店舗を経営するうえで、売上と支出を把握してお金の流れを理解することはとても大切です。売り上げを分析して顧客単価を知り、商品の価格を見直すなどの作業は店舗経営の基本といえるでしょう。本記事では、売上の分析について説明します。
店舗売上分析に必要な要素
店舗の売上を分析するためには、次のデータが必要です。
- 来客数
- 購買率
- 平均客単価
これらのデータを調べ、次の計算式に当てはめることで、店舗の売上を算出できます。
店舗売上 = 来客数 × 購買率 × 平均客単価
これら店舗売上分析に必要な3つの要素を導き出すために、3つのデータの意味と算出するための計算式について見ていきましょう。
来客数
来客数とは、店舗に訪れた人数のことです。来客者数は、あくまでも店舗に足を踏み入れた人数を指し、「商品やサービスを購入していない人」も含まれる点に注意しましょう。
来客者数は、店舗内に入った人すべての数をカウントすれば大丈夫です。
購買率
購買率を算出することで、店舗に訪れた人のうち、何割の人が商品やサービスを購入したのかがわかります。購買率の計算式は次の通りです。
購買率 = 購買客数 ÷ 来客数
平均客単価
平均客単価を算出すると、1回の買い物で顧客が支払う金額の平均が分かります。平均客単価の計算式は次の通りです。
平均客単価 = 売上総額 ÷ 購買客数
たとえば、1日の来客数が100人で購買客数が30人、売上総額が30,000円だったとき、購買率は「30÷100」で30%です。平均客単価は、「30,000円÷30」で1,000円となります。
店舗売上は、「100×30%×1,000円」で、30,000円です。計算式を見ると、売上を向上させるためには購買客数、購買率、平均客単価を上げる必要があるとわかります。
店舗売上の分析方法
店舗売上の分析方法は、RFM分析とABC分析の2つの手法が主です。
- RFM分析
- ABC分析
RFM分析は、商品やサービスを最近購入した顧客、頻繁に購入するリピーター、もっとも購入している顧客の3つを調べることで、顧客の購買傾向を理解できます。ABC分析は、商品をA・B・Cの3つのランクに分け、ランクごとの売上を分析する方法です。
関連記事:小売業の店舗分析方法~データ分析を行うべき理由と効果
RFM分析
RFM分析とは、Recency frequency monetary analysisの略で、顧客の購入状況を理解して、売上向上のための施策を講じるのに役立ちます。
この分析には詳細な購買データが必須です。最近購入した顧客(Recency)、頻繁に購入する顧客(frequency)、もっとも購入している顧客(monetary)それぞれの顧客データを用いて、経営にとってよい顧客を見極めます。
Recency,frequency,monetaryの3つのデータを抽出したら、顧客に自店舗なりのランク付けをRFMそれぞれの観点から5段階評価で行います。
たとえば、1週間以内に購入した顧客はランク5、3か月以内ならランク3、1年以内はランク1いうように評価をつけていきます。RFMのすべてがランク5の顧客は優良顧客です。
3つのデータを抽出してランク付けしたあとは、次のようにして優良顧客を見極めます。
- Recencyが高い顧客は、マーケティングが届きやすく店舗の売上に貢献してくれる可能性が高い
- 最近購入した顧客数が少ない場合は、リピーターやもっとも購入している顧客が多くても他社に流れている可能性がある
- 同じ期間内でRecency の指標が同じだったとき、frequency の指標が高いときは得意顧客になっている
- 同じ期間内でRecency の指標が同じだったとき、frequency 、monetaryの指標が高い場合は顧客の購買力が高い
- Recencyやfrequencyが高くても、monetaryが少ない時は顧客の購買力が低い
- Frequencyの指標が低く、monetaryの指標が高い顧客はRecencyの高い顧客のほうが優良顧客
- Frequencyの指標が下がっている顧客は他社に流れている可能性が高い
