことがあり、大きな課題となっています。
POSシステム
POSシステムとは、販売時点情報管理を表す「Point of sale」の頭文字で表した、小売業・飲食業における商品管理システムのことです。商品一つひとつに付けたバーコードを読み取ることで、売上や入出庫などの記録をデータ化し、連動したサーバに自動転送することができます。
これまでの在庫管理システムは、単純に在庫の数と場所を把握するくらいしかできないものもありましたが、POS型のシステムは在庫数や出入庫の時間はもちろんのこと、さらに多様なデータを収集・解析することができます。
たとえば、レジと連動させて「どんな商品がいつ売れて、このペースだとあと●日で在庫がなくなる」、「先月に比べて●%以上売上がアップしているから、次の在庫発注は●個追加する」といったような見込みを立てることができ、売上記録をマーケティングに応用できます。
また、POSシステムは従来のシステムに比べ導入コストが低く抑えられ、操作もシンプルで使いやすいというメリットもあり、いまや情物一致の実現には欠かせないツールとなっています。
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在庫管理の効率化と利益向上を支援するクラウドPOSレジ「POS+(ポスタス)」
情物一致を実現し健全経営を目指すには、在庫管理機能を備えたPOSシステムの活用が効果的です。
業務効率化と利益向上を支援するクラウドPOSレジ「POS+(ポスタス)」の小売店向けサービス「POS+ retail(ポスタスリテール)」では、搭載されたさまざまな機能がレジ機能と連動し、店舗運営をサポートします。
- 棚卸・在庫管理機能
- 在庫変動履歴機能
- 在庫の店舗間移動機能
- 発注・入荷・出荷機能
- 顧客データ分析機能
「POS+ retail(ポスタスリテール)」の導入により、商品が売れたと同時に自動的に在庫数からマイナスされるなど、在庫管理に関するデータを一元管理できるようになります。さらに、POSシステムから売上データも解析できるため、発注量の調整や経営状況の把握も容易です。
また、飲食店向けサービスとして「POS +food(ポスタスフード)」も展開しています。売筋·死筋商品の把握など食材ロスを防止する機能や、複数店舗間の運営一元管理機能など、こちらも在庫管理をサポートする多彩な機能を備えています。
健全経営をサポートするクラウドPOSレジ「POS+(ポスタス)」の導入をぜひご検討ください。
まとめ
店内在庫数を正確に把握し、データにまとめて管理できるようにすることは、社内資産を守り業務効率化につながります。情物一致は店舗経営を左右する重要な概念です。貴店における適切な管理のために必要な業務フローやサービスは何か、いま一度ご確認ください。
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よくある質問
「情物一致」とは、「情報(データ)」と「実際の物の数や状態」が一致している状態のことを指します。在庫の出入庫管理や、検品などの際によく使われる用語で、データ通りに商品在庫が存在していることを示します。
情物一致を実施する重要な目的のひとつは、在庫や商品など社内資産の紛失を防ぎ、損害を無くすことやすべての社内資産をデータ上で管理できるようにすることがあげられます。情物一致ができていることでPC上ですべて把握できるため、在庫管理業務効率の向上が期待できます。