事業の立ち上げを検討するにあたり、内容によっては店舗やオフィスを借りることなく、「自宅開業」の選択肢も浮上します。自宅で事業ができれば、毎月の固定費といった負担の軽減にもなるでしょう。ここでは、自宅開業のメリットとデメリット、自宅開業におすすめの業種などについて説明します。
自宅開業のメリット
自宅開業のメリットには、主に次の3つが考えられます。
- 好きな時間に働けて家事・仕事の両立ができる
- 初期費用・初期投資をおさえられる
- 家賃30~50%を経費にできる
自宅で仕事ができるようになれば、好きな時間に働き、好きな時間に休めるようになります。なにより、初期投資を抑えられるのは自宅開業の大きなメリットでしょう。
好きな時間に働けて家事・仕事の両立ができる
自宅を職場にすると、通勤時間が無くなり仕事の時間もプライベートの時間も増やせます。それと同時に、いつでも好きな時間に働くことができ、プライベートの時間も自由に設定できるようになります。
例えば自宅でサロンを開いた場合、完全予約制にすれば来客の時間もコントロールできるでしょう。子どもがいる方や介護中の方は、子どもの送り迎えや介護、家事・育児の時間に合わせてスケジューリングを行えます。
初期費用・初期投資をおさえられる
店舗やオフィスを借りるとなると、初期費用に加え、継続して家賃を支払うことになります。何かとお金がかかる創業時、店舗やオフィスにお金を使いすぎると、キャッシュフローに不安が生じかねません。
また、店舗やオフィスを借りるには、内装・外装にもお金がかかります。看板を設置する費用、オフィス家具、店舗改装費用などで数十万円以上の費用がかかってしまうことも。一方、自宅を仕事場にすれば、環境構築費用も最低限で済むはずです。
家賃30~50%を経費にできる
自宅が賃貸の方は、家賃の一部を経費として計上できます。ただし、自宅でもある以上、家賃すべてを経費にすることはできない点に注意しましょう。
家賃の一部を経費にしたいときは、借りている物件の面積のうち、プライベートと事務所それぞれにどれくらいの面積を割いているのかを明確にして「家事按分」をする必要があります。
また、家賃を経費として計上したい場合は、事前に税理士に相談しておくと安心です。経費として計上した分が事実と異なるようなことがあれば、税務調査の際に「家賃を計上しすぎている」として、過去にさかのぼって追加で税金を支払わなければならないこともあるからです。
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自宅開業のデメリット
メリットの一方で、自宅開業には次のようなデメリットもあります。
- セキュリティに問題がある
- 集客が難しい
- 仕事とプライベートの区別がしづらい
- 社会的信用が得られにくい
自宅で仕事をしていると、個人情報や顧客情報の管理や集客の方法を難しく感じることがあります。また、仕事とプライベートの区別がしづらいのも難点です。
セキュリティに問題がある
自宅で仕事をする場合は、情報漏洩や書類の紛失などのリスクが高まります。パソコンを使う仕事では、家族が仕事用の機器に触れないようにしっかりと管理する必要があります。家族がパソコンを使用して顧客情報にアクセスして、万が一流出してしまえば、信用にかかわるどころか損害賠償を請求されてしまうこともあるでしょう。
セキュリティ面を万全にするために、対策を心がけましょう。
- ウイルスソフトを導入
- 仕事用の通信回線を契約
- USBメモリなど持ち歩けるものに情報を入れない
- 仕事の書類は事務所から持ち出さない
こうしたルールを設定、遵守することで、セキュリティ面のリスクを低減できます。
集客が難しい
自宅を事務所や店舗にすると、集客が難しくなりがちです。特に自宅が住宅街に位置する場合、そこに店舗やオフィスがあるとわかりにくくなってしまいます。
また、自宅をオフィス代わりにすると、広告を出しにくくなるのも難点です。住所を不特定多数に公開することに抵抗感を抱く方がほとんどでしょう。
- ターゲットとなる顧客が多い地域に自宅を構える
- プライベート空間と事務所空間を完全に分けられるメゾネットタイプの物件を借りる
自宅開業を想定してこれから物件を借りる方は、上記のような対策を念頭に入れておきましょう。
