自らが経営する会社や店舗での業務に従事してくれるアルバイトやパートの従業員ですが、両者の違いをご存じでしょうか?
本記事では、アルバイトとパートの違いについて法律上の定義や社会保険・有給休暇の有無、アルバイトおよびパート従業員を雇うメリット・デメリットについて詳しく解説いたします。
アルバイトとパートの違い
アルバイトとパートに法律上の違いはありません。「パートタイム労働法」によると、アルバイトやパートの定義は「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。つまり、労働時間が正社員よりも短い労働者は、一律アルバイト・パートと見なされ、アルバイトとパート自体を明確に分ける定義はありません。
ではなぜ呼称を使い分けるのかというと、「雇用主側が便宜上アルバイトとパートを区別するために、そう呼んでいる」というのが実態です。雇用主側は、週当たりの労働時間や連続して働く期間で、アルバイトとパートの呼称を使い分けています。一般的に浸透しているそれぞれの違いは、下表の通りです。
アルバイト | パート |
比較的短期間勤務する週2日〜5日、連続3〜8時間程度勤務する学生や他に本業のある人のイメージフリーターであれば長時間勤務になる | 比較的長期間勤務する週2日〜3日、連続2〜4時間程度勤務する子供が学校に行っている間など、午前中を中心とした勤務が主専業主婦、主夫のイメージ |
厚生労働省が定義するパートタイム労働者とは
アルバイトとパートの法的な区別はなく、厚生労働省が定義するパートタイム労働者とは「通常の労働者よりも勤務時間が短い労働者」であることは前述した通りです。「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「臨時社員」「準社員」などと呼び方は異なっても、この条件に当てはまれば、すべてが「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
パートタイム労働法に記載されている「通常の労働者」とパートタイム労働者の違いは、下表の通りです。
パートタイム労働者 | 通常の労働者 |
正社員、正職員に比べ労働時間が短い労働契約の期間が決まっている主に時給で給与が支払われるボーナス等は支給されないことが通例 | 正社員、正職員労働契約の期間の定めがない長期雇用を前提とした待遇を受ける賃金体系である(ボーナス等の手当あり) |
社内にいわゆる正規型の労働者がいない場合は、フルタイムで基幹的な働き方をしている労働者がいれば、その労働者が「通常の労働者」と見なされます。そして、その労働者より1週間の所定労働時間が短い労働者が、パートタイム労働者となります。
参考:厚生労働省公式サイト「パートタイム労働者とは」
アルバイト・パートの有給休暇の条件
労働基準法により、有給休暇はアルバイト・パートなどの雇用形態に関係なく、条件を満たせば誰でも取得可能です。
有給休暇は、1週間の所定労働時間数や労働日数に応じた日数分、付与することになっています。アルバイト・パート労働者は、正社員よりも労働日数や労働時間が少ないため、結果的に取得できる有休休暇の日数も少なくなります。
雇入れの日から起算した勤続期間に応じて、アルバイト・パート労働者が取得できる有給休暇日数は、下表の通りです。
雇入れの日から起算した勤続期間 | 付与される休暇の日数 |
6か月 | 10労働日 |
1年6か月 | 11労働日 |
2年6か月 | 12労働日 |
3年6か月 | 14労働日 |
4年6か月 | 16労働日 |
5年6か月 | 18労働日 |
6年6か月以上 | 20労働日 |
アルバイト・パートの社会保険の加入条件
パートタイム労働者は、主婦・主夫、フリーター、学生などの条件にかかわらず、以下の要件を満たせば、雇用先の社会保険(健康保険や厚生年金)の加入対象となります。
【パートタイム労働者の社会保険の基本加入条件】※2024年10月より適用
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(通勤手当・残業代・賞与等は含まない)
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 従業員数51人以上の企業(厚生年金の被保険者数)
- 学生は除く(休学中や夜間学生は加入対象)
参考:厚生労働省 社会保険適用拡大サイト 「社会保険適用拡大についてご案内」