- Recency frequency monetaryすべてが低い顧客は検討材料にしない
この指標をもって、もっとも優良な顧客グループには特別なサービスや商品を用意する、リピートが多い顧客グループにはクーポンや新商品の試供を用意する、売上にほとんど貢献していない顧客には「再購入サービス」などで再び購入してもらえるようにするなど、顧客に応じた施策を実行できるようになります。
関連記事:RFM分析とは?エクセルを使った分析方法やデシル分析との違いを解説
ABC分析
ABC分析では、商品を軸に売上分析を行います。
まず商品それぞれの販売個数、売上金額を抽出して、売上構成比を算出します。売上構成比を算出した結果、累計売上構成比が0%~70%をAランク、70%~90%をBランク、90%~100%をCランクというようにさらにランク付けします。
ABC分析は、お店の経営改善に役立ちます。Aランクに分類される商品を顧客に見つけてもらいやすいようにする、Cランクの商品は取り扱いをやめるなど、売上向上のための方法に着手したり、コストカットしたりして利益の改善を図ることができるのです。
店舗売上の向上に欠かせない5つのポイント
店舗の売上アップを狙うのなら、次の5つのポイントは外せません。
- 新規顧客の獲得
- 顧客流出を防ぐ
- リピーター獲得
- 客単価を上げる
- 商品単価の見直し
新規顧客を獲得して客数を増やす、既存顧客の流出を防いで顧客数を減らさない、リピーターを増やして購入回数を増やす、客単価を上げて1人当たりの売り上げを増やす、相場を意識して商品単価を見直す、この5つを意識しましょう。
新規顧客の獲得
売上向上を目指すうえで、新規顧客の獲得は欠かせません。新規顧客が増えれば、単純に顧客数が増えます。売上は「顧客数×客単価」で決まるので、新規顧客が急増すれば、客単価が下がっても売り上げが伸びることがあります。
既存の顧客数をキープしたまま新規顧客を獲得していけば、右肩上がりに売り上げを伸ばせるでしょう。
新規顧客を思ったように獲得できないときには、広告を増やす、新しい商品を開発するなどしてこれまでの客層と違う層にアピールしてみましょう。
顧客流出を防ぐ
新規顧客を獲得しても、定着しなかったり、既存の顧客が他店に流れてしまったりしては、売上向上は見込めません。既存顧客が流出すると、全体の顧客数が減少します。
既存の顧客の流出が止まらないときには、なぜ顧客が離れてしまうのかを理解する必要があります。商品が少なく飽きられてしまう、お気に入りの商品がなくなった、駐車場が狭くて利用したいときに利用できないことが続いたなど、店舗によってさまざまな原因が考えられます。
既存顧客をキープするために、一度利用したことがある顧客に対して販促を行う、クーポンを発行するなどの対策を行いましょう。
リピーター獲得
せっかく獲得した顧客がリピートしない状況では、売上は伸びません。このような状態で売上を伸ばすためには、延々と新規顧客を獲得し続けなければならず、獲得のための販促費などが負担となります。
リピーターを獲得して1人当たりの来店回数を伸ばせば、長期的な売上の向上を目指せます。常連客が多い店舗になれば、経営も安定するはずです。リピーターを獲得できない場合、何度も買いたくなる商品やサービスが少ないと考えられます。
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客単価を上げる
客単価を上げれば、顧客数が同じでも売り上げが伸びます。1日の来店客数が平均100人の飲食店で、客単価が1,000円の場合、1日の売上は10万円です。客単価が2,000円になったら、売上は倍の20万円になります。
気軽に注文できるサイドメニューを充実させるなど、オーダー数を増やして客単価の向上を目指しましょう。思ったように客単価が伸びないときは、次に説明する商品単価の見直しを行います。
商品単価の見直し
顧客数が変わらなければ、商品単価を上げることで売上を伸ばせます。ただし当然、相場よりも高すぎるものは売れません。値上げを行う場合は、同じ商品やサービスの相場を調べて価格を設定する、価格を上げた分サービスをするなどの工夫が必要です。