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仕事とプライベートの区別がしづらい
さきほど触れたように、仕事とプライベートの時間を自由に設定できるのは自宅開業のメリットです。しかし、これがデメリットになってしまうこともあります。
いつでも仕事ができてしまうため、プライベートの時間に突然クライアントから訪問を受けたり、お客さまから連絡がきてしまったりといったケースが考えられます。自宅と店舗・事務所の空間がつながっている場合では、お客様にプライベートな空間を見られてしまうこともあるでしょう。
こうした事態を避けるために、「働く時間と休む時間」を自分で設定する、来訪を完全予約制にするなど、対策を講じることで来客時間をコントロールできます。また、自宅と店舗・事務所のスペースが同じ空間にある住宅では、パーテーション等で空間を区切り、プライベート空間を隠すなど工夫しましょう。
社会的信用が得られにくい
自宅開業には、社会的信用が得られにくいというデメリットもあります。自宅を事務所にしていると、事務所を借りられる資金がない、売上が足りないなどのイメージを与えてしまうためです。
また、事業用の預金口座を作る際、自宅兼事務所の場合は看板と事務所を直接確認される場合もあります。融資を利用するときにも、信用が得られにくいことがあるようです。
こうした事態を避けたいのなら、近隣のレンタルオフィスを借りる、コワーキングスペースを契約するなどして、事務所の住所を自宅以外にできるような方法も検討してみましょう。
自宅開業におすすめの業種・仕事
自宅開業ができる業種、自宅開業におすすめの業種は次の通りです。
- 理髪店・美容院
- エステサロン
- ネイルサロン
- 整骨院
- 歯科医院
- クリーニング店
- ECサイト運営
- フリーライター
- Webデザイナー
- プログラマー
- 動画編集
- ブロガー
理髪店や美容院、エステサロンなどの業種では、対応する客数を制限すれば自宅でも問題なく仕事ができます。接骨院や歯科医院、クリーニング店も同様です。戸建ての住宅の一部を改装したり、増築したりして対応できるでしょう。
その他、インターネット関連の事業では、自分が仕事をするスペースのみを確保できれば仕事に取り組めるでしょう。
ここでは、自宅で店舗型経営を営む業種に絞り、どのようにして自宅で仕事をすればよいのか説明します。
理髪店・美容院
理容師や美容師は国家資格です。自宅を改装して店舗にすれば、どこかの店舗に勤務することなく、自分のお店をオープンできるのです。年齢なども関係なく、いつまでも自分らしく働くことができます。
理髪店・美容店では、顧客はひとつの店舗を継続して利用する傾向が高い一方、顧客が店舗に訪れるサイクルは1ヵ月~数ヵ月に1度です。来店の間隔があいてしまうため、お客様の好みのスタイルやお気に入りのサービスを常に提供できるよう、まとめて顧客情報を管理する必要があります。
- 顧客データを一元管理できるアプリ
- スタイリストを個別に管理できるシフト・スケジュール管理アプリ
自宅での開業においては、これらの機能が重宝されるでしょう。
タブレット型POSレジ「POS+ beauty」の導入により、これらの機能をまとめて店舗運営に取り入れることが可能になります。また、キャッシュドロワーも利用すれば、事業用の現金をしっかり管理できるでしょう。
美容・サロン特化型POSレジシステム「POS+ beauty」
https://www.postas.co.jp/service/postas-beauty/index.html
エステサロン
マッサージ等を行うエステサロンも、自宅の一角を使用して開業するケースがあり、完全予約制の隠れ家的なサロンとして人気を得る事例も見られます。
エステサロンでは、顧客1人当たりのサービス提供時間は数時間にのぼることも少なくありません。また、顧客が通うペースは人により大きく変わります。理髪店・美容室と同様に、顧客それぞれの好みなどの情報を管理することでサービスの向上を目指せます。
また、エステサロンでは提供するメニューが多くなりがちです。顧客の情報管理とメニューの管理に、POS+をご活用ください。
ネイルサロン
ネイルサロンは、営業に必要となる面積がごく少なくて済む事業です。使う機器も小型なものが多く、場所を取らないため、リビングの一部や自宅の一部屋をサロンとして開業できます。午後だけオープンしたり、子どもが学校に行っている間にだけお店を開いたりといった柔軟な運用も可能です。
