「在庫管理」と一言でいっても、その考え方や意味合いは業種によって大きく変わってきます。本記事では、製造業・飲食店・アパレル・小売業と、業種別に在庫管理の目的や考え方を解説し、さらにその手法についても具体例を挙げて紹介します。
在庫管理とは
そもそも在庫とは、企業が販売する商品や製品に、直接的・間接的にかかわるあらゆるものの総称です。具体的には小売業が販売する商品のストックや、飲食店における食材、製造業の材料・部材などを指し、製造業においては未完成の工業製品なども在庫に含まれるため、業種別に在庫管理の考え方が異なるのはある意味当然といえるでしょう。
在庫管理は「在庫が倉庫に出入りする数をカウントする作業」というイメージを持たれがちですが、それだけではありません。厳密な意味での在庫管理には、在庫の発注から入荷、検品まで、「在庫が社内に入って商品・製品として世に出ていくまで」のすべての管理工程が含まれます。
在庫管理の考え方
在庫管理の目的や考え方は、業種によって大きな違いがあります。
製造業の在庫管理
製造業の在庫管理は、他の業種に比べて在庫の種類が細かく分類されており、それぞれの在庫を最適な状態で保管する必要があるのが特徴です。
具体的には、製造業の在庫は製造フローの段階別に分類されます。
- 作る前段階の「原材料・部品」
- 作っている途中の「仕掛品」
- 「完成品」
1. の原材料や部品の在庫が切れると全作業がストップするため、常に十分な量を確保しておく必要があります。発注のリードタイムを考慮しながら、在庫切れを起こさないよう管理しなければいけません。
また、2. の製造途中の「仕掛品」と呼ばれる段階のものも在庫に含まれるのが、製造業特有の考え方です。仕掛品は製造途中なのでまだ販売できる状態ではなく、そのうえ部品のように別の製品に加工できる状態ではありません。つまり、中途半端で現金化しにくいので、できるだけ最小限の量に留める工夫が大切になってきます。
3. 「完成品」は、すでにできあがって販売を待っている状態の在庫です。急な大量発注にも応えられるよう、十分な量を確保しておきましょう。一方で大型の工業製品など、保管スペースを要するものであればあるほど倉庫代がかかるため、最適な在庫量を見極め、品質が劣化しないうちに売り切ることも求められます。
飲食店の在庫管理
飲食店における在庫といえば、食材や飲料ストックなどを思い浮かべますが、それだけではありません。「仕込み中のスープ」や「下味を漬け込み中の肉」といった半調理品や、すでに完成した料理も在庫に含まれるため、在庫管理の対象として見なされます。この点は、製造業における「仕掛品」の在庫管理と通じるものがあります。
飲食店の在庫管理で難しいのは、賞味期限がある食品が主な在庫となる点です。在庫は鮮度を優先して先入れ・先出しを徹底する必要があり、温度と湿度の管理やウイルス対策なども考慮して、在庫ごとに保管環境を工夫しなければなりません。
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さらに食品以外にも、ストローやおしぼりなどの消耗品をストックし、破損に備えて食器類を多めにそろえておくため、在庫スペースの確保が必要になります。
アパレルの在庫管理
アパレル業における在庫管理には、この業種特有の3つの特徴を理解しなければいけません。
まず、アパレル商材は季節や流行に大きく左右されることから、在庫のライフサイクルが他業種に比べて短いという特徴があります。最近ではAIを用いたトレンド予測も行われていますが、まだ精度は低く、先の需要予測が難しいため不良在庫が多く発生しがちです。
また、アパレル商材は服をはじめシューズやバッグ類、アクセサリーに至るまで、取り扱う品目が非常に多いという特徴もあります。Tシャツ1枚とっても、色やサイズが異なれば別の商品として在庫管理をしなくてはならないため、結果として管理品目が膨大になってしまいます。
さらにアパレル業界では、一度小売店に出荷した商品であっても、売れなければ返品されるという商習慣が未だに残っており、余剰在庫を抱えるリスクを常にはらんでいます。
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小売業の在庫管理
スーパーマーケットなど小売業の在庫管理は、アパレルと同様に対象となる品目が多いのが特徴です。それに加え、近年ではネットショッピングが拡大しています。大手スーパーは実店舗に加えてECサイトを設ける「オムニチャネル化」を進めており、小売業の在庫管理はさらに複雑化しています。
このような状況下での在庫管理には、販売情報をリアルタイムに記録し管理できる「POS(Point Of Sales)システム」の利用が欠かせません。POSシステムに蓄積されたデータから顧客のニーズを掴み、適正な量の在庫を発注するフローが主流となっています。
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在庫管理の手法
業種ごとにさまざまある課題を解決し、在庫管理を効率的に行うためのツールを紹介していていきます。
- 在庫管理表
- エクセル
- バーコード
- 在庫管理システム
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在庫管理表
在庫管理表を使った方法は、古くから行われてきたオーソドックスな手段です。紙の管理表に手書きで出入庫時間や個数などを書き込むもので、誰にでもできる手軽さはありますが、やはり見落としや数え間違い、記入忘れなどのヒューマンエラーが起こりやすいのが難点です。