商品を値下げして、販売個数を増やして売上を伸ばすこともできます。商品を値下げしたときは、品質は変わらないがコストの見直しで値段を下げられたといったように、顧客に提供する商品の質が下がったわけではないこと、同じ品質なのにお得であることなどを顧客にアピールしましょう。
店舗売上をアップさせる施策
店舗売上をアップさせる具体的な施策を実行していきましょう。
- 来客数を上げる施策
- 客単価を上げる施策
店舗の売上を向上させるためには、来客数を増やす施策や客単価を増やす施策の実行が必要です。前述の通り、売上は「来客数×客単価」で決まるので、両方が伸びれば売上も自然と伸びます。
来客数を上げる施策
店舗への来客数を増やすために、次の方法が考えられます。
- 折込チラシ・ポスティング
- フリーペーパーへの広告出稿
- 地域誌への広告出稿
- ホームページで集客
- SNSで呼びかける
- 新商品の開発・販売
- クーポンの発行
- 看板の設置 など
店舗への来客数を増やすためには、「自分のお店はここにあります、このような魅力的な商品があります」と多くの人にアピールする必要があります。各種媒体を活用して、さまざまな客層にむけてPRしてみましょう。
お金がかからないPRの方法を活用したいのなら、SNSを積極的に利用するといいでしょう。より多くの人の目に触れて、知ってもらう機会を増やせば、店舗に足を運ぶ人も増えます。
客単価を上げる施策
客単価を上げる方法として、商品を増やす、滞在時間を長くする工夫をする、レジ前に思わず手に取りたくなる商品を配置するなどの方法があります。
顧客の滞在時間を長くしたいなら、店舗のレイアウトを見直す必要があるかもしれません。アパレルなら、売れ筋の商品を少し奥において、手前にはセール品を置くなどの配置の工夫で顧客の滞在時間を長くできるでしょう。陳列棚のもっとも見やすい位置に売れ筋商品を置くのも効果的です。
店舗売上管理を効率化する「POS+(ポスタス)」
店舗の売上を伸ばすためにはデータ分析が欠かせません。とはいえ、販売データや顧客データを自分でパソコンに入力して管理するのは大変な労力を必要とします。店舗の売上管理を効率化するツールを活用して、手間なく売上アップを目指しましょう。
POS+(ポスタス)では、顧客が何をオーダーして、客単価はいくらだったのかなど、売上に関するデータが決済と同時にクラウドに蓄積されていきます。このレストランでは、いつでもどこでもリアルタイムで売上データを確認できる点や、低コストでPOSレジを運用できる点にメリットを感じているといいます。
今何が売れているのか、自店舗の弱みや強みもデータからすぐに読み取れます。さらに、「POS+ food(ポスタスフード)」の利用で、ABC分析がボタン一つでできるようになり、スタッフとのデータの共有も簡単になります。
「焼肉レストラン リブランド」の導入事例
https://www.postas.co.jp/casestudy/2893/index.html
まとめ
安定した経営の継続のために、売上向上は常に目指すべきです。今、自店舗では何がどれくらい売れているのか、どんな顧客が優良顧客になっているのか、新規顧客は獲得できているのかなどの分析も、売上データから読み取れます。
手間なく確実にデータの管理・分析を行うべく、POSレジの導入をご検討してみてはいかがでしょうか。
関連記事:POSレジとは? POSシステムとの違いや 導入することで得られるメリットを解説
よくある質問
店舗売上の分析方法の代表例としてはRFM分析とABC分析があげられます。RFM分析は、商品やサービスを最近購入した顧客、頻繁に購入するリピーター、最も購入している顧客の3つを調べることで顧客の購買傾向を理解できます。ABC分析は、商品をA・B・Cの3つのランクに分け、ランクごとの売上を分析する方法です。
まずは基本的な「新規顧客を獲得して客数を増やす」「既存顧客の流出を防いで顧客数を減らさない」「リピーターを増やして購入回数を増やす」「客単価を上げて1人当たりの売り上げを増やす」「相場を意識して商品単価を見直す」から意識していくことが大切です。