事業主がアルバイト・パートを雇用するメリット
事業主がアルバイトやパート労働者を雇用するメリットには、下記の3つがあげられます。
- 業務効率の改善
- 人件費を削減できる
- 助成金がもらえる
業務効率の改善
アルバイトやパートなどの非正規雇用が必要になる時は、正社員だけでは業務が回らず、人手が欲しい場合が大半です。まさに猫の手も借りたいという状態の時に、業務の一部を担ってくれるアルバイト・パートの存在は大きく、即戦力として店舗運用に貢献してくれことが最大のメリットです。
逆に考えれば、アルバイトやパートを雇っても業務が円滑にならない場合には、無理に雇い入れる必要はないとも言えます。複雑かつ高度な技術が必要な業務など、期間限定の雇用であるアルバイト・パートでは対応できないようなケースでは、雇い入れるメリットは少なくなります。
人件費を削減できる
正社員のようなフルタイム労働者とは異なり、アルバイト・パートはスポット的な勤務が可能なため、人件費調整の面でも効率が良いというメリットがあります。
例えば、飲食店のランチタイムなどのピーク時だけ、アルバイトやパートを増員して人手を増やすことができれば、フルタイム労働者を雇い入れるよりも人件費を抑えることが可能に。「必要な時に必要な分だけ」雇うことができるのが、アルバイト・パートのメリットです。
社会貢献をし助成金がもらえる
高齢者や障害者、シングルマザーなど、就業が困難な方を雇い入れたり、雇用情勢が特に厳しい地域で従業員を雇ったりした場合、条件を満たせば国のさまざまな助成金を得ることができる場合もあります。
これは正規雇用に限らず、アルバイト・パートを雇い入れても同じ条件です。正社員としては難しくとも、アルバイトやパートとして雇うことで、助成金収入を得られるのはもとより、社会貢献にもつながります。
事業主がアルバイト・パートを雇用するデメリット
一方、事業主がアルバイトやパート労働者を雇い入れることにはデメリットも考えられます。
- 安定稼働しない可能性がある
- 雇用や教育に時間がかかる
- 離職率が高い
安定稼働しない可能性がある
アルバイト・パートは忙しい時間帯こそ必要な人材となりますが、働き手にも都合があるため「この日はどうしてもシフトに入れない」ということも起こり得ます。そうなると、さらにその日だけ増員が必要になったり、逆に正社員が総出で業務を分担したりしなければならず、なかなか安定稼働となりません。
業務量が程よく分散される効率的なシフトを組んでいたのに、一人のアルバイトが急に辞めてしまった途端にシフトの調整が困難になってしまうようなケースも見られます。
雇用や教育に時間がかかる
アルバイトやパートを雇用することで、各種の手続きが煩雑になるというデメリットが生まれます。まず雇い入れる前の段階で、税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」や「労働保険関係成立届」等さまざまな書類を提出しなければなりません。その他、労災保険や雇用保険への加入も必要となります。さらに雇い入れた後も、給与の支払いなどの事務手続きを行わなければなりません。
また、新しい人材を入れれば、当然仕事を覚えてもらうための教育・研修に時間を取られることとなります。忙しいからアルバイトやパートを雇ったはずなのに、かえって業務量が増えてしまう結果にもなりかねませんので、手続きや教育にかかる時間と後の業務効率化を天秤にかけたうえで、雇用の可否を決めましょう。
離職率が高い
アルバイトやパートは、元より期間を区切って働く一時労働者としての意味合いが強く、雇われた側にとっても腰を据えてじっくり仕事をするという意識はあまりありません。学生であれば「就職活動が忙しい」「大学を卒業したので地元に帰る」、主婦であれば「家族の介護が必要になった」「子供の塾の送迎が入った」などさまざまな理由から、すぐに仕事を辞めてしまうこともあらかじめ想定しておきましょう。
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まとめ
アルバイトやパートといったスポット的な人材を適切に取り込むことで、業務全体のフローが効率化、さらに業績拡大にも貢献してくれます。大切な戦力であるパートタイム人材に安定して稼働してもらえるよう、給料の前払いサービスなど、充実した福利厚生制度の採用もぜひご検討ください。
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