ネイルサロンも同様に、顧客個人の好みや、これまでに行ったネイルの反応などをタブレット型のPOSレジを用いてデータ化し、リピーターの獲得につなげましょう。
整骨院
接骨院を自宅で開業する場合は、ある程度の面積が必要です。6.6㎡以上の専用の施術室、3.3㎡以上の待合室を設け、さらに施術室の面積の7分の1以上の外気開放部分を設けるよう定められています。
接骨院では、営業日や営業時間を定めて開業するのが一般的です。営業日や営業時間は自分で決められますが、顧客が訪れやすい日時にすることになるでしょう。結果、会社員のように、決まった日時で働くことになるのが一般的です。
接骨院に訪れる顧客はさまざまで、顧客数も多くなりがちです。また、顧客によって悩みや施術の方法もさまざまで、売上データも複雑になるでしょう。現金の管理もしっかり行わなければなりません。
接骨院を自宅で開業する方は、顧客管理、売上データ管理、現金管理を間違いなく行うために、POSレジとあわせて、レシートを出力するプリンターや現金を管理するキャッシュドロワーを用意するといいでしょう。
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独立開業を目指せる資格
独立して自宅で開業を目指せる資格は数多くあります。
<国家資格>
- 柔道整復師(柔道整復師国家試験)
- あん摩マッサージ指圧師(あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験)
- 専門調理師・調理技能士(調理技能評価試験)
- 土地家屋調査士(土地家屋調査士試験)
- 不動産鑑定士(不動産鑑定士試験)
- 公認会計士(公認会計士試験)
- 税理士(税理士試験)
- 社会保険労務士(社会保険労務士試験)
- 弁護士(司法試験)
- 司法書士(司法書士試験)
- 行政書士(行政書士試験)
- 弁理士(弁理士試験)
- 調理師(全国調理師試験)
- 製菓衛生師(製菓衛生師試験)
<民間資格>
- 臨床心理士
- エステティシャンセンター試験
- ネイリスト技能検定試験
- JNAジェルネイル技能検定試験
独立開業を目指せる資格には国家資格と民間資格があり、国家資格ではいわゆる士業と呼ばれる業種に加え、柔道整復師や調理師などがあります。自宅で開業するのなら、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、税理士や社会保険労務士、行政書士などが適しているでしょう。
民間資格では、エステサロンを開業できるエステティシャンや、ネイルサロンを開業できるネイリスト技能検定試験などがあります。
自宅開業の手続き方法
自宅開業には、次の手続きが必要になります。
- 開業届の準備
- 青色申告承認申請書の準備
- 地区ごとの税務署に書類提出
まずは、税務署に提出する開業届と青色申告承認申請書を準備しましょう。両書類は開業する地域を所轄する税務署に各書類を提出します。
開業届の準備
個人事業主が店名や屋号で口座を開設したり、クレジットカードを契約したりしようとすると、開業届の控えの提出を求められます。
開業届とは、「個人事業の開業・廃業届出書」という名称の書類で、事業を開始してから1ヵ月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。開業届は2部作成し、1枚は控えとして自分で保管しておくものです。
手続きになるべく時間をかけたくない方は、事前に国税庁のホームページからダウンロードして、内容を記入してから税務署を訪れるといいでしょう。
- 国税庁ホームページ:個人事業の開業・廃業等届出書
なお、開業届には、個人番号や印鑑が必要です。作成の際までに忘れずに準備しておきましょう。
青色申告承認申請書の準備
青色申告承認申請書も、開業届と同じく所轄の税務署に提出する書類です。この書類を提出することで、確定申告を青色申告で行えます。
- 国税庁ホームページ:所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書には、氏名や屋号、職種、所得の種類や開業日などを記入します。なお、青色申告承認申請書の提出期限は、開業してから2ヵ月以内です。開業届と合わせて提出するとよいでしょう。