管理表の原本を紛失してしまうと記録がすべて失われてしまうというリスクもあり、可能であれば別の方法を取り入れたいものです。
エクセル
上記の在庫管理表をエクセルに落とし込んだものが、エクセルによる在庫管理方法です。インターネット上には在庫管理表の無料テンプレートがたくさん存在するので、作成自体には手間がかかりません。
また、管理表をクラウド管理すれば、社内にいる複数の担当者に共有できる点も便利です。さらにエクセル関数やマクロを活用できるのであれば、さらに高度な管理表を作成でき、作業の自動化によって業務も効率化されます。
とはいえ、結局のところエクセルへの入力は手作業になるため、入力ミスや抜け漏れが発生するリスクは変わりません。そこで注目したいのが、エクセルの在庫管理表と併せてバーコードを用いる方法です。
バーコード
バーコードの利用は有効で、手入力を避けられるだけでなく、在庫管理表と倉庫などの現場が連携することになります。個別の在庫に付けられたバーコードを専用のハンディターミナルやタブレット端末で読み取るだけで、連動するサーバにデータが転送され、エクセルの在庫管理表に自動入力されるのです。もちろん、現場から離れたオフィスにいても、パソコンで状況を確認できます。
入荷、検品、棚卸、残在庫照会などあらゆる場面で利用でき「1在庫・1バーコード方式」にすれば、他の在庫と情報が混同することもありません。速くて正確に管理できるため、どの業種にもおすすめの手法です。
在庫管理システム・ソフト
在庫管理システムおよびソフトは、在庫管理における業務を自動化し、データの一元管理を実現するために開発されました。従来の在庫管理表やエクセル入力で発生しがちな操作ミスと抜け漏れを防ぐことができ、数値の確認や修正の手間が格段に省けます。
在庫管理システムには大きく分けて、クラウド上でデータ管理をする「クラウド型」と、サーバにシステムソフトウェアを組み込んで使用する「システム型」の2種類があります。
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在庫管理システム・ソフトが注目される理由
在庫管理システムおよびソフトには、パッケージソフトをインストールして使うタイプや、POSシステムを利用するタイプなどさまざまなものがありますが、おすすめはPOSシステムです。特に小売業の在庫管理では、すでにPOSシステムはなくてはならないものとなっており、取扱品目が多い業種では必須といえます。
POSシステムは、ハンディターミナルやタブレット端末をバーコードにかざすだけで、在庫のあらゆるデータを取り込めるという画期的なものです。倉庫への入出庫時間だけでなく、POSレジと連動させることで売上のタイミングを記録し、在庫の社内滞留時間もわかるので、商品別の販売効率を把握できます。
また「近いうちに在庫が切れそうな商品の自動注文」や「余剰在庫になっている商品は発注を遅らせる」といった調整も可能で、在庫管理の手間を大幅に減らせます。経験が浅いスタッフでも正確かつスムーズに扱えるため、業務効率化にも多大な効果が期待できます。
在庫管理にPOSシステムを使うメリット
小売業をはじめ取扱品目が多い店舗運営においては、POSシステムの活用は不可欠なものとなっています。
業務効率化と利益向上を支援するクラウドPOSレジ「POS+」の小売店向けサービス「POS+ retail」では、搭載されたさまざまな機能がレジ機能と連動し、店舗運営をサポートします。
- 棚卸・在庫管理機能
- 在庫変動履歴機能
- 在庫の店舗間移動機能
- 発注・入荷・出荷機能
在庫管理のみを行うシステムでは、商品の入出荷や棚卸しなど在庫管理に関するデータのみの管理となることが一般的で、他システムとの連携が必要となります。
一方、「POS+ retail」では、商品が売れたと同時に自動的に在庫数からマイナスされるなど、在庫管理に関するデータを一元管理できるようになります。POSシステムから売上データも解析できるため、発注量の調整や経営状況の把握も容易です。
在庫管理を一元化
「POS+ retail」のご活用により、在庫管理業務とデータを一元管理できるようになります。
- バーコードの読み取りによる棚卸し作業
- グループ店舗間で発生した在庫の移動履歴の確認
- 会計時に販売した商品を自動で在庫からマイナス
- 発注、入出庫管理
- 検品
数人がかりで何日もかけていた棚卸し作業への負担が大きく軽減されるほか、在庫管理表に手書きで記入したり、エクセルに入力したりする手間もありません。ITツールが苦手な従業員でも、バーコードを読み取るだけならレジ作業と同じ要領で棚卸し作業を進められます。
また、グループ店舗間で在庫の受け渡しをすることもあるアパレル店での在庫管理も容易になります。在庫の不足時には、システムから他店の在庫を照会して出庫依頼まで行えるほか、ミスが発生しがちな在庫の店舗間移動後の在庫管理も、すべて履歴が残っているため正確性が向上します。
売上データ解析
「POS+ retail」では売り上げの分析も可能です。売上データ・来店者データを可視化して、客層別の購買傾向を把握し、季節ごとに変わる売れ筋商品等を予測して入荷に反映させることができます。売上データの解析から導き出した過不足のない入荷で、適切なコスト管理と在庫リスクの軽減を実現し、継続的な健全経営をサポートします。
まとめ
業種別の在庫管理についてご紹介しましたが、取り上げたのはごく一部の例です。貴社の管理フローに取り入れられそうな仕組みがあれば、ぜひ積極的に採用して、少しでも効率が良い在庫管理方法を考案してみてください。