また、開業届や青色申告承認申請書は、会計ソフトでも作成できます。無料で対応している会計ソフトもありますので、チェックしてみましょう。
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地区ごとの税務署に書類提出
これらの書類は、事業を営む地域を所轄する税務署に提出します。どの税務署に提出すればいいのかわからない場合は、こちらの国税庁のホームページで検索してみましょう。
- 国税庁ホームページ:国税局・税務署を調べる
自宅開業に関わる届出書一覧
自宅開業をする場合は、次の届出書の提出も必要です。
- 給与支払事業等の開業届出書
家族や従業員に給与を支払う事業者が提出するものです。開業から1ヵ月以内に提出します。
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を、半年に1度の納付にするための手続きで、提出期限はありません。
- 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする事業者で、家族に支払う給与を専従者給与としたい場合には青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書を提出します。新規開業では、開業から2ヵ月以内に提出します。
その他、消費税課税事業者選択届出書、消費税簡易課税制度選択届出書も場合によっては提出しなければなりません。
自宅開業に必要な資金は?
自宅開業に必要な資金は、業種によって異なります。
IT関連の事業や自宅教室などでは、自宅をリフォームする必要がないため、開業のために特別な資金を用意する必要はありません。場合によっては、まったくお金をかけずに開業できるでしょう。
美容系やリラクゼーションサロンなどでは、自宅の改装費や設備資金として40万円程度からの資金が必要になるでしょう。
自宅開業の経費はどこまで落とせる?
自宅開業をする場合、一部経費には家事按分が必要になります。家事按分とは、生活費と事業場の費用を分けることで、そのうちの費用分を必要経費として計上できます。
そもそも経費とは、事業を行ううえで発生した費用を指します。経費は所得から差し引くことができるため、経費が多くなればその分所得が少なくなり、所得税も抑えられます。自宅で仕事をしている方は、光熱費や通信料、家賃をすべて生活費とするのではなく、家事按分を行い、一部を経費として計上するとよいでしょう。
ただし、家事按分には注意点があります。事実と異なる家事按分を行うと、正しい納税ができません。例えば家賃の場合には、自宅の床面積から、事務所用としている床面積を計測し、全体のどのくらいの割合を事務所スペースにしているのか計算します。
70㎡の住宅の内、15㎡を事務所にしているケースでは、「15㎡÷70㎡=0.21」となり、自宅の21%を事業に使用していることになります。家賃が10万円だったとすると、そのうちの21%が経費として認められるので、2万1,000円を毎月経費に計上できます。
この考え方は、通信費や光熱費も同様です。通信費や光熱費の場合は、「一日に何時間業務に利用しているのか」を指標に経費を算出できます。1日24時間のうち、自宅で8時間業務をしていたとすれば、約33%を経費として計上できます。月の電気代が3万円なら、約1万円が経費となるわけです。
これら経費について詳しく知りたい方は、下記のページ合わせご覧ください。
- 国税庁ホームページ:やさしい必要経費の知識
自宅開業をサポートするタブレット型POSレジシステム「POS+」
自宅で開業できる業種にはさまざまなものがあります。自宅で仕事ができれば、時間に融通が利くようになり、通勤に時間を取られることもありません。
ただし、自宅で顧客情報等を取り扱うことになってしまうため、セキュリティ面や管理に不安が残ります。そのようなときには、顧客管理も行えるPOS+のサービスをぜひご活用ください。自宅開業後の会計や売り上げの管理、電子カルテによる顧客管理など、さまざまな機能でご自宅での開業をサポートいたします。
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